小説 | ナノ


女の絵画の部屋から

「っ・・・ひぃっ・・・!?」
『・・・・・・・・・』
ドアを通り抜けた先。そこには、大量のマネキン頭が並んでいた。
悪趣味、絵画までマネキン。
「・・・気持ち悪い、わね・・・」
『・・・うん、早く抜けよう・・・イヴ、大丈夫?』
「う・・・うん・・・。」
気持ち悪そうに顔を歪めてるイヴの手を取り、先を急いだ。
駄目だ、どんどんこの美術館のものが、嫌いになっていく・・・。
マネキンの道を抜けた先は、随分と広くて、道が分岐していた。
『じゃ、どっからみてまわろっか。』
「ええと・・・じゃあ、一番左まで行って・・・壁伝いに・・・」
『よし、行こうっ!』
「「お、おー・・・!」」
突き当たりまで行って、右に曲がる。
壁には、色とりどりの女の絵。
ちょっと一瞬見惚れてしまうぐらいに、やっぱり美人。でもさっきみたいに出てこられると・・・この数はヤバい。どんだけあるんだよ女の絵・・・。
「・・・ねぇ、ここでも女が絵から出てきたり・・・なんて・・・ないわよね・・・?」
『ギャリーも同じこと考えてたのね・・・考えないでおこう、なんか考えても不安になるばっかだしさ。・・・たとえ出てきたって、私が2人を守りきってみせるから。』
「・・・アンタって、ほんとイケメンよね・・・」
「・・・ん・・・・・・ユトが、男の子、だったら・・・」
『・・・やめなさいアンタら・・・私は女の子よ・・・乙女よ!』
「「・・・・・・。」」
『・・・なっ、なにさ!?ちょっと、その引いた目やめて!?・・・・・・くくっ・・・///』
イヴとギャリーの行動が全く同じで、心に傷ができたけど、おかしくてちょっとわらっちゃった。
さっきよりも空気が緩んだのを感じた。
「・・・あら、部屋・・・が2つ並んでるわね・・・入ってみる?」
『ん、待って。なんか鍵?かかってる・・・みたい?』
「これ・・・。」
『パスワード入力みたいな感じ、かな?4ケタ・・・分かんないし飛ばそう。』
「隣は…この部屋の女の絵の数・・・?これもまだ、無理みたいね。」
しばらくその部屋の中をぐるぐるとまわる。
『あれ、この絵…』
「ええ、美術館にあったわよね、これ…」
『あ、そういうことじゃなくて、絶対これ頭に血が上って苦しいよねって。』
「…案外アンタって考えてること子供っぽいのね…」
『ま、実際まだまだ子供だし。…お、この絵さ、服に番号ついてる…4ケタ…』
「…これがもしかして…ぱす、わーど…?」
はっとした風にイヴが声を上げた。
『よし、じゃさっきのとこ戻って…ええと5629…、ね!』
「ちょっと待ちなさい、ユト。…ちゃんと見なさい、逆さまでしょ?」
『は、逆さま?………あ。』
「…くくっ…///」
「……///」
くすくす笑う2人。2人とも分かってたのか…なんか恥ずかしいなぁ…。
そして本当イヴとギャリー、息ぴったりなのよねぇ…ちょっと嫉妬。
『…もう、笑わないでよ…!…ほら、せっかく分かったんだからさっさと行くよ!』
「…ふふっ、そうね、行こうかしら…もうちょっとユトの恥ずかしそうな表情を楽しむっていうのもいいかもしれないけどね」
『…ギャリーさん?』
「…行きましょうか」
にっこりとギャリーに微笑んでみせれば、ギャリーは途端に青ざめて歩き出した。
…さっさとこんな場所、出よう。
3人で脱出して、おかしな夢だったねって笑いあいたい。
そのために、私は最善を尽くそう。全力で2人を守ろう。

“2人を脱出させるために、そのために、私はここにいるんだから”

ズキッ

『…っ……』
頭痛がした。ついさっき覚えた既視感が、まだ続いてるようだった。

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