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薔薇の色

所変わってメアリーとぶつかった通路の先。
花瓶を囲んで薔薇色談義。
…正確には薔薇の色談義。
青とピンクがお気に入りとはしゃぐメアリーの可愛さは常軌を逸してるね!!
『私は特に薔薇のどの色がお気に入りとかないなぁ…』
どの色でも薔薇は同等に綺麗だし…特別なんて選びがたいもの。
「赤は…好き?」
『勿論大好きだよー!愛情・情熱の色、薔薇の代名詞だからね!』
「じゃあ黄色はー?」
『どことなくいじらしくて可愛いよねー、友情と嫉妬の色…だっけ?』
ユト物知り!とさらに二人はきゃわきゃわと…ここは天国なのかしら。
本気で召されそうな私の微笑みを、ギャリーは呆れたを言わんばかりの表情で見つめていた。やめろその表情!
「にしても…アタシこんな青い薔薇初めて見たわよ…現実に存在するものなの?」
そう、ギャリーの薔薇が一番不思議で神秘的で…。
『一応青い薔薇ってのも品種改良か何かで生まれたんだけど…』
ギャリーの薔薇ほど、鮮やかな青色の薔薇なんて現実にはない。
少なくとも私は知らない。
『白い薔薇を青く染めたりっていう方法で作られたものなら昔からある、けど…ギャリーのは明らかに染めたりって人の手はかかってないもの。』
染めたものでも、こんなに美しいものなんてほとんどないよ。
「…やっぱり、ユトは…青色が一番好き…?」
澄んだ赤い瞳が、私を見つめる。
『え…うん、「色」の中なら、青色とか水色とかが一番、かな…』
そんなに私は、ギャリーの青色を嬉しそうに…愛おしそうに見ていたのかな。
どうして気づかれたのかにも驚いたけど、するりと肯定の言葉が私の口からこぼれたのかにも私は驚かされた。
「よかったね、ギャリー…ユト、ギャリーが一番好きだって…」
「『何か違う気がする。』」
するりとツッコミが私の口から飛び出したのにも驚いたけど、何度目かのギャリーとの被りにも私は驚かされた。
そしてそれ以上にギャリーが赤くなっていることに驚いた。
「…ほら、もう…さっさと行くわよ。」
ふいっと踵を返すギャリーは、耳まで赤に染まっていた。
「…もう!ほら、ユトも赤くなってないで早く進もう!」
メアリーに背を押されるがまま、私も歩き出した。

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