小説 | ナノ


救えたなら光栄

『お姉さんは私が救ってみせる!』
「アンタ何言ってんのよ」
という訳で(どういう訳だ)花嫁のところまで戻ってきた。
「にしても・・・」
気持ち悪いわよねぇ・・・とギャリーが呟く。
『失礼ね。これはあそこの花嫁さんの腕なんだぜ?』
「そう言われても。」
確かに腕はわきわきしてて気味が悪いかもしれない。
でも、あのお姉さんのなんだから気にしない!
「でさ、どうするの?」
『これこれ。』
さっきイヴから受け取ったソレを見せる。
「あ・・・わたしのとってきた指輪・・・。」
「・・・そういうことね。」
『そうそうそういうこと。』
ところで・・・と続ける。
『け・・・結婚指輪ってどの指にはめるんでしたっけ?』
「そんなことも覚えてないの?」
呆れたように言いながら、ギャリーは自分の左の手の甲を見せ、右手で薬指を指した。
『左手の薬指・・・ね。将来のために覚えとくよ。』
そして花嫁の左手の薬指に指輪をはめた。
するとわきわきは止まる。
「ユト・・・花嫁さんの絵・・・。」
見れば絵の花嫁・花婿は素敵な笑顔を私に見せてくれていた。
絵に近づく。
その時、絵の花嫁は腕に抱えていたブーケを投げた。
ブーケは絵から飛び出し、見事私の腕に着地。・・・着地で合ってんのかなこれ。
私が受け取ったブーケはとても綺麗だった。
「ユト、ブーケ・トスって分かる?」
急にギャリーが話しだした。
『・・・何それ?』
「ブーケ・トスっていうのはね、花嫁が結婚式で使用したウェディングブーケを未婚の女性に投げることよ。」
『へぇ。』
んー今の私と花嫁とのやり取りを言ってるのかな?
私未婚だし。・・・当然だけど。17で結婚してるって・・・。
いやまあ一応結婚はできるけどねっ!?親の承認があればですけど。
「幸せのおすそ分けをするという意味があるの。投げられた物を受け取った者は次に結婚できるとか言われてるわね。」
『次に結婚・・・。いや、あと少なくとも3年ぐらいは結婚しないと思うけどね。あ、でも恋人ぐらいはできればいいなって感じかな?・・・まあここから出ての話にはなるんだけども・・・。』
まあ幸せのおすそ分けだし、きっとここから出れるってことだよね!
『でも結婚ならギャリーが受け取れば良かったじゃん。』
「アタシは男よ?」
『ああ、そういえば男はガーター・トスとかいうのするんだっけ?』
「がーたー・とす?」
イヴが不思議そうな顔をする。
『ガーター・トスはね、花嫁が結婚式で左足に着けていたガーター・・・靴下止めを花婿が未婚の男性に投げること。ギャリーならこっちか。あ、でもこれがちょっとエロティックでね?ガーターを外すとき、手じゃなくて口で外すの。しかも花婿は花嫁のドレスのスカート部分に潜り込むんだよ?面白いよね!』
「・・・なんというか・・・ね。」
苦笑い。
『まあ、そんな滑稽かつエロティックな雰囲気のものだし、気の置けない友人だけが集まる2次会などで余興として行われることが多いんだって。お約束としてその場にブーケ・トスで花束を受け取った女性の恋人、婚約者などがいる場合はその人物にガーターが渡るよう配慮するのよ。ガーターを受け取った男性はひざまずいて、それを自分の恋人または婚約者の左足に嵌めるものとされているらしい。ウィキペディアさんより抜粋。』
「・・・ウィキペディア・・・?」
『冗談。昔ガーター・トスって調べたことあってね。ブートニア・トスってのもあるんだけど、それは花婿が結婚式で使用したブートニア、新郎の胸元に飾る花を未婚の男性に投げること。そんな感じでいろいろあるのよ。』
「なんでそういう未婚男性向けのはいろいろ細かく知ってるのに、ブーケ・トスは知らないのよ・・・。」
むしろそっちの方が有名でしょ・・・とかぶつぶつ言ってる。ちょっと怖いよ?
という訳で(どういう訳だ)ブーケを抱きしめた私とイヴ、ギャリーの3人は進む。
『どっかまだ行ってない道あった?』
「どうかしらね。」
「・・・一個だけ・・・」
『え、どこどこ?ちょっと連れてって。』
「うん。こっち。」
イヴに腕を引かれて。
その先には、気味の悪い絵がいた。
こういうやつはなんかちょっと苦手なんだけど。
その絵は喋りだした。気持ち悪い声で。

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