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うらまやしい

『うらまやしい。』
「ユト、舌回ってないわよ…」
『うらやましい。』
「…なにが?」
突然人の家に押しかけてきて、何言いだすかと思えば。
あまりに切羽詰まった表情で、放っておいたら自殺でもしそうな悲壮感がにじみ出てたから、すぐに招き入れちゃったけど…。
ユトは言いにくそうに、少し恥ずかしそうに口火を切る。
『…その…ええっと…その、ギャリーの…』
「…もう、言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」
『ギャリーの!身長が!!』
「……はぁ?」
突拍子もない事言い出すわねこの子ったら。
たしかにユトは、同年代の平均身長にも満たない低身長だけど。
『私も、ギャリーみたいに身長がほしくて…』
『でも、どれだけ必死に牛乳飲んでも…うぅ……』
「…ユト、アンタって馬鹿ねぇ…」
『知ってらぁそんなことっ!…言われなくても、そう簡単に伸びないことは分かってるよ、でも…』
「いいえ、分かってないわよユトは。」
そうユトの泣きそうな声を遮ってアタシははっきりと言ってあげた。
「アタシは、ユトのそのちっちゃい身長、好きよ?小さくて本当お人形さんみたい。」
そう言って、軽くユトの頭を撫でてあげれば、ユトも少し納得できないって表情だけど、受け入れたみたい。少し頬が赤いかしら?
『…ギャリーに好きって言ってもらえるなら、…私この身長のままでいる。』
ぼそっと呟き、ユトがアタシに抱き着いてくるもんだから…ああ、なんでこの子、こんなに可愛いのかしら!!

−fin−

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