ここで生まれる朝

彼女の面影が脳裏に浮かぶと、全身の水分が奪い去られていくような錯覚に陥った。
その度に血の気が引くような感覚に襲われて、俺は頻繁に水を含んで無理矢理に咽を潤すのだ。

全身の水分が失われ枯渇しては彼女を求めて血が騒ぐ。

夜更けに現れる君は生活観など感じさせない、化粧気のある顔と身なりの整ったセンスのいい服。
そして時々前屈みになって形作られて垣間見える、豊満な胸の谷間。
白くしなやかな脚線美は彼女の為に用意された言葉であり、適度に筋肉のついた其の脚に自然と目が向いてしまう俺は非常に卑しい生き物だと自覚はしてる。

其の度に疼いて堪らなくなるんだよ、本当に堪らない。
主張を視覚に披露した身体の一部と共に視線のだ先は一点に集中して、脳内であの子の淫らな姿を思い描いては俺は毎夜猛った自身を抑え込む事に躍起になるのだ。
くしゃくしゃに丸めた紙の中で虚しく佇む放出した白濁を目の当たりにする度に、俺の心はどうしようもなく罪悪感と不満で塗れた。
癒えない渇きを潤すにはやはりその原因を追求する事が肝心で、其の方法に未だ答えが出ていない俺は人の集まるこの場所で眠れぬ夜を強制的に過ごす。

……本当は分かってる。
この渇仰を鎮める為に何をすべきなのか、どう行動に移すべきなのか、漠然と理解はしてた。
滾る熱に見舞われている原因は、俺が彼女に恋情を抱いているからだ。
ただこの感情が真実の愛であるのかまたは単なる憧憬であるのかは、解らない。
曖昧な想いを有しているのは俺があの子の事を良く知らないからだ。
だって俺はコンビニで働く店員で、彼女は俺が接客するお客さんの中の一人なだけ。

今日もあの子は一人店のドアを開く。
此処は俺達の愛の巣窟、義務的な挨拶で迎え入れ君が店内を回っている間中熱い情事を悶々と思い描く羽目になる。

いらっしゃいませ、愛しい愛しいお客様。
今日は何をお求めでしょうか。


一人暮らしは思っていた以上に金が掛かる。
家賃、食費、大学までの交通費、その他諸々。
今年地方から飛び出し親元のじいちゃんから離れた俺は其れなりに一人暮らしを満喫しているが、やはり都会で暮らすにはそれなりに金が必要になった。
俺は学業と併せて生活費や学費を稼ぐ苦学生では無い。
有り難くも仕送りはじいちゃんから毎月口座に振り込んでくれるし、どちらかといえば他人よりも裕福な方だと思う。
ただ俺だって年頃の男。
其れなりに流行に乗り遅れない様に服装に気を使っているし、友人との付き合いもある。
だけどじいちゃんが汗水垂らして稼いだ金を生活費は兎も角娯楽費で使う事は気が引けた。
だから俺は週に4日十時から五時までアルバイトとして働き、稼いだ金を服代や遊びに宛がっていた。

あ、勿論本来の義務を忘れてはいないよ。
俺は学生であり親の脛を齧っている肩身の狭い子供で、きちんとその役割も全うしているつもり。

……まあ、本音を言えば大学に行って夕方まで講義に明け暮れる中で深夜働くのは辛いけど。
其れならば規則正しく夜は寝て講義が終わった夕方以降から数時間だけ働けばいいと誰もが思うだろう。
俺も働き始めはそう思ってた、だけどある時から稼ぐ以外の目的が生まれてしまったんだ。

あの子が店に現れるようになって、逢える楽しみが勤務のやる気を底上げする糧となった。
彼女と出会ったのは俺が研修店員として初めて店に顔を出した時。
深夜丑三つ時に女一人で来店し時間に見合わない服装で閑散とした店内にヒール音が鳴り響いた事は今でも鮮明に思い出せる。

正直言うとさ、第一印象はあまりいいもんじゃなかったんだよね。
こんな時間に派手な格好をして綺麗に化粧をして、男関係が激しそうだと勝手に決め付けた。
めちゃくちゃ可愛いし、あんな子世の男がほっとかないでしょ。
見た目は男受けの良さそうな清楚な感じだからこそ、こんな夜更けにほぼ毎日のように現われる彼女に例えようのない不信感が募った。
でも彼女は非常にフレンドリーで、毎度労いの言葉を投げかけて去っていくギャップに困惑させられていた。

気づけば俺は彼女が来店するのを心待ちにし髪も念入りにセットをしてしまう始末。
来れば話し掛けはしないものの視線は常に彼女に向けていた。

彼女は俺のシフトが入っている日は必ず訪れる、時間も決まって同じ時刻の午前3時、一番人気の少ない頃合だ。
毎度徒歩で来店する彼女にヒヤヒヤさせられた、逆にたまに来ない日があれば何かあったのではと酷く心がざわつく。

ただただ楽しみだった。
会話らしい会話など出来ないが彼女の顔を人目見れるだけで嬉しかった。
だけど何処に住んでいるのか学生なのかOLなのか一切素性が分からない彼女、向こうは俺の名前を名札で把握しているが俺の事を知らない。
俺達はあくまでも店員と客で、店内でしか相容れない虚しい間柄なのだ。

其の寂しさをひた隠しに俺は今日も店に脚を運び職務に没頭する。
だけど此処まで膨らんだ彼女への想いを消し去る事は出来ずに少しでも発展させたい気持ちが上回っていった。


「お早うございまあーす」

仕事をする上で暗黙のルールが存在する、其れはどんなに真っ暗な太陽の照らさぬ時間でも挨拶は必ずこの言葉を発しなければならない事。
何故朝の挨拶を言わなければならないのか定かではない、だけど誰もが疑問を持たずに自然と口に溢す為に自分も郷に従った。

出勤登録と手洗いの迎行は恐らくどの職種でも統一した始業の儀式だろう、身なりを整え準備が万全に整ったら俺は店内の清掃へと入る。
たががアルバイト、されどアルバイト、店内の地位は下であっても業務はきっちりとこなさねばならない。

アルバイトを始めて意外だったのは深夜の業務は想像以上に身体を使う仕事が多い事だった、清掃は勿論の事商品の搬入、陳列、合間に接客を同時進行で行う。
まさに猫の手も借りたい程忙しく心休まる暇さえもない。

そうこうしている間にあっという間に日付は変わりやっと人の出入りが落ち着いてくる。
其れを見計らって俺は法令で定められた休憩を取りに事務所へと向かうのだ。

「善逸は何時も同じ時間に休憩を取るよなあ。もっと遅い時間に取ってもいいんだぜ?」

「この時間になると腹が減るんだよねえ。腹が減っては接客は出来ぬ!てな訳でいってきまーす!」

「はーん、そうかよ。好きにしろよ」

「はいはーい」

呆れた表情で俺に問いかけてきたのは店長である宇髄さんだ。
彼は此処では一番の古株で、滅多に顔を出さないオーナーの代わりに従業員達に指示を促している。
彼とは毎回仕事を共にし少しではあるが気を赦している所があった、大体一方的にからかわれたり意地悪されるばかりで時々嫌気が差すけど。
俺はこの職場が気に入っていた。
彼女に会えるという楽しみもあるが此処の従業員は皆気のいい連中ばかりで居心地が良いんだ。

自分の中での働き先を決める一番の条件は"徒歩で通える距離"だったのだが、採用されてからは"職場の人間関係と環境"も加えて近い日の就職活動の為に役立てようと思った。


三十分の休憩が終わり俺は速やかに職場に戻る、何故早めの休憩をいつも取るのかその理由を宇随さんは何となく察しているのだろう。
以前警報が発令する程の大雨が降った日、当然だが彼女が店に現れなかった時に彼から"今日は来ねえな"と意味ありげな言葉を向けてきたから。
客足がほぼ0の状況だった為に出た発言だったのかもしれない、だけど放たれた台詞は俺が出勤する前から降り続ける位の悪天候で最初の段階で出せる言動でもあった、だけど宇髄さんは違うタイミングで言葉を放った。

彼女は日付が変わってすぐには来ない、時間のズレは多少あるが大体三時から四時頃に来店する。
彼から"今日は来ねえな"と紡がれたのは丁度彼女が店のドアを開ける頃合いだった、だから多分俺の予想は当たっていると思う。

毎回顔を見なければ心が落ち着かなくなった。
同時に彼女の笑顔を見ると不思議と幸せな気分になれる。
早く顔が見たかった、一分一秒でも早く彼女の姿が見たい衝動は日毎に募り続け俺を浮き立たせた。


大分仕事も捗り俺は店内に並ぶ商品を丁寧に前だしをする、自分がもし客の立場で商品が綺麗に並んでいなければ嫌だから、だから俺は何でも完璧にしなければ気がすまない。
ちらりと時計を見ればもうすぐ三時になる寸前、俺は"そろそろか"と今一度便所に篭って髪を整える。

「……よっし。今日もおっとこまえだ!……多分?」

深呼吸をしてドアを開くと、事務所で発注業務をしていた宇髄さんが此方へ向かってくる姿に身体が硬直した。
俺はたった数分でも便所に篭っていた事を叱られるのかと動揺してしまい目が泳ぐ。

「あわわわ。先に弁解しときますけど!べ、べ、別にサボってたわけでは」

「善逸。お前、今日は一人で出来るか?」

「……は?何、宇髄さん帰るの?」

「ああ」

突然言われた言葉に俺は目を見開いて彼を見つめた、すると彼は顔を顰めて髪を掻き乱しながら申し訳なさそうに口を開く。

「嫁から連絡があってさあ。予定日より早く産気づいちまったらしい。出産に立ち会いてえんだけど」

宇髄さんには臨月を迎えた妻が居た。
暇な時間になれば頻繁に彼女の話題を漏らしていて、本当に愛しているんだなと彼の幸福に満ち足りた表情から簡単に感じ取る事が出来る。

「店の事は気にせず行って下さい!此れからは商品も来ないし接客だけだし。後の事は俺に任せて!」

「悪いな。今度飯でも行こうぜ。礼に奢るわ」

「そんなのいいから。早く行ってあげてよ!」

「サンキューな」

そう嬉しそうに俺の頭を撫でたながら、宇髄さんは颯爽と外に飛び出していった。


「はあ。ちょっと気が楽になったかも」

一人の方が余計な気も使わなくていい。
元々俺は人付き合いが上手い訳ではないし、実際ほっと胸を撫で下ろしている自分が居る。
其れに俺が此処に入ってからもう三ヶ月以上経つから、解らない事などもう無いし。
……何よりも彼女と話せるチャンスかもしれない。

今までは宇髄さんが居る為に会話が出来なかった。
別に絶対に話してはいけないわけではない、客とのコミュニケーションは店の信頼を得るに必要な行為だ。
其れは重々承知しているのだが気恥ずかしくてろくに目も合わせる事も出来なかった。
特に彼女の場合は更に酷さを増していく、話す以前に目線は厭らしい所ばかりにいってしまう。
そんな無様な自分を彼女に悟られたくて、普段は顔が煩いと周囲から言われている俺の表情は無愛想に近しくなった。

「……暇だなあ」

有線の音が休み無く流れ続け寂しさは感じないが、自分以外誰も居ない閑散とした店内は何となく室温が低くなっている気がして俺は肌寒さで身体を丸くした。
とりあえず今日のチャンスを何かしらの形にしなければと、彼女が早く来る時間を心待ちに壁に付けられた時計を暫く見つめ続けた。


とりあえず手持ち無沙汰だったのでカウンターの煙草の補充をしていると客の入ってくる合図の呼び鈴が響き渡る。
俺は即座に出入り口を見つめ彼女かもしれないと釘付けになった。

「いらっしゃいませ」

それでも其の胸中を悟られぬように俺が得意の愛想笑いで挨拶を放つと、胸の鼓動を早め出入り口一点を見つめると俺の待ちかねていた彼女の姿が目に映った。

「こんばんは、今日は一人なんですか?我妻さん」

俺の姿を見るや否や彼女は微笑みながら近寄ってくる。
俺は名前を呼ばれた嬉しさと誰でもない自分に向かってきてくれる事が嬉しくて、珍しく顔が緩んでしまう。

「ああ、宇髄さ、……じゃなくて店長はさっき帰ったんです。奥さんが産気付いて」

「わあ、もうすぐ産まれるんですね!きっと可愛いんだろうなあ。おめでとうございますと伝えて貰えますか?」

「は、はい!伝えときます。……あ、あの、失礼ですが名前を教えて貰えます?」

宇髄さんへの言付けに名前を添えなければという名目を利用出来る絶好の機会に恵まれた。
彼女に警戒される事無く自然の流れで彼女の素性を知る事が出来る。
逸る鼓動を必死に平常心を保ちながら問い掛けると、彼女は"ああ"と口を開いた後に柔らかな笑みを浮かべた。

「みょうじです。……あ、宇膸さんにはなまえと伝えて貰えれば分かると思います」

「……なまえさん、ですね。分かりました。伝言と一緒に伝えときますよ」

「よろしくお願いします」

なまえっていうんだあ。やっぱ可愛い子は名前も可愛いねえ。
俺は初めて聞かされた彼女の名を何時までも心の中で呟いた。
滅多に客の名など知る事の出来ない店員と客の立場で、ほんの小さな切っ掛けで彼女の情報を得られた、凄く嬉しくて俺の顔がにやけていないか心配になる。

「それじゃ、私ちょっと店内回りますから」

「あっ、は、はい。ごゆっくりどうぞ!もう、好きなだけ徘徊して下さい!」

「ふふ。じゃあ遠慮無く」

なまえさんは微笑みながら売場へと歩いて行く。
暫く彼女の後ろ姿に見とれてしまった俺はハッと我に返り仕事をしなければと途中だった煙草に手を付けた。
それでもやはりゆっくりと品定めをするなまえさんがどうしようもなく気になって、頻繁に彼女に視線を向けてしまう自分が居た。

「お願いします」

「……あっ、へ、へい!ようこそいらっしゃいませ!」

「何だか普段の我妻さんとは違いますね」

「ごごごごごめんなさい!一人だからかな。何かミスやらかしそうで緊張しちゃって!」

「大丈夫ですよ。何をされても私、怒りませんから」

ぐるりと店内を一周して約十分、大体の物を籠に入れたのか彼女は微笑みながらレジへ向かってくる。
俺はその笑顔を正面から見れず俯いたまま一点ずつバーコードを読み込んでいく、幾度と無く繰り返す単調な機械音に段々と冷静になってきた俺だったが、次の商品を手にとってピタリと動きが止まった。

「……」

は?何だ、此れ。
手に持っている商品に釘付けになったまま頭の中が真っ白になる、何故こんな物を買うのか、どうして必要なのか、想像して激しい感情に襲われた俺の中の何かが弾けた。

「あの……?」

ピクリとも動かない俺を不思議に思ったのだろう、なまえさんは顔を覗き込んで様子を伺ってくる。
普段の俺ならば初めて遭遇した至近距離に狼狽えてしまう筈なのに、何だか全てがどうでもよくなった今の俺の心には響かずに衝動的に彼女の腕を掴んだ。

「え……?」

突然腕を掴まれ驚いた表情を見せるなまえさんなど気にせず俺はヒラリと台を飛び越える。
そしてそのままの勢いで彼女を店の裏口へと引っ張っていった。

「あ、あの、我妻さん。お会計は?急にどうしたん、……キャアッ」

従業員の更衣室に彼女を押し倒しロッカーの中に入れてあったタオルで手首を縛りつける、拘束したなまえさんを冷たい眼差しで見つめながら、俺は制服とシャツを一気に脱いだ。

「あ、がつまさ、あ……ッ」

間髪居れずに手に持っていた物を彼女の前に差し出す、其れを見て彼女は酷く恥ずかしそうに目を逸らした。

「目を逸らさないで。ねえ、此れは、何?」

グイグイと其れを頬に押し付け彼女に問いただす、まさか此れをレジに持って来るとは思わなかったぜ、此れを買うと言う事はと安易に予想がついてしまう。

「……買ってはいけないんですか?」

「……別に悪くないけど。誰と使うつもりなの?」

意地悪く言うと途端になまえさんの顔が赤く染まった。
普段は可愛いと思うだろうが今の俺には腹が立って仕方ない表情。

「一箱なら兎も角、二箱も買い込んでさ。しかもこれをスキャンするのは男だよ?はああ、寝る間も惜しまずに励んでんのかなあ?お盛んな事だねえ」

ニヤリと笑うとなまえさんは目を閉じて顔を横に向ける。
あーあ、可愛いけど腹立つわ。
ムシャクシャしている俺は彼女の顎を乱暴に掴んで貪る様に唇を奪った。
唇を重ね舌を捻じ込む、逃げ回る舌を逃がさないように俺は手を後頭部へ回しながら行為を繰り返す。

「ンン……、ンッ……っふ」

目を開け羞恥心で涙を浮かべているなまえさんを見つめた。
君は残酷に俺を簡単に傷付けてくれるよね。
だけど愛しいよ、愛しくて頭おかしくなりそう。
口付けを交わしながら今日もセンスのいい服に手をかける。
流石に破ってしまうのは可哀想なので、丁寧にボタンを外してゆっくりと脱がしていった。

「……ね、此れ。今使っちゃう?」

カタカタと音を立てながら長方形の箱を振って話し掛ける、涙を流しながら怯えた表情をするなまえさんの形のよい乳房に唇を落として箱の包装を解いていった。

「あ…ああ…ッ」

ピンク色に主張した乳首に歯を立てるとなまえさんは大きな声で喘ぐ。
同時にはっと我に返った彼女の驚いた顔は俺の性欲をどんどん煽っていった。
先端に舌を這わせ、ピンと勃った乳首を刺激すると其れは更に硬く大きくなり、俺は勢い良く貪り付く。

「やあッ……ああん、あッ」

コリコリになった乳首に惜しみなく愛撫を施すと其れに反応するなまえさん。
頭の中で思い浮かべていた彼女との密事に俺は嬉しさで理性を完全に失っていた。

「……あッ、あの、我妻さん……っ、人が、お客さん来ちゃいますよ……っ」

「平気だよ。この時間が何時も閑古鳥な事はなまえさんも知ってるでしょ?」

「……ああっ」

首筋に紅い華を散らし舌先を尖らせて嘗め回す、慣れた手つきでブラとショーツを脱がしそのまま顔を下半身へと埋めていった。
既に蜜で溢れた其処に唇を当てる、下唇と上唇で秘部を覆いそしてそのまま思い切り吸い付いた。

「んああああッ駄目、駄目ぇ……ッ」

拘束された手首で俺の頭を退かそうとしても俺の頭はしっかりと彼女の恥ずかしい部分に密着している、俺が行為を中断する筈も無く愛撫は更に激しくなっていった。
右手で乳首を弄び左手で淫核を摘む、舌を蜜壷の中へと挿入し無茶苦茶に掻き回す。

