▼ 【エド&アル篇】
余裕の無さは、次第に行動に現れる。
闇雲に身体を重ねたい衝動に駆られ、結局はこの曖昧さに耐え切れなくなるのだ。
一日、二日と時は過ぎ、其れでも俺達の関係は代わりはしない。
当然ともいえるだろう、なまえは次第に笑顔が薄れていった。
「兄さん、もう止めよう」
先に断念したのはアルからだった、日毎に憔悴していくなまえに悲しみ、泣きそうな顔で俺に詰め寄ってくる。
「そうだな…、俺もなまえのあんな顔、見たくねえ」
五日で彼女を落とすと豪語するも、一週間経った今でも状況に変化はない。
それ所か更に悪化する一方だ、何時でも気づくのが遅すぎる。
「なまえ」
椅子に座って窓の外を見るなまえに声を掛けると彼女は僅かに微笑んで振り返る、行為をする以前の様な笑顔は見当たらない、俺達は其れを見て後悔に苛まれた。
「如何したの?エド、アル」
其れでも心配掛けさせたくないと思っているのか、なまえは無理して笑顔を繕う。
痛々しい事この上ない、そうさせたのは俺達二人なのだと分かってはいるのだが。
「決められないんだろ?」
余計な言葉を言わずに核心を突くと彼女は途端に表情を曇らせた、その悲しそうな顔で悟る、そう簡単には心は変えられないのだと。
「御免、ね。私本当に二人共同じ位好きで、直ぐには決められないよ……」
俯きがちになまえは呟いた、薄暗い部屋に光る小さな雫が俺達の胸を突き刺す。
「泣かないでなまえ。僕達が悪かったんだ、振り回して御免ね」
静かに涙を流す彼女にアルは駆け寄ってそっと抱き締める、俺は其れを見て何も出来なかった、後悔ばかりが頭を過ぎり、ただ立ち尽くす事しか出来ない。
「ゆっくりでいい。だけど、何時かは選んでくれるか?」
そう俺が彼女に問い掛けるとなまえは笑顔でコクリと頷く、俺は其れを見て少しだけ心が晴れた気がした。
「本当に私を好きでいてくれて有難う。私ね、暫く考えてたんだ。二人は私を全身で愛してくれる、だから私も」
「なまえ?」
「え?何どうしたの……、ん……ッ」
一瞬何が起きているのか理解できなかった、目の前に映るのは、二人の唇が重なった姿、なまえ自らアルに唇を重ねている。
「……ん……ッ、はあッ、ちょっとなまえ、いきなり何する」
「だから、私も二人を愛したい。本当に二人が好きだから」
なまえは椅子から立ち上がりパサリと衣服を床に落とした、窓から差す月明かりが彼女の肢体を美しく照らしている。
「……後悔しねえな?」
俺の頭の中には否定はなかった、俺はなまえを抱きたい、少しでも自分に好意を抱いているのならば拒否する理由は無いと思った。
暫くしてなまえは黙って頷き俺の所へ歩み寄ってくる、決意を秘めた彼女の潤んだ瞳に俺は目を閉じて彼女の唇を受け入れた。
唇を重ね合わせたまま俺はなまえをそっと床に押し倒す、下着を取り外し、其れを床に投げ捨て、優しく乳房を揉みしだいていく。
「アル……」
首筋に顔を埋める俺を受け入れながらなまえはアルに声を掛ける、暫く躊躇していたアルは覚悟を決めて彼女の唇を貪った。
「んッ、はあ……」
双方から襲い掛かる刺激でなまえは艶のある声を漏らす、俺は乳房を愛撫し、アルは秘部に指を埋め、互いに彼女への愛情を与えていった。
「凄い濡れてるよ、なまえ」
「こっちもすげえ勃ってる」
俺達は愛撫する箇所を愛しそうに見つめ甘い声を出す彼女に囁き続けた、其れを聞き入れる彼女は恥ずかしそうに瞳を閉じ、更に愛しさは膨らんでいく。
