「ほらナマエ、お土産だ」
「わぁ、素敵…!」

いつも通り帰ってきたばかりのサボさんを玄関で出迎えると、手には長細い紙袋を持っていた。中身を確認してみると淡い桃色のお酒だった。

「もうすぐおれたち結婚して1年だろ?記念にな。たまたま見つけたんだけどナマエが好きそうだと思ってさ」
「あっ…!ありがとうございます!」

私たちが結婚してからあと1週間ほどで1年になる。ついに記念日を迎えることができた。
まだサボさんには内緒だが、結婚記念日にはご馳走を作る予定だ。そのためにエースさんにサボさんの好きそうなメニューを教えてもらえるように手配している。


お酒は結婚記念日のために保管しておこう。
大事に抱えていつもの棚に仕舞おうとすると、優しく腕を掴まれた。そして簡単にサボさんの腕の中に収まってしまう。
彼の匂いに包まれてきゅんとした。

「サボさん?」
「今夜、いいか?」
「!、はい。大丈夫です」

初めてはとっても痛かったけれど、2回目からのセックスは痛みもなくちゃんと気持ちよかった。だから定期的にするようになったけれど、他の家庭は一体どのくらいの頻度で行うのかちょっと気になる。
私たちは週に3回くらい…それって多いのかな……。

だから生理の週は申し訳なくなる。
サボさんしたかったかな?とか考えてしまう。けれどそういう日はいつも以上にサボさんは優しくて、私をとっても労わってくれるのだ。
お腹が痛いのを隠していても何故か気づかれて、あたたかい飲み物を用意してくれる。可愛いぬいぐるみの湯たんぽも買ってきてくれた。


そんなサボさんのために、私は少しでも気持ちよくなって欲しくて最近セックスの時は頑張っている。とっても恥ずかしくて誰にも相談できないけれど。
女の人がペニスを舐めたり咥えたりするのが男の人にとってはとても嬉しい?事なんだと高校生の時に周りの女の子たちから教えてもらった。

勇気を振り絞ってサボさんにしようとしたら「してくれるのか!?」と目をキラキラさせていたから、たぶん間違ってないはず。それに「もっとこうしてくれ」とか「それが気持ちいい」とサボさんも教えてくれる。
だから一生懸命舌と手を動かすと、射精したあとサボさんがすごく嬉しそうな顔をするから私も嬉しくなってしまう。

私にとってサボさんとエッチなことをする夜は本当に特別だ。幸せでいっぱいで、心が満たされる。

たまにどうしても触れたくなった時、そっと身を寄せるとサボさんはしっかり抱き締めてくれる。これ以上ない幸せな日々に少しだけ怖くなってしまうのだ。
どうかこのまま平和な毎日が過ごせますようにと祈らずにはいられない。




「ナマエ、痛いところないか?」
「どこも痛くないです。大丈夫です」
「喉乾いただろ?今から水持ってくるから待ってろ」
「ありがとうございます」

サボさんがささっとパジャマを着て部屋を出ていった。
私は裸のままぐったりとベッドに横になる。時計を見ると23時だった。今日はいつもより早めに終わったみたいだ。
サボさん疲れてるみたいだったし…
男の人は疲れていてもセックスは出来るものだとエースさんが酔って私に教えてくれて、隣にいたサボさんに殴られていた。つい先日のことだ。

水を持ってくるの、私が行けば良かったなぁと思っている間にもサボさんがミネラルウォーターのペットボトルを2本持って現れた。
心なしかスッキリしたような顔をしている。

ベッドのスプリングが軋む。
私をそっと抱えて起こしてくれた。既に開けられたペットボトルを溢さないように受け取って一気にあおる。
声を出しすぎて少し喉がヒリヒリする。

「いい飲みっぷりだな」
「明日、喉が枯れていそうです…」
「たしかに今日はたくさん鳴いてたもんな」
「っ、だって…………」

今日のサボさんはなんだか意地悪だったんだもん。
気持ち良すぎて少し止まって欲しいとお願いしたのに聞いてくれなかった。それどころか私の体の感じるところをたくさんいじられて、あまりの快感に涙を流してしまったくらいだ。

「サボさんはいつも通り平気そうで、ちょっとむかついちゃいます」
「あっはは、ナマエに嫌われたくねェな」
「嫌いになんてなりません!」
「でもたくさん意地悪しすぎると、本気でナマエが怒っちまいそうだから今度からは気をつける」
「…そうしてください」

サボさんが笑いながら愛おしそうに私を抱き締めてくれた。そのままベッドに倒れ込んでしまう。
慌ててペットボトルをサイドテーブルに置いて、ゆっくり力を抜いた。
ふわふわの布団とベッド。そしてサボさん。
このまま眠ってしまいそうなほど心地いい。

「サボさん、好きです」
「おれもナマエが大好きだよ」

おでことおでこをくっつけて笑い合う。
ふざけてお互いの鼻先をちょんちょんとつつき合ったり、少し角度を変えて触れるだけのキスをする。


「ナマエ」
「?」
「おれと結婚してくれてありがとう」

そんなの、こっちの台詞です。
言葉にしたいのに眠くてそれは出来なかった。ただ微笑んでサボさんの厚い胸板に頬を擦り寄せる。
もうすぐ結婚記念日。
私たちの大切な日だ。







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