小説 | ナノ


次の部屋へ

鍵のかかっていた赤の方の扉へと歩き始める。
そこで足が止まる。
『何・・・これ。』
壁一面にかえせ、の文字。
思わず走り出す。
どこまでも続く文字・・・とその時。

か・え・せ

今足を踏み出そうとしたこの地面にまで赤い文字。
「ひぃっ・・・!」
イヴは後ずさって私にぶつかりペタンと座り込んでしまった。
私も泣き出してしまいそうだ・・・でも、私が怯えてるわけにはいかない。
『イヴ、落ち着いて。大丈夫、何も起こらないみたい、それに、私がいる。』
「あっ・・・、うん。」
イヴはゆっくり立ち上がり、並んで歩き出す。
鍵のかかった部屋は、イヴがとってきた鍵で開いた。
入る。
そこは、緑の部屋だった。
道は前と右に続いている。
『イヴ〜!まっすぐと右、どっちの道に行きたい?』
「ユトが選んでいいよ?」
『私が選んでもいいんだけど、私引きが悪いからな。』
とことん悪い。
クラスの席決めがくじだったときとか、最後まで学年で一番の嫌われ者の隣になったしな・・・。
まあ、次のクラスで、最後まで学年一の人気者の隣だったから、±0ってことか。
『レディファーストってことで!イヴちゃんが選びなさいっ☆』
「ユトも女の子でしょ?・・・でもそこまでユトが言うなら・・・。」
右っ!って笑顔で叫ぶイヴに本気で萌える。もう私駄目かもしれない。
さっきまでの暗さが嘘みたい。もともとはこういう明るい子だったのかな?いや、もしかして無理に・・・?
右の道には、虫の絵が順に飾ってあった。
奥までいくと、扉。
入る。
『ありゃー、道つながってないね。』
「戻ってまっすぐ行くしかないね。」
戻る道の途中。いや、そんなに長い道じゃないんだけどね。
急にイヴが立ち止まってしゃがみ込む。
『え、あれ?イヴ、どうしたの!?』
「アリさんが・・・」
よく見ると小さなアリがいた。
そのアリは自分の絵が見たいらしい。でも遠くにある。
・・・ようするに、私たちにとってこいと?えーめんどいよー。
『気が向けば・・・というか見つけたら持ってきてあげるよ。』
「ありがとう」
―アリさん、ちょっと可愛いかも。イヴのほうが数億倍可愛いけど!!
考えてみれば、これってすごく幸せなことだね!
こんな可愛い幼女と一緒に歩ける日が来るなんて!
ちょっとにやけてしまった。だれか顔面にかかるぐらいのモザイク持ってませんかー?
「ユト・・・どうかしたの?」
『ん?小さな幸せに浸ってただけだよ。』
ハテナマークを出して両の手のひらを見つめ考え込むイヴ。
そんなこんなで元のドアの前に戻ってきた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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