あれはフラグであったのだったのか。



よく分からないがマツバさんからなつかないから、という理由でゲンガーをうけとった日の午後5時、いまだに開けてないモンスターボールを見つめ、名前どうしようかなぁと考えながらハナダジムに挑戦する時がきた。

横にいるレッドくんとなんか今日は塩鮭食べたいねそうだね的な会話を繰り広げ扉を潜ればそこにはすごく広い屋内プールが存在していた。さすがお転婆人魚の名は伊達ではないってことか。だか流石にそのプールを覗いても、若い女の人たちばかりでジムリーダーぽい人はいなかった。なんだかんだよかったと思う半面すこし残念な気もした。絶対こんな広いプールで泳いだら気持ちいいよなぁ…水タイプのポケモン欲しいわ。まあ今の子達が十分可愛いから捕まえにいくなんてことはしに行かないんだけどね。

ふと奧を見やれば一番奥に白い審判の人が乗りそうな階段上のものがあり、その一番上に人のような形があった。どうやらあれがジムリーダーのようだ。なんだか足のところが肌色なのは気のせいなのかきっと短パンなんだよねうん。自分の心のなかでそんなこんなで自己完結させていれば横からレッドくんが百面相してないでさっさと行こう、と言いたげな目で見てきた。なんかレッドくん目力あるよね、関係ないか。


水兵リーべー僕の舟的なジムトレーナーさんを上手いこと避け、ジムリーダーがいる白い所の前に立つ。上を見上げれば、よくきたわね、と芯がありまた女性らしい高さの声で発したあと、その階段を下りてきた。

「あなたがパスカね、私はカスミ。ここ、ハナダジムのジムリーダーよ。レッドも久しぶり」

「…」

「……」

「…えっなに?二人とも私に塵かなんかくっついてでもいる?」

「…」

「…」

「……レッドくん、鼻血でてる」

「…ごめん」

ポケットから小さい子が喜びそうなピカチュウが印刷されている袋に入ったポケットティッシュを取りだし無造作に鼻を擦るレッドくんに少しだけ冷ややかな目線を浴びせた。これはしょうがないだろうけど、私の行動もしょうがない。

「…あの、えっと、レッド?」

「あーっと、カスミさん?カスミちゃん?」

「あ、なんでもいいわよ!敬語も要らないし!!」

「じゃあカスミちゃんで!!…それでさ、あの」

「ん?なに?」

「あのさ…なんで、白のスク水?」

「ああこれ?これはね、勝負下着的な意味合いの水でね、最近これ着るようになったんだ!」

まえはビキニタイプでお腹も出てたんたけどさ、やっぱりちょっと露出減っちゃったからなぁ…うーん。そんな爆弾発言をぼぼんと落としてきたカスミちゃんは余りに飄々としていて、素でいっていることがよくわかった。

その、前と言うのを思い出してぶっという大きな音とともにまた更に鼻血の量を増やすレッドくん。さぞかし彼がバッチ集めの旅に出ていた時は苦労したのだろう。波乗りをしなければならない海でビキニのお姉さんにあったときは彼の回りの海一面真っ赤に染まったのだろうな。あと海パン野郎でた瞬間に死んだ目をしていそうで怖い。むしろそこまで想像できる自分が怖い。

ああ危ない危ない、羽織るの忘れちゃったとパーカーのような色素の薄いものを切れば少し残念そうな顔をしながらもレッドくんの鼻血はおさまった。レッドくんに生足とか二の腕とか好きだったんだ、と少し冷めた口調でいえば、…そういう訳じゃないんたけど、とほんのり赤い顔で言われた。むっつりの素質はあるが、どうやら無自覚なだけの初な子のようだ。よかった。むしろそこでうんなんて速答されていたら困る所か固まってしまっていた気がする。


「まあ私の水着の話はもういいとして、そろそろジム戦始める?」

「あっうん!お願いします!」

「…審判は僕がやる」

「じゃあお願いするわ!」

カスミちゃんはそうレッドくんに言うと頼んだわよ!!と威勢のいい声と共にモンスターボールを投げた。中から出てきたのはヒトデマンだった。そちらもどうぞ!と言われたので適当にボールを投げた。実を言うと対策はもう諦めた。なので簡単にいえばロシアンルーレット方式だ。だから誰が出てくるかも全く分からない。


