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「よ〜っし!今日も張り切って行こうー!」
荒廃した街に、不釣り合いな声が響く。
声の主であるロミオは軽々とバスターブレードを振るった。
「元気だな、お前は。」
ロミオに数歩遅れて、ジュリウスが歩いてくる。
その後ろにはギルバートの姿も見える。
「へへ、これが取り柄なんで!」
眩しいほどの笑顔を受けて、ジュリウスは苦笑した。
「…で、どっちの方角なんだ?」
そこに、ギルバートが追い付いた。
見渡す風景。
人類が生きていたであろう成れの果て。
もう、慣れきってしまったが。
「偵察班によるとこっちだな。」
ジュリウスが指差した方向。
元々は建造物が立ち並んでいたのだろうか。
そこには、瓦礫の山が広がっていた。
「うへぇ、ほぼ道無いじゃん。」
ロミオがつい顔を顰める。
瓦礫に埋れて向こう側は見えない。
「迂回か?」
「いや、この奥に潜んでいるらしい。」
「え、この山越えるの?」
目の前には、自分の身長などゆうに越す残骸。
大小様々な瓦礫が積み重なっていて、登るのに苦労は必須だろう。
「…仕方ない。」
先陣を切ったのはジュリウスだ。
手近な瓦礫に手をかけ、ひらりと飛び乗った。
ギルバートもそれに続いていく。
こうなれば仕方がない。
二人に続けと手を伸ばしたら、
「うっ…」
あと数センチ、届かない。
グッと喉が詰まる。
そこに、
「ほら。」
手が差し伸べられた。
見上げれば、ジュリウスが屈んでこちらに手を伸ばしている。
首が痛くなるほど、遥か高い位置から。
「どうした?」
太陽との逆光。
その奥に見えるギルバートも、ジュリウスも、太陽の所為か眩しい。
ふと、視界に写ったジュリウスが首を傾げた。
「……ごめん。」
その姿に気を取り戻し、手を取った。
引っ張り上げられてようやく上に登る。
まだまだ、上はある。
まだまだ、先は長い。
「…取り柄、ねぇ。」
「うっ!うるさいよ!」
見透かしたようなギルバートの笑みに、顔が熱くなるのを感じた。





――――――


あとがき


いつぞやのものを少しだけ加筆修正しました。
ロミオとギルが言い争っているのが可愛いです。




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