ちゅぱげちーみーとちょーちゅ | ナノ  
例えば、仲間に対して「悪いことをした」という自覚がある上で、その仲間が自分に怒りを覚えていることが明白な場合。
秩序の軍勢の中で、「相手の言うことに従うだけで許しが貰えるならば、やる」という思考の持ち主は、果たして全体の何割か。
…恐らく、10割。許して貰えなくとも良い、という思考の者は、まず居ないだろう。
…これには、まぁ、「相手は自分が死ぬ程嫌がることを要請しないだろう」という、幾らかの甘えも入っているだろうことは否定しないが。
…さて。
先ずは状況を説明しよう。
いや、そんなに複雑ではない。
スコールに対してティーダが怒っていて、スコールが謝っても許して貰えなくて途方に暮れている。
ただ、それだけの話だ。
彼がティーダに何をしてしまったのか…については、2人のみぞ知る、といったところだろう。
重要なのはティーダがスコールに怒っていて、スコールが謝罪をしている、という事実だ。
「…ティーダ」
「絶…っ対許さないっス」
「…」
これがもし、口の上手いジタンやバッツ、或いは頭の回るオニオン辺りだったら、上手く宥めすかして事無きを得られただろう。
だがこれが、こと対人関係においては頭も口も回りが良くないスコールときたもんだ。
…一応、フォローしておくと、戦闘においては、彼は頭の切れる戦士である。
「ティーダ」
「駄目」
「…」
取りつく島の無い相手への食い下がり方等は、さすがに学校でも教えてくれなかったらしい。
スコールは考えあぐねて、情けない声で呟いてみる。
「…どう…したら、いい?」
「今更何をどうしたって――あ」
「!?」
怒り心頭のティーダは、スコールのそんな呟きを、冷たく突っぱねようとして…。
その途中、不穏な声を上げた。
当然、スコールはビビる。
そんなスコールに、ティーダは何故か真面目な表情で言った。
「…スコール、何でもするっスか?」
「え゛…」
当然、スコールは喉が潰れた様な声を発して言葉を詰まらせる。
ティーダはそんなスコールに構わず、先を続けて。
「例えば…スコールの世界って、『スパゲティ』ってゆー料理、あったっスか?」
いきなり何を…と、スコールは思ったが、取り敢えず発音云々はさておいて、似たような名前の料理はあった…ような気がする。
スコールは頷く。
「硬めに茹でた麺に油を塗して…?」
「そうそ、それ。じゃあそれにかける『ミートソース』は?」
「…聞いたことは無い…。でも、肉を主に使ったソースなんだろう?」
「正解っスね」
「…作れ、と?」
「や。スコールに作ってもらうくらいなら材料探して自分で作る」
「…あんた、実は酷いな」
「当然っスよ。怒ってんだから。それとも何スか俺より旨く作れるんスか?」
「ぐ…」
スコールは言葉に詰まった。
「…で?」
そうして…やっとのことで唾を飲み込み、恐る恐る、先を促してみる。
「で!」
ここにきて。
ティーダがにやぁっ…、と。
何とも気色の悪い笑い方をして。
スコールは思わず後退った。
そんなスコールに、ティーダは追い掛けるようにして言い放つ。
「スコール。『ちゅぱげちーみーとちょーちゅ』って言えたら許してあげるっスね」
「…」
スコールは頭が真っ白になった。
…そこへ間が悪いことに、我等が光の戦士がやってきて、2人の会話を聞いてしまった訳ですよ。
「ティーダ。『ちゅぱげちーみーとちょーちゅ』とは?」

………………2人は撃沈した。

「…ティーダ、俺が悪かった…」
「いや…俺も悪かったっス…」
何故2人が撃沈したのか、光の戦士が解る筈も無い。
「…?」
訝しげな顔をして佇んでいる光の戦士に、2人が事の説明をする気力も無いことは、言うまでもないことである…。

何よりも恐ろしいのは、「知らない」という状態なのではなかろうか。
というお話。



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