眠くなるくらい昔なお話。
暖かい陽射しの中、私とあの子はおやつを食べていた。それは小さなお茶会のようで、二人だけの秘密のようで、グリーンに見付からないように、二人でヒッソリ部屋にこもって。
小さな時から私より大人っぽかったあの子はナナミお姉ちゃん、これあげる、とおじいちゃんからもらった和菓子を少し分けてくれて、まだ幼かった私はありがとうって笑ってた。
あの子がグリーンとの仲が良くなかったのは少し残念だったけど、この二人だけの秘密の時間が私にはとても嬉しかった。
どうしてこんな素敵なこをグリーンは嫌いなんだろう
そう思ったのはいつだったかな。たしかその時、私はグリーンに聞いたの。そしたらグリーン、羨ましいんだって一言いって出ていっちゃったんだよね。すっごく小さな声だったけどちゃんと聞こえたの。
ああ、なんだ。まだ仲直りできる可能性があるんだ。私はきっとそんなことを考えたんだ。
私とあの子とグリーンと3人で、いやレッド君も含めて4人で仲良くお茶会が出来ることを夢みたの。
そう、夢を見ていたの。
一生叶わないはずの夢を。
いつだったんだろう。いつからだったんだろう。あの子が私の前から消えたのは。
おじいちゃんに聞いても顔を背けられ、グリーンなんか何かを思い詰めた表情になって暫く話してもくれなかった。
グリーンの寝言はこの日からいつも"ごめんなさい"に変わって、おじいちゃんは毎日何処かへ出掛けていった。
みんな、変わっていった。
あの子も、グリーンも、おじいちゃんもみんな。みんなみんな、変わっていってしまったの。
この世界に私だけをとりのこして。
やがておじいちゃんは出掛けなくなり、グリーンは何も覚えてないようにこのマサラからレッド君とともに旅立っていった。
それからグリーンはジムリーダーになり、レッド君はマサラに戻ってこず、おじいちゃんは暇さえあれば空を眺めていた。
それでも私はいまだに椅子に座ったままだった。お菓子を並べて、たまにジョウトからきたヒビキ君とコトネちゃんのポケモンの毛繕いをして、マサキさんたちに会って。
あの時から私も気づかないうちに変わったのかもしれない。
でもきっとそれは表面上だけなの。
今も昔も私は夢を見てるんだもの。
あの子とまた、お茶会をする日を
イッシュのほうからグリーンへ電話がかかってきたらしい。PWT、というものへの参加依頼だったそうだ。
でもそれを伝えてきたグリーンは心ここにあらず、といったところだった。
おじいちゃんが調度いいからナナミも行ってきなさい、といいチケットをくれた。イッシュなんてひさしぶりだ。グリーンの闘いっぷりをみて、ついでに観光もしちゃおうか。
だって、いっぱい経験すれば、お茶会の話になるでしょ?
ほらやっぱり。いつになっても私はあの子のことを考えている。
いま、何処にいるかも分からないあの子。
きっと美人さんになっているんだろうなぁ。
とってもあなたに会いたくてたまらないよ。
ねぇ、パスカ…
翡翠の歯車はもう回りはじめていた。
彼女の夢にはもう、手が