これは、遠い未来の話



思いがある。
いつから抱いていたかは分からない。
どうやって結びついたかも分からない。
でも確かに、それはここにあって。
ふと、見上げる青空に。
湿った空気に。
笑い合う声に。
何かに反応しては、どうしようもなく胸を締め付けた。
今日は透き通った青空だ。
なんとなく空気が吸いたくなって、歩み出す。
見慣れた街並み。
舗装された道。
靡く花々。
暖かい太陽に照らされて、一段と綺麗に見える。
少し、遠出をしてみようか。
足取り軽く、頬が風を感じる。
ふわりと伝うあまい香り。
どこかで出会った花だろうか。
つられて鼻先を向ける。
そこには小さな紫色を宿した花が咲いていた。
頬が緩む。
大切な何かに向けるように。
よく見ようと歩を進めれば、ふと、声が届いた。
決して大きくはない声だった。
思わず溢れたような音が、すっと馴染んで染み渡る。
視線を向ける。
せり上がってくる何かに、鼓動が脈を打ち始める。
思いが、あった。
ずっと何か分からないものを抱えていた。
何故持っているかも分からなかった。
それが、願いとして溢れ出す。
この気持ちは、この願いは、ずっとこのためだったのか。
頬を伝う願いは、光に照らされる。
貴方の名前を知っている。
また、呼ぶ事が出来る。
動いた唇は、確かに彼の名を呼んだ。



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