大きく回り始めた個々の歯車



「パスカ、かぁ」

噂通り…というかタケシたちから聞いた通り不思議な少女だった。いや、別に変とかおかしい訳ではなく、ただ純粋に不思議な少女だった。



まず不思議な点の1つめは、異常なる彼女の強さだ。彼女の繰り出したポケモンは後から聞けばもらったばかりのポケモンだったらしい。視かも高レベルの。

通常、あれほど高レベルなポケモンはバッヂを5、6個ほど持っていないと命令を聞かないものだ。しかし、あのゲンガーは彼女の指示にしっかり従っていた。普通ならあり得ないことだ。またそれだけではなく、タケシのジム、つまり1つめのジムでもとても高レベルのポケモンを出したらしい。まだバッヂを持っていなかったころから高レベルのポケモンを持ち、そして戦う。彼女はそこらの挑戦者とは格が違うようだった。


もう1つは、彼女自身にある。風に吹かれ艶めきながら揺れる黒髪、ここらではみない前が開いていて左右対称ではないスカート部分を持ったワンピースと白いスカート、そしてそこから伸びる握ったら折れてしまいそうなほど細い手足。それらのどれもが、この世の物かと考えてしまうぐらいだった。失礼だが、別段美人な訳ではないけれど、それでも何か、他の人たちとは違う何かがあった。彼女には悪いが、まるで異世界からきた人間のような気がした。

また、ジム戦の時に揺れたスカートから覗く太ももには白い包帯が巻き付けられていた。なにか怪我でもしているのかと考えたがそのような様子もなく、まさかお洒落で着けてる訳ではないだろうからとても気になった。彼女は白い包帯で、いったい何を隠したいのだろうか。消えない傷痕なのか、それとも、その傷痕が刻まれた時の痛ましい隠したいほど辛い記憶なのか。ジムで行った戦闘の一度しか交えていない私には分からない。だが、私の中には1つの思いが芽生えていた。


彼女と、友達になりたい。


意識するとよりその感情は沸々とわいてきた。まだなにも彼女のことを知らないが、それならそれで楽しそうだ。これから彼女のことを沢山知れる。


ジムリーダーとして、まだジム戦という名の仕事が残っているので、それを置いて追いかけるなんて馬鹿な真似はしないが、もしかしたらまだ町に滞在しているかもしれない。後でレッドを通して明日いるか聞いてみよう。もしかしたらお茶とか一緒に行けるかもしれない。




まあ、何はともあれ、まだ次のジム戦には時間がある。兎も角情報を纏めてみようと彼女の情報をそこら辺にあったメモ帳と水性ペンで書き出してみる。キュッと音をたてながら情報を書き込んだ。書いた内容はジム戦で使ったポケモン、身体的特徴、服、それにレッドと一緒にいたことだ。

書き出した紙を見て溜め息を小さくつく。本当に全然彼女のことを知らないのだなと実感した。たいした情報になりそうな情報は無さそうだ。どうしたもんかと水性ペンを指でくるくる回すとレッドくんと一緒にいた、と書いてある部分をみてこれだ、と思った。あのレッドに女の子の知り合いがいるだなんて珍しいことだ。態度からして恋人でも無さそうなので友人と行ったところだろうか。

でもあの旅に出るまではマサラに引き込もっていて、ジム8つをスピード攻略し、チャンピオンになったらなったでこんどはシロガネ山に引きこもったという話のレッドがいったいどこで友人を作ったのか。非常に難しい疑問だ。でもふ、とグリーンの顔が頭を過った。もしかしたら彼と同じ様に幼馴染みかもしれない。



そう考えたらあとは早かった。さっそくグリーンに聞いてみようとホケギアを取り出したところで次の挑戦者様が来ました、と館内放送が流れ事前にスタッフにポケモンセンターでの回復を頼んであったポケモンたちを受けとる。仕方無しにポケギアを机に置いてジム戦に向かう。

挑戦者はトキワの森で遊んでいそうな虫採り少年だった。てめえなんかにまけないんだかんな!なんて少々言葉づかいが悪い少年であったが、バトルが始まれば威勢よくバタフリーに指示を出していた。が、先ほどまでパスカと戦っていた私には簡単に倒すことができた。彼女と比べ、弱すぎる。いや、これが二番目のジムに挑む人間の標準の強さなのかもしれない。だとするとやはり彼女は不思議な人物ということか。

もっと頑張って絆を深め踏ん張ってきてから、もう一度おいで、と虫採り少年に軽く声をかけて控え室に戻る。机に放置してあったポケギアを取って椅子に腰かけた。電話帳をだし、そこから目的の人物の名前を選択した。

[…はいもしも…]

「あ、グリーン?いま暇よね?」

[カスミ…たしかに今こっちじゃ夜だから時間はあるが一応相手の都合は聞け!!]

「ええい面倒くさい!!!!四の五のいわず暇なら私と話なさい!!」

[…はぁ…はいはい。で、ご用件は?]

「ふっふっふー。ちょーっとだけ聞きたいことかあるのよー!!!!!!」

友達候補のパスカのこと、爪先から頭の天辺から家族構成から胸囲から好きな人の名前まで吐いて貰うんだからね!!!!覚悟しなさいグリーン!!!!!!
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