「うん、じゃあよろしくねゲンガー」

出てきたのは先ほど譲り受けたばかりのゲンガーだった。なつかなかったから、なんていっていたものの私が声をかければ元気よく鳴き返してくれた。しかもしっかりとゲンガーまで育ててあるところ、マツバさんも結構愛情もって育てていたようだ。技も確認してみればシャドーボールにたたりめ、どくづきにかみなりまであった。技マシンじゃないと覚えられない技まであり、そこまでしっかりと育てたのに私に譲った理由がよく分からなかった。


「じゃあ準備も整ったみたいね!レッド、よろしく」

「…。はじめ」

少し間を開けたあと地味に拭いきれなかった鼻血が少しついているレッドくんがジム戦の始まりを告げれば、じゃあお先いただき!ヒトデマン、たいあたり!!と先制攻撃を仕掛けてきたカスミちゃん。あまりの素早さに少し吃りながらもゲンガー左によけて!とギリギリの所でかわす。

「私の先制攻撃を避けるなんてよく鍛えられているわね、そのゲンガー」

「みたいね!私もビックリ」

そう漏らせば聞こえて来たらしいゲンガーから信じてなかったのかとでも言うような感じで鳴いてきたので急いで否定しておいた。今日出会ったばかりだから力量が分からなかっただけなのだ。仕方がないじゃないか。

「んじゃあ次はこっちで!ゲンガー、どくづき!!」

ゲンガーはその言葉を発したとほぼ同時に走りだし飛び上がると華麗にプールのすぐ脇にいたヒトデマンの横に入り、喰らわせる。しかしカスミちゃんも黙ってみている訳ではないようでヒトデマンに水のなかに逃げるように命令した。そうして逃げ込んだヒトデマンを追おうとするゲンガーを寸の所で止める。水タイプと水中で戦うなんてあちらに歩がありすぎる。

だがしかし、水中に潜ったはずのヒトデマンの動きは非常に鈍かった。先ほどのどくづきがしっかりと決まっていたのだ。ならば術はひとつだ。

「ゲンガー!後ろに下がって!!」

不自然に水面が揺れはじめた。きっとこれはヒトデマンが水面まで上がって来ている証拠だろう。案の定だんだん上からもヒトデマンらしき影が見えたきた。

「ヒトデマン!!みずでっぽう!!!!」

「避けてゲンガー!!!!」

幸い毒で鈍り体力も消耗されていた為か思うほどみずのはどうの威力はなかったらしく、ゲンガーは側転をしながらも綺麗によけて見せた。あの丸っこい体で側転しても丸い物体が転がっているようにしか見えなくて少し笑ってしまったが、いまはジム戦の最中で少しでも隙を見せたら危険な上に相手に失礼だと思いすぐにそれをのみ込む。

「ヒトデマン、もう一度みずでっぽう!!」

「ゲンガー、たたりめ!!!!」

両者が一斉に指示を飛ばせば、どちらも技を仕掛けようとしはじめる。だが状態異常で行動が遅いヒトデマンにゲンガーが負けるはずもなく、水面から出てきたヒトデマにたたりめを決めた。水面にぷかぷか浮かぶヒトデマンをレッドくんはじっと見つめ、ヒトデマン、戦闘不能。と簡潔に告げた。

「…ご苦労様、ヒトデマン。ゆっくり休んで。お願い、スターミー!!」

「ゲンガー、引き続きよろしくね!」

カスミちゃんが次に繰り出したポケモンはスターミーだった。スターミーはモンスターボールから出ると同時にヒトデマンと同様にプールに潜った。また水中かよ、といいたげなゲンガーに頑張ってね、と声をかけておいた。どうやら先ほどの戦闘時にプールの水か技によるものかはわからないが水がかかってしまったらしく、少し気になるらしい。体についた水分を飛ばそうと体全体をぶるぶるとふるわせていた。

そんな間にもスターミーは颯爽と水のなかを駆け抜けていた。あまりにも自然に、尚且つ楽しそうに泳ぐので、ほんのすこしだが泳ぎたくなった。そんなことを考えている暇もなく、カスミちゃんはスターミーにかたくなるを命じていた。少し攻撃がききにくくなったスターミーだが、水中にいる間ゲンガーは手出しが出来ない。どうしたもんか、と考えていればカスミちゃんはその隙を見逃してくれないらしく、いつの間にか水面近くまで来ていたスターミーにバブルこうせんを指示した。