「エド……、してあげる」
上体を起こしたなまえは俺の下半身に触れてスボンのファスナーをゆっくりと下ろした、其れに動揺した俺は身体が硬直し、彼女のなすがままになってしまう。
「なまえて、ぁ…ッ」
取り出された既に主張した肉棒の先端を、なまえは音を立てて唇を寄せた、その刺激で俺は身体をビクつかせ、其れを見た彼女は嬉しそうに猛った肉棒を口内に含んだ。
「僕はなまえを気持ち善くしてあげるね」
銜えられた俺の肉棒を見つめていたアルは微笑みながらなまえの秘部に舌を這わせる、ピチャピチャと音を立てて嘗め回し、その刺激を誤魔化す様に俺の肉棒吸い付いた。
「……っはあ…ッ、なまえ……ッ」
眉間を寄せて乳房を揉んで気持ち善さを伝えた、口内で舌が竿部分に絡まり既に欲を吐き出したくて仕方ない。
「んんッんう…ッ」
蜜壷に指を挿入され其れでも舌を動かすアルの愛撫に、なまえは腰をくねらせて喘ぐ。
口淫と下半身と卑猥な水音が重なり、俺達の息遣いは室内に荒々しく響き渡った。
「……なまえ、もう限界……」
自分でも激しく腰を揺さぶり絶頂へと向かっていく、其れを口内で更に膨張をみせた自身で既に悟っていたなまえは更に肉棒に吸い付いて精液を迎える準備をしていた。
「ふう…ん…ッん―――ッ」
「……っく…ああ…ッ出る…ッ」
アルは指の動きを早めていく、そして俺は彼女の口内に白濁液を放出し、なまえは腰を浮かせてほぼ同時に絶頂を迎えた。
クタリと横たわるなまえに少し萎えた肉棒を引き抜いた、しかし再び膨張を始める俺のモノが暗い室内で黒く天井に向かい主張した、……俺は此れが若さかと俺は皮肉に笑った。
「アル、お前に譲る」
なまえを起こし俺は彼女の背後へと回る、其れを聞いたアルは大きく頷きながら自分の猛った肉棒を蜜壷へあてがった。
「なまえ、大好き」
挿入する直前にアルは穏やかに言葉を紡ぎそっと唇を重ね合わせる、其れを彼女は嬉しそうに微笑み徐々に埋め込まれる肉棒を受け入れていった。
「……ぁッ…ああ―――ッ」
総てを飲み込んだのを確認し俺は背後からなまえに口付けをする、両乳房を手で包み込み、律動を始めたアルの手助けをせんと、タイミングよく彼女を動かしていく。
「……気持ち…善い…?なまえ…」
「んあッ……アル、気持ち善い……ッ」
肌と肌を打ちつけて甲高い音が鳴り響く、結合部分からの音と、なまえの喘ぎ声が俺達の欲を最大限にまで駆り立てた。
「エド……、エドも来て…ッ」
「え?だけどお前……」
前はアルのモノで埋め尽くされている、……となれば、収める所は後ろしかない。
「我慢出来るのか?」
心配そうになまえを覗き込み言葉を投げ掛けると、彼女は目を細めて笑い途切れ途切れに口を開いた。
「だ、大丈夫、三人で気持ち善く、なりたいから。エド、早く、来て」
一体何処まで彼女は俺の心を揺さぶれば気が済むのか、一言一言が俺を感激させ心を震え上がらせる、好きすぎてどうにかなりそうだ。
俺は固くなった肉棒を後ろの穴にあてがい深く口付けを交わす、きっと痛いだろう、其れを何とか緩和するように至る箇所に愛撫を与えて。
ゆっくりと先端が入り込んでいく、其の度になまえから苦しそうな呻き声が聞こえ、申し訳ないと思いつつも根元まで挿入していった。
「ああ―――ッ」
其の締め付けに堪えきれなくなった俺は一気に律動を早める、アルを床に寝かせ、其の上になまえを乗せ、そして俺は後ろから容赦なく腰を打ち付けた。
「……あ……ッ、なまえの、凄い締め付けてくるよッ」
