願い、叶わぬ、花散りて 2

薄暗いある部屋の一室には二つの影が蠢いて、不規則でありながらも淫らな水音が響き渡った。
一つは迫り迫る烈火の訴求を艶かしい声色に変換させ、もう一方は轟く雷光を有した瞳と体内に蓄積された激昂を放出せんとする為に、無慈悲な行為を宛もなく繰り返す。

「……なまえちゃんの中とろっとろ。こうやって動かす度にさあ、きゅうきゅうに締め付けながら絡み付いてくんの、君の此処。ね、俺の指ってそんなに美味しいの?」

「……も、う、いやあ…ッ。いつまでこんな事を続けるの?善逸……」

「そんな事聞いてどうするの?聞いた所で俺は答えないからね?ほら、もっと脚を開かないと。奥まで気持ちよくさせてあげられないでしょ」

「……ッ……、……ああ……ッ」

蜜壷を何度も掻き回しながら自分の下で喘ぎ続けるなまえちゃん見つめると、光と影で形作られる彼女の身体は尚一層色っぽさを際立たせていた。
繰り返される愛撫に反応しながら彼女は途切れ途切れに言葉を出して、暗闇の中で震わす色香溢れる声が他人よりも秀でた俺の聴覚を更に鋭敏にさせる。
えっちで可愛い声だね。
俺がこんな声をなまえちゃんに出させてるんだ。
俺だけが普段は聞けない音を自分のせいで、孕ませて産み出してる。
床で横たわる彼女を激しい熱で浮かされた瞳に映しながら、俺は一度舌舐めずりをして嬌声を漏らす劣情の標的の唇を無理矢理に塞いだ。

「ふ、う……!んんっ」

初めてなまえちゃんと繋がったあの日から、誰にも言えない俺と彼女の甘やかな関係は続いている。
毎日放課後を迎える度人気の居ない場所へ連れ出しては、自分の内から這い上がる情火の塊を愛しい友人に与え続けていた。

「んあ、ああっ」

「うん。此処気持ちいいね?でもこの中をくちゅくちゅされながらなまえちゃんの可愛い小さくてぷっくり膨れた此れをいじると、もっと気持ちよくなって喜ぶんだよ?」

「あ、其処は……いや、あっ」

埋め込んだ二本の指を僅かに折り内壁を仕切りに振り込むと同時に、外側で小さくも主張を顕す柔らかな突起物を親指の腹で擂り潰す。
闇と仄かな月明かりで作るなまえちゃんの二対の山が優美に動きながら、口元と下半身の根元からは厭らしい音が仕切りに奏で続けた。

「もうやだあ……っ」

「……嘘つき」

何時でも俺から逃げる事が出来る筈なのに、なまえちゃんは毎度俺に大人しく抱かれる。
時には何故こんな事をするのか問いただされる事もあるけれど、本気で嫌ならば俺を張り倒してでも阻止すればいいのに彼女は行動に移さないのだから、吝かではないのだろう。

「な、んで、こんな事するの。善逸……っ」

「……本気で聞いてるの、それ」

まだ分からないのかなあ、こんなに意思表示しているのに。
それとも理解してる上で敢えて知らぬ存ぜぬを貫いてるの?
残酷だよね、腹が立つ位に。

「死んでも教えない」

教えてなんであげないよ。
なまえちゃんが気づくまで、俺を完全に受け入れるまで、俺は君を抱き続けるから。
俺はさ、なまえちゃんが欲しいよ。
毎日、いつでも、どんな時でも抱いて繋がっていたいって思ってる。
でもさあ、なまえちゃんが自分で俺を欲しなければ意味がないっていう事もきちんと分かってる。
身体も欲しいけど、何よりも君の心が欲しいよ。
お願い、俺を愛してよ。
その温かくて柔らかいなまえちゃんの中だけじゃなくて、俺の全部を欲してよ。
じゃないと俺は報われない。
だからこうするしかないんだ。
なまえちゃんが俺を丸ごと受け入れてくれるまで、嫌がっても泣かれても虚しい逢瀬を繰り返していくしかない。
身体に愛を刻み付ける事でしか選択肢はないのだから。
だから何度だって気持ちを伝えるよ。
心も身体も全部俺に寄り添ってくれと、そう願いを込めてさ。

「……いやぁ……ッ」

「なまえちゃん……」

だけど幾度身体を重ねてもなまえちゃんは俺を受け入れてはくれないよ、どうして?
解れた身体は俺を求めてるのに、俺自身を求めてくれない。
込み上げてくる虚しさで瞳から涙が溢れた。
こんなに好きなのに、好きで好きで発狂してしまいそうな位想いは膨らんでいるのに、なまえちゃんの心は近づく所か離れていく一方な気がした。
一体いつこの想いは報われるのだろうか。
もどかしくて仕方ないよ。
こんなに近くになまえちゃんは居るのに、こんなにも彼女の肌は熱く滾っているのに、繋がる以前より彼女が遠く感じる。

「なまえちゃん……!」

「……っひゃ…ッ善逸、痛いっ」

首筋に付けた無数の痕は昨日残したものより更に色濃く映えた。
薄くなった以前の痕が消えぬように、俺は其の上に重ねて唇を押し当てる。
少し強く肌に吸い付くとなまえちゃんは顔を歪ませて身を捩じらせた。

「なまえちゃん、逃げちゃだあめ」

「……あっ」

逃げ惑うなまえちゃんの腰に腕を回し、更に密着した身体から彼女の鼓動が直に伝わった。
肌で感じる彼女の体温はとても落ち着く。
"此処も触られるの好きだよね?"と低めの声色で囁きながら胸の先端を指で転がすと、再び彼女は甘い声を漏らして身体をくねらせた。
暫くの間耳の縁に舌を這わせ音を立てながら、時々耳輪を口内に含んでなまえちゃんの羞恥心を煽った。
舌先で外側をなぞってはゆっくりと中を攻めて、喘ぎとびくつかせる身体の反応を長い時間楽しむ。
色っぽい喘ぎ声に俺の息遣いも荒くなり、耳元で何度も恥ずかしい言葉を紡いでは、右手は常に既に潤った蜜壁を凌辱し続けた。

「んああ……ッ、あ、ああッ」

「今更なんだけど、この部屋って部室だよね?なあんか汚くない?」

「んあっ、耳元で話さないで……!」

「あ、ごめんね?でも気になっちゃって」

休み無くなまえちゃんの性感帯に快楽を与えながら、施錠すらされていなかったこの部屋の周囲を見渡した。
一体何部が使っているのだろう。
繋がりたい一心でなまえちゃんを無理矢理此処に連れ込んで、嫌がる彼女をこの部屋に捩じ込む事に必死で適当にドアの前に備え付けられていたプレートまで確認していなかったから分からない。

「何の部だろうね?なまえちゃん知ってる?」

「し、知らな、……ああっ、んんっ」

「あっ、そうか。そうなんだ。へー、あそこが使ってたんだあ。……ねーえ?なまえちゃあん。俺さあ、面白いもん見つけたんだけどお」

相変わらず激しい愛撫をなまえちゃんに与えながら辺りに目線を向けていた俺に、部屋の片隅にずさんに放置されているものは卑猥な妄想で頭が埋め尽くされた。
掻き回す指を継続したまま必死に俺の腕にしがみつく彼女に声を掛けると、"ほら、あれ"と誘導された自分の視線の先を見たなまえちゃんの先ほどまでの忙しない動作が嘘みたいにぴたりと止まった。

「……やだ。そうやって甘え口調になる善逸の時って大抵ロクな事言わな……んああッ」

「いっひひ!さっすがなまえちゃん!俺の事良く分かってるよねえ。まあねえ?其の通りなんだけどさあ。理解してるなら話は早いよね、じゃあ」

「やだ……ッ絶対にいや、っあ、ああーっ、善逸、いやあ―――ッ」

「俺のお願い聞いてくれないともっと気持ちよくさせちゃうよ?知らないよお?明日足腰立たなくなってもさ。あ、でも生まれたての子鹿みたいにプルプル震えるなまえちゃんも可愛いから、それでも俺は満足かも!」

