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「うぅ、見失ってしまいました…。」
肩を落とし、息を整えるルーシー。
「まだきっと近くにいるはずだよ!」
アイリーンはぐっと拳を握り占めて見せた。
「おびき寄せれたらいいんすけどね〜…。」
その後ろで、イーギスもくたびれたように呟く。
アバドンを追ってみたが、素早い上に物音に敏感で、近づくことができない。
何度か見つけては逃げられ、また見つける。
その繰り返しだった。
不意に、響鬼が思い出したように顔を上げた。
「あ、それなら出来るかも。」
「さすが先輩!」
「響鬼くんすごいね!」
すぐさま輝く双方の視線。
けれども片方は聞き流された。
「愛しのアイリーンちゃんとルーシーちゃんのためなら。」
「ナチュラルに俺無視ですか!?構ってくださいよっ。」
「これ。」
そう言って、取り出したのは一つのスプレー缶。
きょとんとした顔が広がる中、ルーシーが目を丸くした。
「もしかして…。」
「そ。イーギスちょっと腕出して。」
人差し指を立てて見せた響鬼が、イーギスを手招く。
イーギスは自らを指差しながら近づいてきた。
「俺っすか?」
ためらいもなく手を差し出す。
そこに、スプレー缶から出た霧が掛けられた。
「なんすか、これ?」
ルーシーの戸惑った声が聞こえる。
イーギスが尋ねれば、響鬼はにっこりと笑った。
「挑発フェロモンだよ、頑張ってね。」
遠くから轟いてきた音。
その方向に視線を向ける間に、「じゃ、俺達は離れていようか。」という響鬼の声が聞こえた。
「ぎゃあぁぁあ!!」
音の先には、大量のアラガミ。
すっと、響鬼は二人を連れてイーギスから距離を取った。
イーギスは絶叫とほぼ同時に駆け出す。
ちらりと振り返れば、目を疑った。
「え?いや、えぇ!?ちょっと待って!!俺だけっすか!?」
やって来たアラガミは、すべてイーギスを追っている。
思わず二度見してしまったほどだ。
「アバドンはおびき寄せられなかったみたいだね〜。他、探そうか。」
それを遠目から見つめながら、響鬼が踵を返した。
「え?あの、でも、イーギスさんが…」
困惑するルーシーとは裏腹に、アイリーンは目をぱちくりとさせていた。
「大丈夫、大丈夫。アバドン探してる最中にアラガミにでも襲われたら大変でしょ?イーギスがまとめて引き受けてくれるって。」
出発を促すように、背中に腕を回す。
「イーギスくんすごいね!こんな量相手にするなんて。」
「ですが、さすがに辛いのでは…?」
おずおずと申し出るルーシーに、響鬼は目を細めた。
「男には格好つけたい時があるんだよ。黙って見送ってあげて。」
「えぇぇぇ!!」
後ろから、イーギスの叫び声が届いた。





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