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眩暈

飛び出すとそこは先の廊下。
さっきまで話してたはずの女たちも、さっきは動いていなかった女たちも、私たちに襲い掛かってくる。
なんで、どうして、どうすれば。
そんなことすら考える余裕なんてない。
私たちは無我夢中で駆け抜ける。
少しでも立ち止まったなら、四方八方から伸びてくる手が、私たちの命を奪うだろうから。
後ろなんて振り向けない。
イヴとギャリー、2人と、繋いだ手を離さないようにするので精一杯だ。
2人の手の温もりと、にじむ汗。その感触だけが、私に正気を保たせていた。
何処をどう走ったかなんてわからない、気づけば目の前に開いた扉。
ここに入るしかない、先にもっと危ないものがあったとしても。
私たちはそこに飛び込み、駆け続けた。
いつしか追いかけてくる、騒がしい音は消えていた。
『…はぁっ、はぁっ…。』
息が苦しい。もう、頭がおかしくなりそう。なんなのこれ。
「はぁ………はぁ………こ……ここまでくれば…大丈夫、でしょ……。」
さすがのギャリーも息が上がってる。
「ザマぁみなさい!」
あ、そうでもなかったか?悪態吐ける程度には体力残ってるのか。
生憎、私にはそんな体力残ってない。やっぱこれが男女の差なのかしら…?
「さてと……それじゃあ先に……って、イヴ?」
ギャリーの焦った声で私も振り返る。それと同時に。

イヴが、くずおれた。


…え?あ。
わ、私、無我夢中で、自分のことばっかで、イヴの様子に気づいて、なかった。
私のせいで、また、イヴが。

視界が真っ白になって、私の意識はそこでとぎれた。

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