1 先生との出会い@

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幼馴染の狛治と恋雪は小さい頃からお互いに運命を感じて、絶対に結婚するんだという固い意志を2人して持っている。
それを近くで見ていて、ずっと羨ましかった。
私にもそんな相手が現れないかな、なんて、ずっと夢を見ていた。



キメツ学園の中等部に入学してまず初めに体育館に集められた。
寒いし知らない人ばかりだし落ち着かない。
校長先生とか、よく分からない先生の話を聞き流して、次に教員紹介が始まった。
その中に運命を感じる人を見つけたのだ。

「新任の煉獄杏寿郎、教科は高等部の歴史だ!たまに中等部でも講師をする。俺はまだ先生1年目だから、至らぬところもあるだろう。…みんな、よろしく!」

煉獄杏寿郎…。


彼だけが光って見えた。ような気がする。
今となっては覚えていない。
それでも、私は煉獄杏寿郎を見た瞬間に何かを感じた。
ああ、この人が私の運命の人なんだ!
そう思った。
もうその日から私は煉獄先生を将来の伴侶だと勝手に決めつけて、いつか付き合うんだろうと本気で思って生きてきた。


煉獄先生は男女共に大人気で、いつも周りの生徒がキャーキャー騒いでいる。
中学1.2年生くらいまでは私もその集団に混じってキャーキャー言って、グラウンドで生徒に混じってサッカーをする煉獄先生をうっとり眺めていたりした。
周りの女子の中でも本気で恋している者は少なくない中、私は「みんな馬鹿だな。煉獄先生は私と結婚するんだよ」と内心嘲笑っていたものだ。

それでも中学3年生の春頃だろうか、このままではいけないことに気がついた。
だって私は「煉獄先生のファンの女子」の中の1人で、煉獄先生になんて「その中の女」くらいにしか思われていない。
最悪私のことなんて存在を知らないのではないかと考えた。

そこから私は変わった。
ちょうど高等部へ上がると同時に煉獄先生が好きだということは一切口にしない。
誰にも教えない。
例外に、幼馴染の狛治と恋雪には隠さない。

中等部で仲が良かった子や、同じ煉獄先生ファンの子たちはそんな私を見て「そろそろ飽きたんだな」程度にしか思っていなかった。
カモフラージュも兼ねてちょっと良さそうだなと思った男子と付き合ったりもした。


それでも周囲にバレないように細心の注意を払いながら、煉獄先生に認識してもらえるような取り組みを始めたのだ。

誰にも見られてはいけない。
誰にも悟られてはいけない。

そのためにまずは煉獄先生の1日のスケジュールやルーティーンを調べてノートにまとめた。
というか、先生の情報をまとめた「煉獄杏寿郎ノート」なるものを作成。
そこに得た情報を書き込んでゆく。

珍しい苗字故に先生の実家を特定するのも簡単だったし、退勤してから後を追ったり。
前から先生に彼女がいることはファンの女子の間では有名だったから気にしない。
むしろその彼女のSNSを特定して、いつ煉獄先生と会うのか、2人の間にいつ何があったのかを調べ尽くした。
意外と無防備な先生とその彼女のおかげで簡単に彼の情報ノートは埋まっていく。

馬鹿だなあ先生。
もっと馬鹿なのは彼女。
なんでもすぐにSNSに載せる。
写真も自分のことも、その日にあったことも。
結婚を考えていることは散々呟いていた。


だからゆっくりと先生と仲を深めるなんて計画ははなからない。
私が運命の相手なんだから。
そんな時間をかける必要なんてない。
そう思った。
私は直感で動くタイプと思われがちだが、実際は細かい計画の元に動くタイプなのだ。




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