なまえちゃんが話している途中でもお構い無しに挿入していた指を更に奥へ奥へと沈めていく。
ごめんねえ、最初から君に拒否権は無いんだよね。
何がなんでも俺は現実にしたいからさ、卑怯かもしれないけど激しく攻めてあげるよ。
蜜液を掻き出すように乱暴に内壁を強く擦り付けながら、濡れそぼって肥大したいやらしい突起物を舌で転がし強く吸い付いた。
突付く様に舌先で淫核を刺激し続けると、なまえちゃんは快感で身体を仰け反り顔を天井に向けて叫ぶ。

「わ、分かった。分かったからあっ」

「本当?お願い聞いてくれて嬉しいなあ。ありがとね!じゃ、お願いしまーす!既に裸だしすぐに着れるよね?」

「……んあっ……。ぜ、善逸。止めてくれないと何も出来ない……」

「……あっ、ごめんねえ」

秘部を執拗に舌を這わせていると、なまえちゃんは消え入る様な声を振り絞りながら気だるそうに起き上がった。
恨めしそうな雰囲気を醸す上目使いが無茶苦茶に可愛いなと思いつつ、俺は愛想笑いをした後で素早く身体を離すと、彼女は深く溜息を付いて静かに部屋の隅へ向かう。
辿り着いた所に乱雑に置かれた物を手に取り暫くして、俺の念願を叶えた彼女は威勢良く振り返り俺を睨み付けた。

「……これでいいんでしょ!」

「上出来、良く出来ました!なまえちゃん偉いねえ」

「嬉しくないから」

「俺はすっごく嬉しいよ。ありがと」

恥ずかしそうに身体を丸めるなまえちゃんが可愛くて愛しくて、駆け寄った俺はまるで幼子を誉める様に優しく彼女の頭を撫でて抱き締めた。
背中に回した手からサラリとした布地の感触が心地好い。
この季節では特に見慣れた筈のものなのに、使い方次第ではこんなにも卑猥で背徳的なものに成り変わるのだと俺の欲は激しい上昇を見せた。

「水泳部の部室だったんだねえ」

「……そうみたいね」

此処は水泳部の部室だったらしい。
確か此処数年は廃部の危機にあるらしく今では部員も数人しか居ないと聴いた事がある。
ありがとう、水泳部。
ありがとう、興奮剤を投下してくれて感謝してるよ。
そしてイベントを最大限にまで高めてくれるアイテムの競泳用水着よ、お前の死は決して無駄にはしないからね。

「そんじゃ、早速」

「え……?……きゃあッ」

ガバリとなまえちゃんに覆い被さり布で覆われた秘部に顔を埋めた。
さらさらした素材が唇に心地好い感触をあたえる。
何処の可愛い女の子の水着か分からないですが、背に腹は変えられません、失礼します。と一回拝んだ後に秘部を隠した部分を思い切り引き裂いた。

「ぜ、善逸……!?いきなり何する、……んああ……ッ」

「ぐっちょぐちょ」

引き裂かれた部分に蜜の溢れる性器が目に飛び込んで、こんな些細なオプションを組み込んだだけで俺の性欲は駆り立てられた。
ほんの少しだけ罪悪感はあったけど、眼前の扇情的な光景を前にしたらあっという間に吹き飛んだ。
ああ、今すぐ貪り付きたい。
目の前でぬらぬら光る、甘味で魅惑な動作を見せる生き物に。
逸る気持ちに忠実になり其処を舌で攻めた。
吸い付き舐め回し生まれ出る蜜総てを口に含むと、なまえちゃんは一心不乱に甲高い声を上げ続けた。

