小説 | ナノ


始まりの始まり

今日は、友達と前から予定していた、美術館へのお出かけ。
基本的に外出をしない私だから、久しぶりの外出に期待半分、ちょっぴり緊張。
少しぐらいおしゃれをと、なれないスカートなんかはいて、髪もピンクの薔薇飾りのついた可愛い感じのゴムで結んで。
・・・これが私の精一杯だった。
気恥ずかしいというか・・・。
今、美術館ではゲルテナ展というのをやっているらしい。
有名ならしいけれど、この人の作品、2つ3つぐらいしか私は知らない。
そして、こんなことに巻き込まれるなど、その時の私には知る由もなかった。

友達とは、美術館の前で待ち合わせていた。
・・・どうせあの子のことだから遅れてくるだろうけど。
「ごっめーん!準備に時間かかっちゃった!待った?」
想像通り友達は遅れてきた。
『あはは、うん待ったよ!まあいつものことじゃん?』
「ほんとごめんねー。それじゃ、入ろっか。」
受付・・・よく分かんなかったから友達に頼み、先に一人で入らせてもらう。
そして私は目を奪われた。
すごい!
こんな大きな絵でここまで深く表現できるなんて!
まるで飲み込まれちゃいそうに深い、深海の絵。
ゲルテナさんが何を伝えたかったのかはさっぱりだけど、ただすごい、この人は人とは違った捉え方が出来る人だったんだと感じた。
気づくと一階は全部回ってしまっていた。二階へと上がる。
二階にもズラッと不思議な絵が並んでいた。
左から順に、眺めていく。
と、いきなり左から誰かがぶつかってきた。
私は支えきれず私の体が右に傾く。
そこでさらに右にいた人にもぶつかってしまった。
「わっ!」
『うがっ・・・』
「きゃっ」
ぶつかってきたのは可愛らしい女の子だった。
「わ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
あわてて謝る女の子。
『わ、私はだいじょう、ぶ・・・かな?あ、』
右にはかっこいいお兄さんがいた。
「アタシも大丈夫よ。」
「本当ごめんなさい!」
頭を下げて女の子は走り去っていった。
『ぶつかっちゃってすいませんでした!』
「いいわ、気にしてないって!」
笑うお兄さん・・・あれ?
さっき、・・・あれ??「アタシ」・・・「〜よ」?
・・・もしかしなくてもお兄さん、オネェってやつですか。
ポカーンとなってしまう私。ついでに見蕩れてしまう。
お兄さんは怪訝そうな顔をして、
「・・・ん?何か用?」
・・・はっ!
『あ、ほんとすいませんでした!失礼しましたっ!!』
思わず逃げてしまった・・・。はっずかしー!

・・・一人、青年が残される。赤く染まった頬をぺちぺちしながら呟く。
「どうしちゃったんだろ・・・。」


prev / next

[ back to top ]


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -