小説 | ナノ


はじめまして、こんにちは。

来た道を戻ったはず。
でもさっきまで、こんな赤い足跡はなかった。
それからこんな通路もなかった。
そう、何故か床に足跡、その足跡の続く先に道ができていた。
まぁこれぐらいで驚いてちゃ駄目か。
作品が動くこと以上に驚くべきことはないよね。
このままいてもどうしようもないし、進むしかない。
その新しくできていた通路に入る。

とその時。

「わっ!?」
誰かが正面からぶつかってくる。
でもその誰かは私より華奢で、弾き飛ばされたのもその誰かの方だった。
「ちょっと、大丈夫!?」
紳士なギャリーが助け起こそうと近づくとその子…金髪に青い目の可愛らしい女の子は、慌てて立ち上がってギャリーと距離をとった。
「あ!待って!」
呼び止めるギャリー。
「ねぇ、アナタ…もしかして美術館にいた人じゃないの!?」
そうギャリーが言うと、ハッとしたようにその女の子は「あ…!」と声を漏らした。
「やっぱり…。」
それで私はというと、突然のことに動揺しすぎて完全に硬直していた。
イヴも女の子の前に進み出るのを視認して、ようやく私の体も動くようになった。
躓きそうになりながらイヴの後ろについていく。
私が立ち止まったのを確認して、ギャリーが紹介を始める。
「アタシはギャリー。…で、こっちの子はイヴっていうの。それからさっきぶつかった子がユト。」
『…ほ、本当ごめんね…!大丈夫?怪我はない?』
こわごわとそう訊くと、女の子は軽く頷いた。
よかった。
「アタシたちも美術館にいたのに、気づいたらこのワケわかんない場所に迷い込んじゃってて…」
女の子は、真剣な表情でギャリーの話を聞いていた。
「今、なんとか3人で出口を探してるワケなんだけど、もしかしてアナタもそうじゃない?」
そうギャリーが訊ねると、恐る恐る女の子は話し出した。
「わ…わたしも、誰かいないか捜してたの…外に出たくて、それで…」
予想通り、この子も私たちと同じだった。
…なんだろう、何か違和感がある気もするけれど。
「あぁ、やっぱり!ねぇ、良かったら一緒に行かない?」
ギャリーの提案に、女の子は目を見開いた。
「え……」
「女の子1人じゃ危ないわ。ここ、変な生き物とか結構いるみたいなのよ。」
優しく微笑んで、ギャリーは続けた。
「だから、一緒に行きましょ?みんなでいた方が心強いし。」
ギャリーにつられたように女の子も微笑む。
「うん、行く…!」
ギャリーはその返事を聞いてにっこり笑顔になった。
「んじゃ、決まりね!あ、名前はなんていうの?」

「メアリー……」
伏し目がちに女の子がそう答えた時、私の背筋に悪寒が走った。
メアリー。
私はその名前に聞き覚えがあった。それから鮮やかな、癖のついた金髪にも見覚えが。
初対面のはずなのに…私はこの子を知ってる?
思い出せない。
…いいや、諦めよう。頭痛が増しそうだ。
気づくとメアリーはイヴの前に来ていた。
「えと……イヴ、よろしく…」
「ん、こちらこそ…。」
イヴの表情は窺えないけど、メアリーは嬉しそうににっこり笑顔で、「えへへ…よろしくね。」そう繰り返した。
そして、私の方を見上げて。
「えっと…ユトも、よろしくね…!」
笑顔を見せてくれた。
『おう、よろしくねー!』
さっきまでの疑念も全部吹っ飛んだ。くっそ可愛い。
「…ユトもなかなかのロリコ」
『黙らっしゃい、ギャリー。』
「…よーし、それじゃあ仲間も増えたことだし、はりきって行くわよ!」
そうギャリーが調子をつけると、イヴとメアリーも「おー!」と右手を挙げた。


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