しりとり | ナノ

「しりとり、するっス〜!」
ティーダが嬉々としてそう言って、セシルは僅かにに首を傾げた。
「シリトリ…って、何だい?」
その遊びを知らないセシルに、ティーダは遊び方を教えた。
何故ティーダが、その時、その遊びを始めたがったのか…は、解らない。
…けれども、そう。
多分、きっと。
初めはただ、単に暇だったから…。
そういうことなのだろう。
きっと、そういうことだったのだろう。
「くだも『の』」
「『の』は『ら』」
「『ら』くら『い』」
「『い』『し』」
ティーダから始まった言葉遊びは、取り留めもなく続いていく。
「『し』る『し』」
「上手いなぁ」
「同じのが返ってくると焦るっスよね〜。セシル、『し』っスよ、『し』」
「うーん…。『し』あ『い』?」
取り留めの無い、言葉のやりとりは続いていく。
「『い』って、さっき出た…」
「だね」
「う〜…。『い』…『い』…。…『い』『わ』!」
「え…『わ』?」
「『わ』〜♪」
「『わ』…か…。参ったな…」
どちらが詰まるまで、決して頭文字にならない語が語尾である言葉しか無くなるまで…。
「ティーダ、1文字の言葉は有りなのかな?」
「1文字っスか?」
「うん。木とか目とか」
「アリっすね!」
「良かった。なら…」
その遊びの様相は、まるでこの世界で闘い続ける、自分達に似て…。
「『輪』…」

――輪――

秩序と混沌。
両陣営の戦士達ががんじがらめにされているこの世界の理。
勝敗が決すれば全てが振り出しに戻る輪廻転生。
前回の闘争を、今の2人が覚えている訳ではない。
「『輪』…」
覚えている訳では、ない。
『わ』からない…。
と…。
切り出したのはティーダだった。
…ティーダはセシルを見た。
セシルもティーダを見ていた。

『わ』からないものなのか。これが…この闘いがいつ終わるの『か』…。
『か』えりたいか『い』?
『い』まではないけれ『ど』…。
単純な名詞でのやりとりの筈だった言葉遊びは、しかしティーダの言葉から、言葉尻を捉えた会話になった。
…『ど』うして、そもそも僕等は戦っているのだろ『う』…。
『う』んめ『い』?
『い』くらでも理由は付けられるだろうけれど、その言葉で片付けるのは止めた方が無難か『な』…。
『な』『ぜ』?
『ぜ』ったいに…。
セシルは言葉を切ってティーダを見た。
不安そうな表情を見せるティーダの頭を、いつもフリオニールやクラウドがする様に、軽く。
撫でて少しだけ微笑む。
「『ぜ』ったいに、いつか嫌になるだろ『う』?」
「…『う』ん…」
ティーダは僅かに頷いた。
「『う』ん…。そうかもしれないっス『ね』…」
「『ね』ぇ、ティーダ…」
セシルはティーダから手を引いた。
ティーダはそれを少しだけ寂しいと感じた。
「『ね』ぇ、ティーダ。それでも僕等、ここに居ることで、きっといつか、もっと強くなれるんじゃないかな。…力も、心『も』」
「『も』っと、強『く』…?」
「『く』るしいことだろうけれど『さ』」
身体は、魂は。
命は、記憶が忘れたことをも、覚えている、という。
この世界で幾度となく転生を強制されてきた彼等の魂は。
彼等の命は。
この世界で起きた、彼等の手に余る苦しみを覚えている。
彼等の身を切って尚余りある悲しみを覚えている。
だからきっと。
何があってもきっと。
…その命は強い。
「…『さ』いごは…」
「うん?」
ティーダが呟いた。
セシルは話を促した。
「『さ』いごには…笑っていたいなっ…て、…今、ちょっと思っ『た』」
「『た』ぶん、きっと――」
セシルは言った。
「出来るよ。ティーダだけじゃなく、皆。でなければどうして、戦い続けてなんていられるもの『か』」
「『か』なら『ず』…?」
ティーダはセシルを見た。
セシルもティーダを見ていた。
「必ず」
一瞬…。
ほんの一瞬だけ。
ティーダは泣き出しそうな顔を見せた。
が、堪え。何とかセシルに笑って見せて…。
「しりとり…先ずは俺の勝ちっスね」
「あ…」
ティーダがそう言えば、セシルは今気が付いた様な、少々間の抜けた声を上げて頭を掻いた。
「参ったな…」
「へへっ。でも面白いっしょ? これ」
「ははっ、そうだね」

――輪――。
がんじがらめの輪廻転成。
…けれどもそれが、この言葉遊びの様相に似ているのだとしたら。
…だとしたら、そう。
多分。きっと。
…きっと、永遠に続くものでは、決して、ない…。







陛下発売記念日ですよ。
そして陛下の発売記念日ということは、エースストライカーの発売記念日なのですよ。
大丈夫。忘れてません。

…っという訳で!
陛下及びエースの発売記念フリー短編でございますっ!
日頃の感謝を! 全力で! 滴る程に込めましてっ!
こんな重たいお話でも良い、という奇特な方は!
どうぞお持ち下されませえええうええええええええええええええええええええええええええぇぇぇっ!!

皆様大好きだあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!


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