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寄り道

何気なく、元来た道を戻る。
前の部屋を急いで出てきて、探索も碌々していなかったし。
真白のパズル、月夜に桜舞う絵画。
『桜、綺麗だね。』
「梅かもしれないわよ?」
『…なるほど、確かに。梅もこんな色だったね。』
なんにせよ綺麗。
このみんなでお弁当持ち寄って、花見とかしたいなー、なんて思った。
メアリーも興味深々で、綺麗、と一言こぼして続ける。
「…それ、食べられるの?」
『「……いや、これ花だから」』
本日何度目かのギャリーとのシンクロ。
クスリ、とイヴは小さな笑い声を漏らす。
ほんわかした空気の中、足を進めたその時。
ピシィッ!
そんな音とともに鏡が割れた。
「きゃっ…!?」
『…っあ』
通路の鏡側にいた私は咄嗟に、隣のイヴを反対側のギャリーに向けて突き飛ばしてしまっていた。
『ごめん、イヴ!…け、怪我はない…?』
キョロキョロと自分の体を一通り見回して、イヴは頭を縦に振った。
「ユト、アンタこそ鏡の正面にいたんだから…怪我してない?」
そういえば。私もイヴにならって、何処も怪我していないかどうかを確認する。
『…うん、少しも怪我はないみたい。』
よく見れば鏡の周りには、ほんのひとかけらもガラスが落ちていない。
一体どうして割れたの…?
「怪我してないならいいでしょ、早くいこう!」
扉の前でメアリーが私たちに手招きをしていた。
「あんまり気は進まないけど…」
『行くっきゃないね…』
イヴが私とギャリーの手をぎゅっと握った。

扉の奥は相変わらずの様相。
恐る恐る、私は部屋の右の本棚から順に手をかけていった。
『…花占い、ねぇ…』
「何て書いてあるのかな?読んでよギャリー」
『ん?』
左に目を向けると、一冊の本をイヴから取り上げた様子のギャリー。
苦々しい表情で「………ヤダ」と呟いている。
そう言われると気になってくる、私は本を戻し、3人の方へ向かった。
『ギャリー、何の本ー?』
「っユトにもまだ早いわよ!」
慌てて本を高く掲げるギャリー。頑張ってジャンプしてみても、身長差的に届かない。
悔しいから意地でも読んでやる…!そんな幼稚な闘争心を滾らせ、ギャリーを全力で引き倒した。
「うわっ!?ちょ、何すんのよユト!?///」
仰向けに倒れたギャリーに馬乗りになり、見事私は奪い取ることに成功した。
周囲から拍手が聞こえた。…イヴとメアリーしかいないはずなのに、明らか数十人の拍手の音だ、何これ怖い。
とか思いつつ入手した本を開く。

官能本。

数ページ読み進めた辺りでギャリーに取られた。
確かにイヴにもメアリーにも早い本、だけれど…私には別に早くないよ…。
『今の時代の性教育はきっちりしてるから』
「何の話よユト!?///…というかそろそろアタシから降りなさいよ!!///」
『…ごめんギャリー、そうだよね、重いよね…ごめんね……』
「そういうことじゃなくてもう…その…分かってるでしょ!茶化さないの!///」
『あはは、ごめんごめん。そりゃ乗りっぱじゃギャリー動けないもんね!』
立ち上がってギャリーに手を貸す。ギャリーは頬が赤くて、不機嫌そうな表情だ。
「…さっさと行くわよ」
『「「はーい…」」』
それじゃあメアリーと会った通路へ行くか。


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