どうやらサボは前にもダダンさんの元へ顔を出していたらしい。
けれどエースはこの島を出て行ったきりだったから、散々みんなに文句を言われていた。

「心配ばっかりかけやがって」と言うダダンさんの目は少しうるんでいた気がする。


その後はマキノさんの酒場にみんなで向かい、朝になるまで飲み明かした。私は昨夜と同じようにカウンターの席でその光景をただぼんやり眺めた。

最近はエースと2人きりの生活が続いていたから、こんなに大勢の人がどんちゃん騒ぎしている空間は革命軍でいた頃に似ていて懐かしい。
なんだか私も革命軍に帰りたくなってしまった。



数日間滞在し、私たちはアンロレンス村へと無事に戻った。また必ず来ますと私がみんなに言えば、エースは「めんどくせぇな」と文句を垂れて周りの人たちから怒られていた。

「エースがみんなから愛されてるのがよく分かった」
「フン」
「照れてるの?」
「照れてねェよ」
「可愛い」
「うるせぇ」

エースが唇を尖らせてそっぽを向く。

アンロレンス村に戻って来てもサボはまだしばらくは一緒にいる予定だ。もう少し賑やかな日々は続きそうだが、もう何日もセックスをしていない。
そろそろエースが我慢できなくなるかもしれない。

「ねぇエース」
「ん?」
「エッチする?」
「……サボ隣の部屋だけど」
「声我慢するから、ね?」
「…なら、」

する、と言ってエースがはにかみ、久しぶりに濃厚なキスをした。散々いじめられて声を抑えるのがとてもつらかったけど、やっぱりエースと繋がるのが好き。
久しぶりの旅で疲れてしまっていたけどセックスを終えて眠りについたのは3時だった。


朝、目を覚ましたのは7時半。
いつもと比べればかなりの寝坊だ。
昨日は遅い時間に帰ったせいで挨拶が出来なかったから、ベッキーさんにお土産を渡すついでに畑の面倒を見てもらったお礼を言いに行かなければいけない。

相変わらず両手を広げて気持ちよさそうに眠るエースはとりあえず置いておいて、先に起きてパンを焼いていたサボと朝食を済ませた。

「ナマエ、今日胸元開いてる服はやめておいた方がいいぞ」
「え?」
「ここ、見てみろよ」

食器を2人で片付けていると、サボが私の鎖骨下を指でトントンとつついた。鏡で見れば見事にキスマークがついている。
あれほど見える位置には付けるなといつも言っているのに。

「もうっ!エース…!!」
「昨日はおれが寝た後、楽しんでたみたいだな」
「や、やめてよサボ!」

カァと顔が熱くなる。
これでは声を必死に我慢した意味がない。結局サボにバレてしまった。

食器の片付けが終わり2人で新聞を読みながらコーヒーを飲んで少しの休憩。これを飲み終えたら動き出そう。


「ナマエをエースの故郷に連れて行けて良かったよ」
「私もずっと行きたいと思ってたから嬉しかった。ありがとう」
「エースを昔から知る奴らはナマエを見て安心したと思う。危なっかしくて意外と心が不安定なエースが、ちゃんと好きな人見つけて結婚したんだからな。ナマエは落ち着いてるし可愛いから、みんな喜んでたよ」
「結婚…まぁ、そうだよね」

私とエースは同じ苗字にしていないし誓いの指輪なんかもない。結婚式もしなかった。
ただ自然に一緒になることを2人とも望んだからだ。
だから結婚とか夫とか妻とか言われると、なんだか少し違うような気がする。だからあえて家族という言葉を使っているのだ。

「ナマエは指輪とか結婚式に憧れねェの?」

知らず知らずのうちに左手の薬指を撫でてしまったせいで、目ざとくサボに指摘された。

「んー、興味はないかな。でも、お揃いの指輪とかしてたら、なんかいいかもね。私たちは家族になれたんだって証みたいで」
「ふぅん。まあ、たしかにな」

昔エースが私を想ってプレゼントしてくれたネックレスは最近付けずに寝室に飾っている。
畑での作業なども多くて、どこかに引っ掛けて無くしてしまうのが怖いからだ。でも指輪なら無くさないだろうか?農作業中は手袋をするし。

「指輪、ちょっと欲しいかも」
「おれに言わずにエースに言えよ」
「そうだねえ…」

ぎしり、と階段を降りる音が聞こえてサボと2人同時にそちらへ目を向ける。寝癖でぐちゃぐちゃの髪のエースが目を擦りながら現れた。

「なんで起こしてくれなかったんだよ」

未だ寝ぼけたエースが後ろから抱きついてくる。
サボの前でやめて…!恥ずかしい!

「気持ちよさそうに寝てたんだもん。それに無理に起こしてご飯食べてる時にいきなり寝られたら困るし」
「…朝メシなに?」
「トーストとベーコンエッグ。あとサラダ」
「食う」

珍しく甘えてくるエース。
嬉しいけど、目の前でおもしろそうにニッコリしてこちらを眺めているサボがむかつく。

「やっぱり、エースにはナマエだな」

なんて言って、うんうん頷きサボは笑いながらコーヒーを啜った。







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