「あんッあッあ――ッ」

ビクビクと痙攣しながらなまえさんはつま先を弓形に沿っていった。
ベロリと秘部全体を舐め上げ指を蜜壷へと挿入する。

「っや――ッもうやめて、ああッあん、あッ」

「勿体つけないでよ。彼氏とはもっと激しくヤってるんでしょ?……二箱も使い込んじゃう位にさあ?」

言葉に出すと泣きたくなるのは何故だろう。
切ない感情が俺に襲い掛かり自暴自棄になってしまう。
男がいるのなら別にそれでいい、だけどこの気持ちを忘れる為に俺は君を犯して、二度と此処に来れない様にしちゃえばいいんだ。
嫌われるだけ嫌われて俺がこの店を辞めれば済む事だし、そうすればいずれはこの感情も消えてくれる、きっと忘れられるだろう。

「や、やあッああ……あ、ん……ッ」

一本の指を二本に増やしまた更に一本増やしていくと、愛液は収まることを知らずどんどん噴出してくる。
それと比例して膣もキツく締め付け俺は素早く指を動かしていった。

「イって」

口付けをしながら指を膣中で折り曲げる。
何度も内壁を擦りザラリとした感覚が指全体に伝わってくる。

「あれ。もしかしてこれって数の子天井ってやつかな?なまえさんの此処は名器なんだね?」

「そ、そんなの、知らな、ああっ」

口付けから今度は耳に舌を這わせる。
仕切りに身体がビクビクと痙攣するなまえさんを見つめながら彼女を絶頂へと導いていった。

「や、やだあっ、こんな…こんなつもりじゃ、んああッ……っは、あ――――ッ」

なまえさんは身体を沿って達し、愛液を大量に噴出しながらダラリと力無く床に寝転んだ。

「……我妻、さん……」


既にいきり立った下半身を凝視するなまえさんを無視して、箱に敷き詰められた避妊具を一個取り出した。
小さく包装された其れを互いの間の床に投げ置いた瞬間、再び頬を染める彼女の姿に口端を上げて言葉を放った。

「着けてよ。得意でしょ?」

「我妻さ」

「着けて」

不敵な笑みを継続したまま避妊具を渡すと、彼女は俺に漂わす有無を言わさぬ物言いにおずおずと包みを受け取った。
なまえさんは泣きそうな表情を浮かべながらゆっくりと包装を破り、丸く縮まった其れを恐る恐る硬く反り上がった自身の先端へ宛がう。
互いに沈黙を護った状態での取り付け、手首を縛られたまま
なまえさんは手際よく装着していく。
恥ずかしそうに頬を染め瞳を潤ませた後、彼女は全て包み込まれた男の象徴を見てぎゅっときつく目を閉じた。

「……ふうん。流石使い慣れてるだけはあるよねえ。いつも着けてあげてるの?」

「……ッ。違います、私は彼氏なんて」

「嘘なんて言わなくてもいいよ。別に責めてる訳じゃないから」

きちんと装着されたのか確認の意味で再び根元まで避妊具を収め、俺はなまえさんを乱暴に押し倒す。
未だ絶頂の余韻を保ったままの其処に先端をあて一気に彼女の中に入っていった。

「あ―――――ッ」

思い切り貫くと彼女は今までで一番大きな声で喘ぐ。
なまえさんの中は俺の自身をぎちぎちと締め上げ、指で感じていた名器の信憑性を身を以て証明させられる。

「ああッあッあん、……ああ―ッ」

身体を起こして四つん這いにさせ、強く腰を掴み思い切り腰を打ち付けていく。

「……あっ、すげえ気持ちいい。すぐ出ちゃいそうだよ」

腰骨に痣が出来るのではないかという程懇親の力でピストン運動を繰り返す。
ギチギチに締め付てくる彼女の膣中で内壁の粘膜が俺のモノを際限無く包み込んでいった。
背後から何度も腰を叩き付け今度は跨って横から容赦なく突いていく、どの角度で攻めても気持ちが良かった、其れは俺がなまえさんに持ち合わせた感情がそうさせるのだろうか、思っていたより駆け足で限界が近付いてきた。