「やばい、持ちそうにねえ…ッ」
「あんッあッ……んああッ」
三人の声と息遣いが互いの興奮を高めていく、溢れる愛情を腰を叩きつける事で示し、俺とアルは快楽に溺れる。
アルは下からなまえの乳首に舌を這わせ俺は背後から彼女の淫核を摘んだ、なまえは大きく喘ぎながら腰を動かし、顔を俺の方向へ向けて舌を絡ませる。
「……んあッ…エド…、アル…ッ私もう……ッ」
その言葉を待っていたかのように俺達は総ての力を振り絞ってラストスパートに向かう、ピストン運動を限界まで早め、俺達は瞳を閉じて快楽に身震いした。
「……ああんッイク……あ―――ッ」
「ああ……ッ」
「…………ッ」
俺は二度目の精液を放出しアルは其のまま膣で果てる、なまえは顔を上げて大声で喘ぎ、そしてアルに覆い被さって達した。
荒々しく息を切らせるなまえにそっと衣服を掛け俺とアルは彼女に密着する、其れを愛しそうに見つめる彼女に、俺達は頬と額に唇を落とした。
「お前の生まれ故郷に一度行ってみてえな」
「僕も行きたい!なまえの生まれた所ってどんな所?」
ふと俺達は彼女の過去に興味を抱く、そういえば俺はなまえの事を詳しく知らない、……其れこそ今更なのだが。
するとなまえは苦笑いを浮かべ困惑の表情のまま、口を開いた。
「……それがね、私昔の記憶が無いの。何かのショックで記憶喪失みたいになっちゃって。目が覚めたらミュンヘンに居たの。最近は少しずつ思い出してきてて、名前と誕生日は思い出したんだけどね」
「へえ…、其れは辛かったな」
「なまえの誕生日っていつなの?」
初めて明かされた真実を聞かされ俺とアルは眉を下げて口を開く、アルの言葉を聴いた彼女は嬉しそうに言葉を返した。
「8/31だよ」
……リゼンブールのなまえと同じ誕生日、まあ、向こうの世界と少なからずリンクしている部分のある此処では其れは不思議な事ではない。
「そっか、それじゃ其の日はお祝いしなきゃな」
「うん、楽しみだな。…………あ!」
床を見つめながらそう呟くとなまえは突然大声で叫びながら両手を叩いた、其れに驚いた俺とアルは意表を突かれ言葉を失う。
「エドとアルを見て断片的だけど昔の事を思い出した!そういえば私、二人の男の子に毎日花を貰ってた。……そう、確か貰った花は」
嬉しそうに満面に笑みを見せるなまえを見つめ、俺達は目を見開いて見詰め合う。
「……なあ、その花、お前思い出せる…?」
「ねえ、兄さん。まさかなまえって……」
もしかして、そう恐る恐る彼女に問い掛けると、なまえは"うーん"と頭を捻りながら必死で記憶を取り戻そうとしていた。
「え……っと、あ、そう!思い出せて良かった。確か”シロツメクサ”っていう白い花だよ」
「はあ!?」
「嘘!」
其の名を言われ俺とアルは血相を変えてなまえに詰め寄る、シロツメクサは俺達が毎度彼女に渡していた花で、当時の俺達には、シロツメクサが漂わせる控え目ながらも可憐な雰囲気が一番彼女に相応しいと思っていたから。
「何――――ッ」
「ちょっと何でリゼンブールのなまえが此処にいるのさ!?」
「え、何……、どういう事?」
俺達は何時か想いが報われる時が来るのだろうか、今は分からない、だけど此れだけはきっと確かなもの。
俺達はこの世界で生き続け、未来に希望を馳せて彼女と共に歩んでいくのだと。
END
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