「…ゲンガーっ!!」

「遅いわ!!」

気づくのが遅かったらしい。慌ててゲンガーをよんだが避けられず避けようとしていたゲンガーの顔面にもろに当たってしまった。

ゲンガー、大丈夫!?とゲンガーに問いかければ水を払っていたときと同様に体をふるわせていた。そして私に向かい一鳴き。意外に大丈夫だった…というかほぼ効いてないらしい。それにはカスミちゃんも吃驚だったようでまだ二つ目のジムなのにどれだけ育ててあるのよ!?と驚きを隠せないようだった。それは私も聞きたい。だがなんだかんだ、そう発していたカスミちゃんはなにやら楽しそうに口角を少し上げていた。


「…レベルの差、かぁ…。なによ、燃えるじゃないの!!!!」

そう告げたカスミちゃんは本当にやる気満々の様子だった。着ていたパーカーをぐっと捲り上げればなにやら横からぶっという音が聞こえた。レッドくん…。と少し冷ややかな目線を送れば…ごめん、と謝罪の言葉を頂いた。別に怒ってはいないのだが鼻血は…いや、何も言うまい。

「スターミー!!もう一回かたくなる!!!!」

そんなことをしている間にもカスミちゃん迅速に、そして的確に指示を飛ばしていく。鼻血について考えている隙はなかった。でも、先程の攻撃から攻撃の糸口になるようなものは見つかった。多少捨て身なものになってしまうが、さっきの感じから多少ならば大丈夫だという結論にいたった。

「ゲンガー…、いける?」

そう問えば、私が何を言いたいのかをわかったらしく、自信に満ち溢れた目で肯定と受け取れる返事を受け取った。このゲンガー、すごい賢い。マツバさんは何故この子を本当にくれたのか未だに分からん。

「スターミー、水面からバブルこうせん!!!!」

「ゲンガー、よろしく!」

水面から出てきたスターミーはなんの戸惑いもなくゲンガーに向けてバブルこうせんを放ってくる。ゲンガーはバブルこうせんを受けながらもシャドーボールをスターミーの直ぐ下の水面に斜めの方向で高速でぶつけた。

「?なにを…っ!?」

自分の頭上まで上げた水飛沫に自分で口角が自然に上がったのがわかった。これならいける、そういう絶対的な確信があったからだ。指示を出さずとも、ゲンガーは私が次に何を言うのか分かっているようで技を放つ準備をしていた。軽く深呼吸をし、息を整える。スターミーが水中にもどり、水飛沫が水面に戻る前に、指示をだす。


「ゲンガー、かみなり!!!!!!」


広い水のジムに、黄色の閃光が瞬いた。


――――――――――
―――――



「はい、これがブルーバッチね!」

どうぞ!と丁寧に渡されたそれをありがとう!と返事を返して受け取る。これでグレーバッチに続き二つ目のジムバッチだ。これがとれたのはゲンガーと、これをくれたマツバさんのお陰だ。今度会ったときはお礼をいわなきゃ、と考えたところでそういえば連絡先きくの忘れた、と気付いた。偶然あったときかエンジュのジムに挑戦するまでお礼は後回しだなぁと申し訳無いと思いながらも心のなかでありがとうございますと言っておいた。

「挑戦ありがとね!あとレッドも審判ありがとう!!」

「…ん」

「…レッドくん、ちょっと垂れてる」

はなつっぺでもしてたら?といえばはなつっぺって何と返されてしまった。そういうことをしない子だったとは…不覚だ。それとも私が変なのかなぁ。


「そういえばパスカのゲンガー強いわよね!どうやって育てたの?」

「あ、いや、エンジュのマツバさんから貰ったんだ」

「…へぇ、あの人が。ふぅん」

そう言えば少しにやにやと考え出したカスミちゃん。何かあるの?そう聞けばんーべっつにー?なんて返されてしまった。うぅむ、なにやら気になる。だがいくらカスミちゃんに聞いても知らないほうが楽しいことも面白いこともたくさんあるのよ!!とにやにや状態で軽くあしらわれてしまった。これは凄く気になるが、きっと教えてもらえないだろう。なんだか残念だ。

「なんか凄い不完全燃焼だけど…まあいっか。」

「そうそう!頑張ってね!!」

「……うん?よくわかんないけど分かった」

「ん!それでよし!!!!」

じゃあ今度はジム戦じゃなくても遊びにおいで!!とカスミちゃんは私に遊びの約束を取りつけ元気一杯にまたの再戦を心よりお待ちしてるわ!!!!と手を振りながら送り出してくれた。途中でそれにしてもマツバも必死だなぁなんてカスミちゃんの蚊の泣くような小さな声で紡がれた呟きに対してのレッドくんがそれは僕も思う。なんて返していたが訳がわからなかった。とりあえず無事二つ目のジムは終了です。やったねレッドくん。
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