小説 | ナノ


たべないで

〜嫌、嫌っ!!思い出したくもない!
こんなのないよ、私が思い描くものじゃないのっ!
誰か・・・助けて!お願い、誰か・・・


「・・・どうしたの?」
『え?いや、考え事してた。こんな感じの気持ち悪いのさ、昔どっかで見たことある気がするんだ。』
私たちはその気味の悪い笑顔の絵画の前にいた。
なにやらごちゃごちゃ絵画さんは言ってるけど、私は聞いてない。
聞きたくない。なんか気持ち悪い。
「アンタがそんなに嫌がるなんてねぇ・・・変なものにばっかり興味持ってたくせに。」
『ひどい言い草ね。だって・・・なんか変質者じみてるじゃん?こいつ。』
「絵画が変質者って・・・」
何でか分かんないけど、この絵画が嫌いだ。
さっき気づいたあれに関係してるのかな?
・・・で。どうすればいいんだろうか。
「お花・・・あげればいいのかな?」
「えっ・・・止めといた方がいいわよ。大事な薔薇だし、そいつ信用できないし・・・。」
「でも先に進まなきゃ・・・」
イヴが自分の薔薇を渡そうとしてる。
嫌な感じ、・・・駄目、駄目っ、ダメッ!
『だめだよっ!!』
気づけば、絵画に渡しかけていた薔薇をイヴの手から奪い取っていた。
「いきなりどうしたのよユトッ!?・・・アンタさっきから変よ?」
『あ、いや・・・なんかさ、嫌な予感がしてさ?』
「・・・ユトの予感は当たるから・・・こういうのはユトの言うとおりにしたほうがいいと思う・・・。」
『ありがとうイヴ。』
というわけで任されたんだけど。
やっぱなんか花を渡すしか通れそうにないんだよ、ここ。
なんかこれもゲームみたいだけど。・・・この絵画、いっそ破ってしまおうか。
『よし、イヴにギャリー。これ破ろう。』
「「ええっ!?」」
「ちょ、どうしてそうなるのよ!?」
『で、でも薔薇渡すのは駄目なんだからさ!花って言ったら私たち、薔薇しか・・・あっ。』
私は自分の胸に目をやる。いや、胸というか胸元・・・そう、私の抱えてるものに。
2人の視線も同じ場所に集まる。
『・・・持ってるじゃん。』
「・・・持ってるね。」
「・・・持ってるじゃないの。」
見事に全員の意見が一致した。
『・・・畜生、お姉さんからもらったお礼なのに・・・大事なのに・・・もうっ!いいよ!やるよこの絵画さんよぉっ!!』
すっごいガッカリだけど、仕方ない。
「えへへへ ありがとう・・・ いいにおいだなぁー ・・・えへへ」
「それじゃ いただきます」
激しい金属音。こいつの歯は金属製ってか?
もし薔薇を渡していたら・・・ぞわっとしたものが私たちの背筋を駆け抜けた。
「あー おいしかった えへへへ」
当然だろ?お姉さんが私にくれた、お礼なんだから。
「ありがとう ありがとう 約束だからね ここ通すよ」
「このドアで奥に行けるよ それじゃあね えへへへへ」
気味の悪い顔の絵画は、ドアに変わった。
『・・・行こうか、イヴにギャリー。』
「そうね、・・・ここ通らなきゃ行けないのかしら・・・」
『いまさら?確かに嫌だけど我慢しな。』
「・・・うん、行こう。」
『(はぁ・・・それにしてもお姉さんにもらったブーケ・・・惜しかったな・・・)』
『(まぁ今度はイヴを助けることができたんだし、いいか。)』

・・・え?私今なんて言った?・・・今度って・・・

自分の無意識に背筋は凍った。

prev / next

[ back to top ]


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -