ごめんなさい。
本当は、少しからかってやろうと思ったたけだった。
なのに、あいつは崖の底に吸い込まれて、俺の前から消えていった。
なんで?
俺が気持ち悪いと拒絶してきたポケモンは、確かにこの手の中にあったはずなのに
なんで?
俺はあいつを傷つけたかった訳じゃなかったはずなのに
本当は、あいつに嫉妬してただけだったはずなのに
じーさんがあいつばっか構うから、寂しかっただけだったはずなのに
俺が持っていないポケモンを、持ってるあいつが羨ましかっただけだったはずなのに
なのに、あいつはこの場にいない。
まだ子供な俺でも、崖から落ちたらどうなるかぐらい分かっていた。
大怪我をする。
酷いときは死ぬ。
自分がどれだけ大変な事をしたか、すぐに分かった。
じーさんが慌ててジョーイを呼ぶ声が聞こえる。
一緒に呼ばれたジュンサーが救急隊を引き連れて、こちらに来る音が聞こえる。
そこにあいつの声はなくて
雨音だけが俺の耳に残った。
焼けるように瞼に現れるのは落ちる寸前のあいつの顔で
やがて助け出されたあいつは、血まみれになってぐったりしていた。
手には決して離すことがなかったモンスターボールが。
その手も切り傷や痣だらけだったが、それ以上に酷い痣があった。
俺が蹴った時についた痣だ。
落ちたときに丁度ぶつけたらしく、見るからに痛々しい傷が出来てしまったらしい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
いくら謝っても許されない、そんな罪を背負った。
こんな事態を引き起こした俺に泣く資格なんてないのに
目にたまった涙は雨と共に流れていった。