こっちもこっちで第一歩





[こんのっ馬鹿グリーンっっ!!!!!]

「っ…!!!いきなりなんだよカスミ!!!!!」

PWTも今日はこの前派手に床に穴を開けてくれやがった変なマスクを着けてるジムリーダーのおかげで休みだった本日、鳴り出したポケギアをとればキィイインと効果音でつきそうな程の大声で叫ばれた。というか怒られた。これがハウるというやつか、てかどんだけ大声で叫んだんだよカスミ。おかげで未だに耳がぐわんぐわんしてやがる。

文句の1つも言ってやろうかと、ポケギアに叫ぶため息を大きく吸うと、構えていたポケギアのスピーカー部分からカスミの何にががいきなりなんだよよ!!!!!むしろアンタが何なのよ!!!!!と怒られ、吸っていた息を吐き出した。どうやら凄いお怒りらしい。俺が何をしたというんだ。

「…今、自分が何をしたんだとか考えてるでしょ」

「あっいやそんなことは…」

「いや、考えてたでしょ」

カスミは電話越しでも人の思考が読めるらしい。なかなか末恐ろしいやつだと思いながらはいはいすみませんと軽く返しておく。それでもカスミはまだまだ不服らしく、そんなんでかわせるとでも思ってるの!?と不機嫌を露にしていた。

「…で、何をそんなに怒ってるんだよ」

「何に!?そんなのきまってんでしょ!?アンタがパスカにしたことに決まってんじゃない!!!」

「…何処まで、聞いたんだ」

「そりゃ揺りかごから墓場までよ!!!!!」

「……それはつまり、全部聞いたと」

「そういうことよ!!」

カスミは随分とご乱心のようで、電話越しでもそれが窺えるほどだった。全くもう!!あんないい子にトラウマ植え付けちゃって!!!!!あんた本当に青汁ね!!!!!なんてよく分からない暴言を吐かれながらも黙って聞いておいた。

「で、あんたはどうなのよ!?」

「…え」

「仲直りしたいの!?」

ちなみにパスカは仲直りしたいって頑張ろうとしてたわよ!!なんて続けられたその言葉に衝撃を受けながらも、ああと返事を返す。あいつが、パスカが仲直りしたいと思ってくれている。一方的に傷つけた俺ではなく、傷付けられた被害者の方であるパスカが関係修復を望んでいる。それは俺がパスカと再び笑い会えるかもしれないという希望であった。

いや、正確にいえば昔は俺も尖っていて、家族を一人占めされているような気がしてあいつにキツく当たっていた。彼女はそれをあまり気にしてなかったらしいが、それでももともとパスカとの関係は良好とはいえなかった。それに加えてあの事故だ。それによってもとからあった溝が更に深くなっていた。仲直りができれば、その溝を埋め、また昔よりもより良い関係を過ごせる可能性がある。なにせ彼女自信が望んでくれているのだから。

「ったくもう、仕方のない青汁なんだから!」

「え、だからなんで俺そんな呼び名なんだよ!?」

「ああもう黙りなさい!!仲直りは手伝ってあげるから!!!!!」

「え」

「…なによ、あんたのためじゃないわよ。パスカのためだから。」

誤解してんじゃないわよ青汁風情が!!!!!そんな捨て台詞を図れたあとすぐにスピーカーからはツーツーと切られた音がした。

「…はぁ」

なんだか一度に疲れた気がして近くにあったソファに腰を下ろした。てかなんで青汁なんだじゃなくてなんでカスミが電話をしてきたんだ。レッドから聞いた限りではパスカはジム巡りをしているんではなかったのか。いや、ハナダでカスミと仲良くなったのか。

そういえばカスミが手伝うといっていたが何をする気なのだろうか。たぶんパスカが俺のジム、トキワジムに来るまでになんか計画を練って来るはずだが、なにか嫌な予感がする。いや、カスミが何かするとしたらあまり期待は出来ない。なにせ歩くトラブルメーカーのようなもんで、レッドに鼻血ださせるわ、レッドを貧血で倒れさせるわ何かと大変だったのだ。

「…仲直り、か」

あれから何年もたつが未だに彼女への罪悪感も消えないし、未だ謝罪も出来ていない。仲直りにはだいぶ大きく厚い壁があるが、それが達成されたときを想像し、覚悟を決めた。もう、逃げない。あの日のように何も出来ず、ただ傷つけるようなことを繰り返さないように、覚悟をきめたのだ。
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