先駆




静まりかえった図書館。
ふと何かの気配で目を開けた。
その方向に視線を向ければ、
「…お前、今寝てたろ。」
呆れたような顔をしたラエが歩いてきた。
「………」
持っていた本を閉じ、視線を逸らす。
言外に見抜いたのかラエが溜息をついた。
「風邪引くっての。あぁ、お前は例外か。」
並べられた本棚をなぞる。
その中から2冊、3冊と本を取り出す。
「だが、そんなとこで寝られると邪魔だから気をつけろ。」
「…ん。」
ノジアの返事に一瞥し、早々に去っていくラエ。
ノジアも本を戻し、歩きだす。
適当に本棚の前を歩く。
視界には、旧世代の本が所狭しに陳列されている。
その一角へ足を踏み入れる。
すると、開けた場所に出た。
閲覧するために並べられた机と椅子の数々。
その中に、見知った髪色が見えた。
スヤスヤと寝息をたてて、机に伏しているアイリーン。
その周りに広がった本たち。
ノジアがやって来たことにも気付いていないようだ。
ふと、先程のラエの言葉を思い出す。
「…アイリーン。」
呼びかけてみるが、全く反応がない。
幸せそうに眠る表情。
どうしたものかと思案してみる。
この図書館は何となくもの寒い。
「アイリーン、起きろ。」
仕方なく、肩を揺すってみる。
すると、アイリーンはううんと眉を寄せ、唇を震わせた。
「お兄ぃ…あと5分…」
ごそごそと頭をうずめる。
再度肩を揺すれば、
「うー…お兄ぃ〜?おかえり〜。」
ぼんやりとした顔で笑うアイリーン。
ノジアも手を止めた。
お兄ぃと言えば、この場にいない彼であろう。
いつもアイリーンがお兄ぃと慕ってついていく彼だ。
ふにゃふにゃと何かを呟いたかと思えば、また寝息をたて始める。
その様子にノジアは一息つき、上着を脱ぐ。
そっとアイリーンの肩にかけ、その隣の机に腰掛ける。
全く起きる気配のないアイリーン。
少し待っても起きないようなら、どこか暖かい所にでも連れていくかと考えながら、アイリーンの周りで重なっていた本を手に取る。
読んだことのない本だった。



――――――――――


あとがき

まずは、キョラクターを貸していただいた子犬様、ありがとうございました。
ネタ提供もありがとうございます!
書いていたら、アイリーンさんが可愛くて身悶えました。
とりあえずノジアそこ変われ。

そして、友情出演ラエ(笑)




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