「っはあッ、……っや……ッ、あんッ」

「どんどん溢れてくるねえ。なまえちゃんのえっちな液体」

「だ、から!そういう恥ずかしい事、言わないでって……!」

「やーだね!だって可愛いんだもん。……あー、下だけじゃ物足りないや。こっちも破っちゃお」

「えっ?……や、もう、いやあっ」

すっかりとろとろになった秘部から顔を離して、今度は張り付いてふくよかさを象徴した二対の胸部分を覆った部分を勢い良く破り引き裂く。
ぴったりと水着と密着していた乳房はプルンと揺れて姿を現し、その艶かしい風景はふうふうと荒々しく息をする俺の唇を其処に誘惑していった。
二つに穴が作られた水着からなまえちゃんの豊満な肉がはみ出ている。
ぷるぷると小さく揺れる造形物にぬるりと舌を這わせていくと、螺旋階段の様に中心軸へ向かう粘液混じりの口内の門番が切っ先へ到達した。

「勃ってる」

「……!言わないでよ……ッ」

「なまえちゃんは本当に可愛いね」

「んああッ、……善逸……んッ」

不敵な笑みを見せ俺はなまえちゃんのの唇を奪い、ニチャニチャと舌を絡ませそして形の良い乳房を円を描きながら揉んでいくと、彼女は重ね合わせていた唇を無理矢理離し喘ぎ声を放った。
ピンク色に色付いた先端を唇で吸うと其れは更に硬く存在を知らしめて、面白おかしくそれを甘噛みしてはなまえちゃんの反応を愉しんでいく。

「ああんッ………あッ」

「……いやじゃないよね?だってすっごい感じてるもん」

音を立てて唇を落とし、一度身体を離し秘部へと向かう。
指を蜜壷に収めそして舌を埋められた指の回りに這わせていった。
卑猥な音は更に大きくなり、俺は無我夢中で行為に明け暮れる。
ヒクヒクと痙攣する其処は早く早くと俺を誘っているように見えた。
厭らしく収縮する淫らな入口に俺はそのまま猛った自身を埋めていった。

「ああんッあ……あ―――ッ」

「……あ、きつ……」

初めて繋がった時よりも膣中は締め付けが甘くなったけど、それでもきつい事には変わりなかった。
俺の猛った自身を絶えず締め付けるなまえちゃんに向かって、顔を歪ませながら最奥まで一気に貫く。
総てを収めすぐさま律動を開始した後はもうすっかり手馴れたもので、適度に強弱をつけて腰を動かす事など幾度も身体を重ねていた俺には造作も無かった。

「あッああッ…ッ善逸、いやあっ」

「……っあ、嘘付かないでよ。本当、は気持ちいい、癖に……!」

流れる所作でなまえちゃんを俺の上に股がらせ、容赦無く地からの限り下から突きまくった。
すっかり暗くなった外の世界の俺達を照らす微かな月明かりで、彼女の柔らかな胸がぷるぷる揺れている。

「ああッ、善逸。……もう……やだぁ。こんなのもうやだよお……」

「なまえちゃん、何言ってるの?いやじゃないでしょ?すっごく気持ちいい癖に。此処はこんなに濡れてるんだよ?」

……脳裏で最悪な予測が駆け巡る。
頬に伝う彼女の涙は何を物語っているのだろうか。
狡いよ、なまえちゃん。
俺がこんなに君を求めているのに、否定的な台詞ばかり吐いて、俺をそんなに受け入れたくないの?
でもごめんね、それでも行為はやめない、やめたくないんだよ。
俺は男だから、自身に登り詰めてくる白濁の本能に逆らえないの。
高ぶった劣情を抑える事は既に不可能だった俺は、彼女への想いを乗せて強引に抽挿を繰り返す。

