5 先生の実家は書道教室A

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廊下の角から静かに、じっと先生を観察した。
こんな大きなお屋敷みたいな実家に生まれたとあって、仕草がとても綺麗だ。
育ちの良さが見てとれる。
休日には和服とか着てそうなレベル。


靴を揃えて、お土産だろうか、傍に置いていた紙袋を持ち上げてこちらに体を向けた。
そして私を見つけて先生が驚愕する。
おもしろい。


「…!!!」
「こんばんは〜」

小声で挨拶すると、先生は光の速さで私に駆け寄った。
また眉間に皺を寄せて。
睨まれても先生がかっこ良すぎるから全然怖くないんだな、残念だったね先生。

「なんで君がここにいるんだ」
「弟が書道教室に通ってるので、迎えにきました」
「待合室はあちらだろう。戻れ」
「はーい」

確かに今、先生の家族にこの現場を見られるのは危険だ。
さっきは何も考えなしにこちらまで来てしまった。
危ない危ない。


煉獄先生は私がちゃんと待合室に入るのか不安なんだろう。
静かに後をついて来た。
ちゃんと待合室の扉を開けて、中に入って椅子に座る。
それまで確認して先生は「よし」と言った感じに満足して、部屋の扉を閉めようとした。

「まあ、杏寿郎。おかえりなさい」
「!母上、ただいま戻りました」

なんと背後から瑠火先生が現れたのだ。
なんてタイミング!
怖い!やっぱり敵の陣地にいると何かとヒヤヒヤする!
敵じゃないけど。


「苗字さんとお話ししてたんですか?ごめんなさいね、邪魔して。苗字さん、弟さんの帰る準備ができました」
「あ、ありがとうございます。お茶とお菓子も、美味しかったです」

煉獄先生が微笑む瑠火先生の背後で私に睨みを効かせている。
余計なことは話すなということだろう。
そんな心配しなくてもいいのに。


荷物を抱えた弟がすぐに現れて仕方なく今日は帰ることにした。
もう少し何か起きないかと期待したが、そんなうまくいかないか。
会えるはずではなかった煉獄先生に会えただけ良しとしよう。

それに先生も母親がいるから仕方なく、と言った様子で見送りしてくれた。
笑顔で「気をつけて帰るんだぞ」と。
なんだその笑顔は、と笑いそうになった。
手を振れば振り返してくれた。
なんて優しい煉獄先生。

最近はちゃんと社会科準備室にサボって行ってなかったけど、そろそろまた訪問してみようかな。






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