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星に願いを!

『ねぇメアリー、知ってる?』
ぼんやり外を眺めるメアリーににっこり、声をかける。
「…何を?」
メアリーはゆっくり振り返って首を傾げた。可愛いなぁ全く。
『今日はね、七夕って日なんだよ。』
「たな、ばた?」
『そう、七夕。空を流れる川で引き裂かれた恋人が、今晩だけは空の星たちの力を借りて、出会える日なの。』
そう夢たっぷりに語ってみせたら、メアリーは視線を上に動かし、しばらく悩んだ後に浮かない顔をした。
「…分かんない、どういうこと?」
伝わらなかったみたいなので諦めて後ろ手に持ってきていたものを見せた。
『じゃーん。』
「っ…!ユト、何それ…葉っぱがついてるし、木…?」
想像通り、興味を持ってくれた。
笹の葉をつついてみてる。そうだね、メアリーは見たことなかったよね、こんなの。
『これは、…うん、そんなもんかな。笹だよ。さらにじゃーん!』
「…ひもが付いた、紙…?」
『そう、この紙…短冊っていうんだけど、これに願い事を書いて、この笹に結び付けるの。そしたらね、願い事はきっと叶うの。』
「…本当っ!?本当に、叶うの!?」
『…ふふっ、きっとね。』
これまた想像通りメアリーは目を輝かせた。すぐにクレヨンをもってくる。
「書かせて!」
素敵な笑顔で私に赤のクレヨンを差し出す。私は受け取って、メアリーに短冊を一枚渡した。
受け取るや否や、メアリーはしゃがみ込んで、青いクレヨンで何やら書き始めた。
微笑ましい光景。私はその姿をしっかり目に焼き付けた後、自分の願いを短冊に赤クレヨンで書き綴る。
「書けた!」
『うん、私も。…なんて書いたの?』
察しはつく。ここから出たい、とかかな。
…けど、メアリー本人の口からききたいっていうのもあって、私は訊ねてみた。
「秘密!だって、願い事ってひとにいったら叶わなくなるって書いてあったもん!」
『…ん、そうだね。じゃ、それをこの笹の枝に結んでね。』
「うん!」
ふたりで結びつけて、部屋の隅に飾っておいた。
叶わない願いと分かってても、せめて今日だけは。


(『メアリーの願いが叶いますように。メアリーが、この美術館から出られますように。』)

(「ユトといっしょにこのびじゅつかんからでたい。」)

−fin−

せっかくの七夕だったんで、書きたいもん書いときました!
…いや、ギャリーさんとかイヴちゃんのとかも書きたいです…!
余裕があれば…書きたいです…!

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