「っやあ…ッいやあ――ッ」

「なまえちゃん……、なまえ……ッ」

ああ、こんなにも気持ちいいのに。
幾度となく行為を繰り返しても、虚しさは何時までも消えないよ。
それ所か更に全身にまんべんなく侵食して俺を惑わせるんだ。

もう、駄目なのかもしれない。
何をしてもこの想いは相容れることが出来ないのかも知れない。
だけど、だけどこの感情を押し殺すことなんて出来ないよ。
好きで好きで、どうしようもなく好きで、愛情を身体で刻み付けなければ自分を見失ってしまう位好きなんだ。

膨れ上がる不安をかき消すように俺は絶頂へ向っていく。
俺の上で泣きながら喘ぐなまえちゃんに底知れぬ罪悪感と愛情を感じながら、がむしゃらに腰を叩き付けた。


「ああっ」

「なまえちゃん……」

どれ程繋がっているのだろう。
未だ精を吐き出す事無く俺は彼女と繋がり続ける。
使い慣れない筋肉を酷似しているが為に身体は悲鳴を上げているというのに、もう殆ど無意識でなまえちゃんを抱いていた。
ふと我に返れば互いが密着して対面しあう体位から、獣の様に彼女に覆い被さって、乱暴に彼女の腕を掴みながら律動を繰り返している。

「……善逸。……ねえ、善逸もうやめてよ……」

「止めない。なまえちゃんが俺を見てくれるまで、止めたくねえよ」

肌を重ね合わせば俺の気持ちは少しでも報われると勘違いしていた。
でも間違っていたよ、そう、其れは間違いだった。
それどころか想いは膨大に膨れ上がって、片方は離れる一方で。

「……やだよ……」

じゃあどうすればいいの?
どうすればこの想いに終止符を打てるのか、分からないんだけど。
俺、諦めたくないよ。
なまえちゃんを他の男に盗られたくない。
好きなんだ、大好きなの、俺が絶対に幸せにしたいんだ。

「………」

「泣いてるの……?善逸……」

……泣いてねえよ、泣いてたまるかよ、泣いたら此れまでの事総て、後悔することになっちまうじゃねえか。
俺は抱いた事を後悔したくない。
例え其れが無理矢理した行為でも俺には嬉しくて仕方なかったんだからさ。

「……」

「善逸?」

俺は繋がったまま動きを止めた。
彼女の密壺から自身を抜く事はしなかった、したくなかった、だけどこのままでいてもどうしようもない事も分かっている。

「ねえ」

無言のまま俯いているとなまえちゃんの手がそっと俺の腕に触れた。
突然感じた感触に身体が強張りふと顔を上げると、彼女が僅かに微笑んで俺を見ていた。

「善逸、聴いて?」

「……聴きたくない。なまえちゃん、今までこんな事して本当にごめ」

「いいから聴いてよ。私ね、善逸が好きみたい」

目を閉じて必死で贖罪の台詞を呟いていると、なまえちゃんからの甘い言葉が耳に入った。
俺は何を言われたのだろう。
"好き"?誰が誰を?理解できず混乱して呆然とする自分の姿に、彼女が小さく笑い声を出した後に口を開く。

「……ずっと言えなくて不安にさせてたよね。本当はあの日から答えは出てたと思う」

「なまえちゃん?」

「私ね、あの後考えて、気付いたんだ。私は善逸に乱暴された時怖かったけど嫌じゃ無かった。善逸とこういう事続くにつれてね?私想像してみたんだ。もし相手が善逸以外の人だったら私はどうなんだろうって。考えたらすごく気持ち悪くなった。本当だよ?ねえ、これって私が善逸だから受け入れられてるって、善逸を好きって事になるよね。その事を善逸に言わなきゃってずっと思ってたんだけど。……でも善逸は私の気持ちを確認する事もしなかったし。もしかして好きなのは私だけで善逸は身体だけ求めているんじゃないかって」

「何言ってんの!俺が好きじゃない女の子とえっち出来ると思ってる!?そんな事出来ないよ!俺はさあ、すっごく一途なの!好きになったらその子しか欲情しない!……そりゃあ女の子は好きだし、説得力ないかもしれないけど……」

