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薔薇奪還

ドアはやっぱりさっきの人の持っていた鍵で開いた。
中には赤い服の女の色違いみたいな、青い服の女が一人。
そいつの手には薔薇の花。大幅にむしられている。
あれか、さっきの人の薔薇は。
どうやってとろうか・・・本体を女に持たれているとか、想定外だった。
とりあえず、引きつけよう。
そのあと蹴り飛ばすでもなんでもして、奪い取って逃げよう。
そして私は叫ぶ。
『青貞子、それ返せぇっ!!』
女はこちらを見ると同時に追いかけてきた。薔薇をポイッてして。
・・・うわっ、とりあえず出るか。出たら追ってこれないはずだもんね。
すぐに外に出た。・・・ヘタレとかチキンとか言わないでよっ!怖いんだもん!
なんならお前が体験してみるかっ!?
・・・私、誰に話しかけてんだろう・・・そろそろ精神的に参っちゃったのかな・・・。
その時、横に窓があったことに気づく。
嫌な予感再来・・・。
窓が力強く叩かれる。
想像通り、窓を割って女が出てきた。
そして私はどうしたか。当然、部屋に戻りましたとも!
だって女はもう中に戻れないんだし、薔薇拾って早く花瓶に入れないと、さっきの人息絶えちゃいますし。
さっきの人の薔薇は、花びらがもう5枚も残っていなかった。危なかった。
間に合ってよかった〜!とか思ったら、花びらは1枚散った。
早く花瓶まで行かないと!でも、外には・・・アレ、いるし〜・・・。
・・・もう考えてる暇なんてないっ!
『せいっ!!』
私はドアを扉を開け飛び出し、すぐさま走り出した。
後ろからドタドタ這ってくる音がする。怖い、怖いよ・・・!
今日美術館に来たことに後悔する。むしろ後悔しかない。
・・・あ、でも今日こないとイヴには会えなかったのか。それだけが、まあよかったことよね。
ギリギリで部屋から出ることができた。
あいつはこっちまで今度こそ来れない。
薔薇を見ると、さらに2枚花びらが散っていた。慌てて花瓶に入れる。
再び、ハンパない回復力を見せてくれる薔薇。
いや、こっちの方とかもう死にかけだったから、余計すごく見える。
ついでに自分の薔薇も入れておく。あんまり変わんない。
よし、回復もしたし、イヴのとこに急いで戻らなきゃ。
さっきの人はどんな感じかな〜?イケメンかカワイコちゃんだといいな〜!
・・・違うもんっ!どっちかって言ったら顔の良いほうが好きなだけだもん!
いや、だから私誰に話しかけてんの?

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