「ああ――ッ我妻さん、私!もう……ッ」

「……舌、出して?」

そう促すとなまえさんは素直に舌を差し出し、俺は出された舌をねっとりと絡ませ互いの荒い息遣いに酔いしれていった。

「……ッ」

「ああーッ」

激しい律動を止めなまえさんの身体に密着する。
溜まりに溜まった欲は収まる事を知らず何度も何度も精液を放出していった。
ズルリと萎えて通常の大きさに戻った自身を抜き行為の激しさで少し伸びた避妊具に手を掛ける、其の中身は大量の白い液で染まり俺から放出された体液の存在を生々しく知らしめた。

「……」

「……」

長い沈黙が続き気まずい時間が過ぎる中で、俺はなまえさんを見る事が出来なかった。
此れで彼女とも永遠に会う事もないだろうと、そう思うとやるせなくて泣きたくなった。
自分のした過ちに今更後悔してももう遅いのに、馬鹿じゃん。

「……我妻さん」

俯いて背中を丸めているとなまえさんは俺の背中に身を寄せてくる、何故そんな事をしてくるのか理解できず俺はただ沈黙を続けた。

「……何のつもり?彼氏がいるのに他の男にこんなことしちゃダメでしょ?」

「彼氏なんて居ません。……私は、私は我妻さんの反応を知りたかった。此れを見て私に対する気持ちを試したかったんです」

口を開かずに彼女の言葉を聴いているとどうやら俺の視線に気がついていたらしい。
あんなに熱い視線を送ってくれているのに終始素っ気ない俺に何かしらの意思表示をせねば先に進めないと。

「……本当は貴方が好きだと伝えるべきだとは分かってます。でも振られたらと思ったら怖くて……、卑怯な試し方をしてしまってごめんなさい」

「……なまえさんは俺の事、好きなの?」

「はい。ずっとずっと我妻さんが好きでした。私は我妻さんが働く前からこの店を利用してたけど、此処まで頻繁には来てなかったんです……」

「え……?」

「貴方に一目惚れしたんです」

こんな夜更けに来店するのは俺の顔が見たかったからだと、目一杯お洒落してメイクして、自分をよく見せたかったと瞳を潤ませながら告げられた言葉に俺はなまえさんを抱き締めずにはいられない。
俺は小さく"俺も好きだ"と呟いて彼女を引き寄せた。


「……そろそろ仕事に戻らなきゃだ。もうじき客が来始めちゃう」

「あ、はい」

本当はそんなのほったらかしで君を抱き続けたいけど、其れをしたら本当に最低な男になってしまうから素早く後始末終えて着衣を整える。
なまえさんも服を着て二人一緒によそよそしく更衣室を出る。
ただ行為前と変わった事は手を繋いで温かく柔らかな感触に、互いに照れ臭く笑い合いながらレジへと向かった事。

「ねえ?なまえさん」

「はい、何ですか?」

開封してしまった商品は俺が先に自分の金で会計を済まし其れ以外の商品を打ちながらなまえさんに声を掛ける。
始まりの順序を間違えた俺達は何だか恥ずかしくて目と目を合わせる事が出来ない。

「今日は土曜日だしさ。この後何もなければ俺ん家に来ない?いっぱい話をしたいんだ」

「私も我妻さんと沢山話がしたいです。我妻さんの事を色々知りたい」

「じゃあもうすぐ終わるから待ってて!……えっと、合計10点で2685円になります」

「あっ、待って下さい。あと一つ欲しいものがあるんですけど」


"どうぞ"とにこやかに声を掛けなまえさんの欲しい商品を持ってくるのを待つも、彼女は一向に商品売場へと脚を運ばない。
何故行かないのだろうと疑問に思っていると彼女は微笑みながら俺に顔を近付けてきた。
そしてゆっくりと彼女の唇が俺の耳に移動してすぐに囁かれた言葉に思わず笑ってしまった。

いらっしゃいませ、お客様、今日は何をお求めでしょうか?


「貴方が、欲しいです」

その商品は一点物に付き譲渡をお断りしていたのですが、君に限り永久無料で差し上げます。
尚、返品は如何なる理由があってもお受け致しておりませんので、ご了承下さいませ。

END
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