「……本当に?」

本当だよ。
好きに決まってる、好き過ぎて歯痒くて理性をぶっ壊しちゃった位に君が好きだよ。
俺はなまえちゃんの身体が欲しいんじゃない、ただ君の心が欲しかっただけなんだ。
それを伝えるには肌を重ねる事が一番の得策だと思っていた、俺は恋愛初心者で経験を活かせる過去がない。
そんな無知で恋愛の順序を的確に行動する事に麻痺した俺だから、気持ちを最大まで伝えられるとしたらもう、肉体関係で一つになる事が早道だと思ったんだよ。

「ねえ善逸。私の事、好き?」

馬鹿だなあ俺。
何一人で突っ走っていたんだろうね。
一番肝心なものを忘れていたよ。
愛情を示すものは何も身体の繋がりだけじゃない、言葉で示す事が大事だって分からない筈ないのにさあ。
ていうか普段は砂吐く位に平然と言って退けていたのにね。
何でも本気になると正常な判断を導き出せないものなのかな。

「……ごめん。なまえちゃんごめんね。俺、君が好きだよ。ずっと、ずっとすっごく前から好きだったんだ」

「……うん。私もちゃんと好きだよ」

"随分遠回りしちゃったね"となまえちゃんは照れ臭そうに微笑んで、俺もそれにつられて彼女に遠慮がちに笑い返す。

「今まで無理矢理抱いたりしてごめん」

「ううん。私は嫌じゃ無かったよ、本当に嫌なら……」

「嫌なら?え、何?」

「股間を蹴ってでも止めさせてた!」

「……ひぃっ。やめてよお!男の此処にはねえ!輝かしい未来を繋ぐ浪漫が詰まってんのお!」

恐怖に塗れ崩れに崩れた俺の表情を見たなまえちゃんは可笑しそうに声を出して笑いながらも、嬉しそうに幸せそうに頬を赤らめた。
はあ、もうなんて罪深き可愛さなんだろう。
今まで沢山泣かせてごめんね、沢山辛い想いをさせてごめんね。
今から俺は一生懸けて君のその可愛い笑顔を生ませて護る、幸せの発生源になるから。
だからこれからの締め括りはお互いに気持ちを寄せ合って、忘れる事の出来ない始まりの日にしよう。

「好き」

「私も」

肉体関係になる前のやり取りが飛び交い俺と彼女は久し振りに声を出して笑い、そして一瞬の沈黙の後どちらともなく唇を重ね合わせる。
口付けを交わし続けたまま俺は律動を再開し、暴発寸前の劣情をなまえちゃんに叩き付けた。
すごく気持ちいい、温かくて、柔らかくて、擦れて離れて吸い付く肌の感触で自然と涙が零れる。

「ああんッあッんああッ」

「う、あ……」

心通じ合った関係になった今快感は今まで以上に大きなものとなり、互いが打ち明けなくても絶頂の兆しが到来している事が分かった。
持て余した力を目一杯腰に集中させ、此れ以上ないくらいの力強い抽挿を繰り返し、俺の猛りに猛ったなまえちゃんの中に埋もれたそれは極限まで大きく膨張しているのだと感覚で理解していた。

「あッ、出、る……ッ」

「善逸、……んああ……ッ」

互いに最上階まで高まった欲を発散して、なまえちゃんは仰け反って達し、俺は急いで自身を引き抜いて彼女の腹に欲情の象徴を放ちそのままの身体に倒れ込む。
力なく横たわる俺は彼女の温かく慈愛に満ちた両腕に包み込まれ、労る優しい想いと心地好い心音の旋律に再び涙を滲ませるのだった。

「善逸。ずっと一緒に居てね」

「当たり前だよ!なまえちゃんを幸せにする男はこの俺だけなんだからね?」

もう一度俺達は見つめ合い嬉しそうに小さな声で笑い合った後、どちらともなく唇を重ねて互いの気持ちを確かめ合った。

END
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