離別の足跡は、近い。
あいつが来てから数日、退院できるほど私の身体と体力は回復した。
あの事を気にしてか、おじいちゃんは最近は長い時間私に着いていてくれるようになった。
それは嬉しいが迷惑をかけているという事実を改めて実感し、心のなかで反省した。
…でも、このままじゃいけない。
研究所を出ていく決意はかたまっているんだから。
この事は、言いづらいけどちゃんとおじいちゃんに報告をしなくちゃ。
そう思い、今目の前でせっせとなにか(レポートかな?)を書いているおじいちゃんに声をかけることにした。
「ねぇ、おじいちゃん」
「おおパスカ。どうしたんじゃ?」
「…私、イッシュ地方に行こうと思うの」
「…そうか」
おじいちゃんはあまり驚かなかった。何となく気づいていたのかも。そういうの鋭そうだしね。
ただ、ほんの少し、残念そうにしていた。
微妙な空気が漂い始めた中、おじいちゃんはいつもと変わらない優しい顔で私を見ていた。
「…いつ行くのじゃ?」
「まだ考えてないけど…、来週中には行きたいと思ってる」
「…金はどうするのじゃ?」
「貯めたお金で行こうと思うの。暮らすお金は旅をして貯めればいいかなって」
「…本気、なんじゃな。」
「うん。」
「ならばわしはもうなにも言わん。ただし…」
「?」
「暮らすのはあちらの博士に頼んでおくから、そこで暮らせばよい。」
「…そこまでしてもらっちゃっていいの?」
「もちろんじゃ!」
なんたって、パスカも大事な孫だからのぅ、とおじいちゃんは続けて言ってくれた。
…なんとカッコいい。きっと若い頃は持てたんだろうなぁ…
その後、正式に退院の日程をお医者さんと決め、その事をおじいちゃんに伝えた。
無事にあちらの博士に承諾が取れたらしく、おじいちゃんは安心と悲しみが入り交じったような、そんな声で私に伝えてくれた。
本当にこの決断でよかったのか、この決断は正しかったのかなんて考えてしまったけれど、もう後には退けない。
私は膝の上にカゲボウズをのせ、イッシュへのチケットを相談しながらとった。
罪悪感からなのか
目の前の景色が潤んだような、気がした。