その後のお話2

.

今日は午後から本社で中間決算の会議の後、宴会の予定だ。
いつもは動きやすいようにパンツスーツだったが、そんなに動き回ることもないし、と思ってスカートにした。


なのに、出社して早々にキメツ学園から大至急の納品を頼まれて行くことになってしまったのだ。
運良く会社の倉庫に在庫している分だったから助かった。
段ボール一箱分。
本社へは遅れて行くと上司に断り、急いでキメツ学園へ向かった。


納品場所を事務員さんに指示されれば、2階の倉庫へとお願いされた。
なら煉獄さんに会えるかも。
なんてうきうきしながら。

階段を登っている時だった。

「名前っ…いや、苗字さん!!!」
「へえ?」

とてつもなく大きな煉獄さんの声が後ろからして、慌てて振り返った。
すると瞬時に階段を登って私の背中にぺたりとくっつかれる。

「ど、どうしたんですか。ここ学校の階段ですけど」
「分かってる。分かってないのは君だ」
「え?」
「なんで今日、スカートなんだ」

耳元で小声で囁かれ、さりげなく尻を撫でられた。
こんなところを生徒に見られたら!と、慌てて階段を駆け上り、倉庫の前へと到着する。
その間も杏寿郎さんはむっとした顔のまま追いかけてきた。

「別にスカートでも良くないですか?だって女子生徒はみんなスカートじゃないですか」

そう言って倉庫へ入ると杏寿郎さんも当たり前のようについて来る。
そして私の抱える段ボールの中身を確認し、今日は手伝うほどでもないと判断したのか腕を組んで私の作業をぐちぐち言いながら見守っている。

「良いか?女子生徒100人と君1人が階段を登っていたとして、男子生徒はどこに視線が行くと思う?君だ」
「ええ…?まあ、そうかもしれないですね」
「だろう?しかも君はそんないやらしいタイツを履いている」
「いやらしいって…」

確かに今日は少しだけ肌寒いから、と思って25デニールのタイツを選んだ。真っ暗なタイツよりはいやらしいかもしれないけれど。


「とにかく、もう学校にスカートで来るな」
「はい。分かりました。そして作業終わったので帰りますね」

未だにむすっとしている煉獄さんの胸を押して出入り口へ向かう。
これなら会議にも間に合いそうだ。


「…名前」
「はい?」
「今日は22時に帰るんだったか」
「そうですよ」
「家で待ってる」
「え?あ、わかりました。私ご飯食べて来るので、煉獄さん適当に済ませてくださいね」
「分かった」

家で待ってる、というのは私のアパートに先に行っているということだ。
合鍵を渡したら週末だけでなく、平日でも頻繁に来るようになった。

付き合って数ヶ月して、合鍵を渡そうとしたら断られたのは良い思い出だ。
「そんな簡単に異性を信じるな」とまさかのお叱りを受けたのだ。
「たとえ俺であっても、まだ合鍵は早いだろう」なんて、童貞かよ!と内心つっこんでしまったけど。
そして最近やっと合鍵を受け取ってもらえた。


煉獄さんが待ってくれるなら今日は早めに帰らないと。
宴会とは言っても、日帰り組は飲まずに先に帰ることが許されるのだ。

煉獄さんがこの時に何を考えているかも知らずに、私は意気揚々と本社へと向かった。



prev / back / next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -