確認


重い。
頭を占めるのはそんな二文字だった。
ただひたすらに、重い。
榊に呼ばれて来てみれば、何故だかよくわからないうちに図書館に資料返却に行かされている。
なぜだろう。
手元にあるのは大量の分厚い資料の山。
そして、研究室にはまだ資料がある。
まだ一度も往復していない、というか研究室を出たばかりなのだが、既にふらふらしてきた。
これはまずい。
もう少し一度に持つ量を減らすべきだった。
今からでも引き返すかと踵を返した時、
「あ、ラエ。」
後ろから、陽気な声がかけられた。
少しだけ振り返ってみれば、声の主はやはりコウタだった。
「よーっす。」と呑気に近づいてきたかと思えば、
「って、大丈夫?手伝おっか?」
なんて言うものだから、
「うっせぇ!」
つい声を荒げてしまった。
「え、なんでキレられたの俺。」
コウタは若干退きつつ、目をパチパチとさせている。
そんな彼を見て、ふと我にかえった。
「あ、いや、悪いな。頼めるか?」
「おう!お安い御用だせ!」
手元の資料を差し出せば、コウタは頼もしくガッツポーズをした。
コウタの腕も自分の腕も、同じぐらいに見えるのだが。
「お前って、ホント物持てないよな〜。」
笑い半分にラエの手元の資料を受け取りながら、そんなことを言う。
反射的に睨み返せば、
「いえ、なんでもないです〜…。」
気まずそうに視線を逸らした。
確かに、自分はあまり重い物は持てないが。
今でもコウタに半分以上持ってもらっている。
正直、かなり助かった。
「しっかし、博士こんな本読んでるんだな〜。俺には全然わかんないや。」
本のタイトルを見て苦笑するコウタ。
持っている資料の一番上に、オラクル物理学と書いてあった。
オラクル物理学といえば、アラガミ進化論の基礎だ。
ゴッドイーターからすれば常識である。
「お前はもう少し読んだ方がいいと思うぞ。」
「うっ…。ラエまでそんなこと言わないでよ。」
区間移動用エレベーターを待ちながら、他愛もない会話を流す。
「事実だ。」
「うぅ…。そりゃあ、読んだ方がいいに決まってるけどさ〜。」
コウタが口を尖らせて文句を言う。
榊からの教示も、ほとんど寝てばかりだったことが思い出される。
そうだ。もう一つ思い出した。
「…ていうかお前、もうすぐ昇級試験だろ?」
ギクッという効果音がお似合いなほど、大袈裟に肩を揺らした。
「オラクル物理学は確実に出るぞ。」
「うっ!」
コウタの顔から血の気が抜ける。
それを横目で捉えつつ、
「実力はあるんだから、筆記で落としちゃ世話ねぇな。」
エレベーターを待つ。
遠くまで行っているのか、中々やってこない。
手元の資料を早く返却したいのだが。
そして、横から妙に視線を感じる。
「…なんだ?」
「…いやぁ、実力は認めてくれてるんだなって思ってさ。」
こちらが顔を向ければ、あちらは顔を逸らした。
意味がわからなくて首を傾げる。
「…?そりゃそうだろ。同じ部隊じゃねぇか。」
「………」
また沈黙。
コウタは資料を見つめていた。
「…何だよ。」
「…ラエって、そういうとこ……。」
ようやく、視線があった。
しかし、
「あー、いや!なんでもないッ!」
それはすぐに終わった。
明らかに誤魔化したとわかる大声。
「ほら、エレベーターきたぞ!」
開いたドアに慌てて駆け込むコウタの姿を、ため息一つで追った。





[ 1/4 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -