小説 | ナノ


そのアイスを寄越しなさい!

(そのアイスを寄越しなさい!)

うだるような暑さが続くこの頃。
「・・・うぅーアイス食べたい!」
がたっと机に頬をつけてだれていたユトは、そう叫んで立ち上がった。
あー、と唸りつつユトは冷凍庫を開けた。
しかしアイスの姿は見えない。
「あれ?なかったっけ、アイス」
がさがさと冷凍庫を漁った。
「・・・お!」
幸いにも棒アイスが1つ、顔を出している。
運良く外にでなくてもよかったユトは嬉しそうに棒アイスの包装を破き、ぱくりと食べた。
「んーおいひー!」
味はミルクらしい。
ぺろりとユトは棒アイスを一なめした。
暫くアイスに涼んでいれば、鳴り響くチャイム音。
「・・・?誰だろ・・・?」
誰かと会う約束をしていたわけでもない。
何かを頼んだわけでもなかった。
ユトは小さく首をかしげながら玄関のドアに近づき、来客の確認をする。
見てみれば、イヴとメアリー、そしてギャリーがドアの前に立っていた。
突然の訪問に驚きつつも、嬉しい来客に微笑みながらドアを開ける。
カチャン、とした音と共に何かがユトに飛び込んできた。
「遊びに来たよユト!」
元気いっぱいに笑うメアリーである。
それをイヴがおろおろと心配そうにユトとメアリーを交互見ていた。
ギャリーは苦笑している。
「・・・ふふ、いらっしゃい」
ユトは、暑いから、と三人を家に上がらせてアイスティーを出した。
コトン、とテーブルにグラスを置く。
「あら、ありがと」
ギャリーはそれに微笑んで一口飲み、イヴもありがとう、と笑って口をつけた。
メアリーは一緒に出されたシロップをいれている。
「おいし!ユトありがと!」
こくこくと飲み、にっこりと笑ったメアリーはそう言った。
それについでイヴも微笑んで言う。
「・・・すごく美味しいよ、ありがとユト」
そんな二人にユトは笑い返した。
「そんなに褒められるほどじゃないと思うんだけどな・・・?まぁ、喜んでもらえて嬉しいよ」
少し照れくさそうに笑うユトの頭をギャリーは優しくなでる。
「とっても美味しいわよ。喉が渇いていたから特にね?」
そっか、とユトは笑い、少しだけ溶け始めたアイスを舐めた。
それにメアリーが大きな声をあげる。
「あっ!ユトアイス食べてるなんてずるい!」
がた、と椅子が音を立てた。
「えーと・・・実はこれ、最後の一個なんだよね・・・」
えへ、と笑いつつユトは溶けてきたアイスを舐める。
メアリーが椅子から降りて、アイスを食べようとし始めた。
「あたしも食べたい!」
腕を掴まれメアリーが自分の口元にもって行こうとする。
しかしそれをユトが許すはずもなく、二人の攻防戦となった。
「・・・これはだめだよメアリー」
ぐぐ、っと自分の方にユトがもってくれば、メアリーも負けじとアイスを引き寄せる。
「あたしだってアイス食べたいの!」
すると、イヴもおずおずと参戦してきた。
「ユト・・・私も食べたいな・・・」
メアリーのように強行手段ではなく、上目遣いのイヴ。
それにぐっと唸っていると、今まで黙って見ていたギャリーまでもが参戦をしてきた。
「アタシも食べたいわ。ユト、頂戴?」
ギャリーもユトの腕を片手で掴むとアイスを口元に持っていく。
しかしぐっとユトが腕を引き寄せたため叶わなかった。
「だーめ!」
そして、あと少しで垂れそうだったアイスを再び舐める。
その姿をみて、ギャリーは呟いた。
「相変わらず食い意地はってるのね・・・」
それにメアリーはこくこくと頷いて同意した。
イヴは何も言わずアイスを見つめている。
「う、うるさいなぁっ!いいじゃん食べたいんだもん!」
ユトは顔を少し赤らめて反論した。
突然今までじーっとアイスを見つめ、黙っていたイヴが声を漏らす。
「アイス、落ちちゃうよ?」
三人は急いでアイスの様子を見るが、アイスは既に棒からずるりと落ちたところだった。
「うわっ!」
急いでユトが受け止める。
すると今だとばかりにメアリーがアイスをぱくりと食べてしまった。
「メ、メアリーっお行儀悪いでしょ!」
そうギャリーに言われるもメアリーは知らんぷりである。
イヴは苦笑していたが、ユトからアイスの棒を受け取り捨てた。
「イヴありがとうね・・・あ、」
ユトがお礼を言うと、笑って返すイヴ。
その瞬間にユトの服に溶けたアイスが垂れた。
「あぁ!もう、何やってんのよ!」
ギャリーはそう言うと洗面所へ行き、濡らしたタオルを持ってくる。
そしてユトの服に垂れたアイスを拭いた。
「っひゃん!」
丁度アイスが垂れたのはお腹の上で、急な冷たさにユトの口から高い声が発せられる。
「・・・イヴ、今のユトの声・・・・・・エロくない・・・?」
こそりとイヴの耳元で呟いたメアリーの口を、顔を真っ赤にしたイヴが手でふさいだ。
口には出さずとも、イヴもそう思ったらしい。
二人がそんな会話をしているうちに、どうやらギャリーはユトの服についたアイスを吹き終わったようだった。
濡れタオルを受け取りユトが洗面所にへと姿を消す。
イヴの手が口から外されたメアリーがギャリーに言った。
「・・・ギャリーさ、ユトの声に興奮した?」
無言でイヴとギャリーはメアリーを黙らせたのだった。


御馳走様でした!
いや、妙にエロい。美味しくいただきましたですよ。
まあどうせ間接チューなんですからなんにしろ美味しいですよ。
ぐへへとか本気で叫んでおります。
なんにしろメアリー“が”エロい。
ありがとうございました狼藉様!
これからもよろしくお願い致します。

prev / next

[ back to top ]


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -