俺はダサくない。

※現パロ(キメツ学園)



名前と付き合いだして分かったことがある。

「義勇!ねえ見てこれ。義勇に似合うと思って買ってきたんだけど、可愛いでしょう?!」

名前は貢がれるより貢ぐ派だった。



「なんだよオメェ、随分洒落たセーターだナァ」
「たしかに派手にセンスがいいな。彼女が見立てたんだろどうせ」

同僚の不死川と宇髄が朝から俺に寄ってたかる。
いつもジャージの俺を「ダサい」と言って名前が買って来てくれた。
だから今日はそのセーターを着て出勤した。

「早く彼女見せろよな冨岡〜」
「何故」
「気になんだろうがよ〜。道で体調悪くてうずくまってた女を介抱して、それがきっかけで付き合うことになったとかよお。どこのドラマだっつーの」

宇髄の発言に隣でコーヒーを飲みながら不死川もうんうんと頷く。

たしかに名前との出会いはまるで物語の始まりのようだった。
だから最初、みんなに報告した時は信じてもらえなかった。
胡蝶(姉)は「病院に行ったほうがいいんじゃないの?」なんて言い出す始末だった。

名前と付き合い始めて1年以上になるが、どうしても周りには見せたくない。
俺には勿体ないくらいの彼女を見せてしまえば、いつか誰かに取られてしまうんじゃないかと不安だ。

足元へ視線を落とせば、履いている靴も名前がプレゼントしてくれたものだ。
俺にはあまりよく分からないが割といいとこの靴なんだと煉獄に教えてもらった。


「冨岡先生、今日めちゃくちゃかっこ良くない?」「ね!セーターちょう似合う!」「わかる」「あれは彼女じゃない?」「だよね?」「あのワンポイント、絶対女が選んだよ」「冨岡先生があんなこだわったの買わないって」

女子生徒たちの声が丸聞こえだ。
やはりみんな分かるのか。
しかし、すごい。
名前はセンスが良い。
有名な雑誌編集部で働いているだけあって。
なぜか自分が得意げな気分になる。


「おまえ彼女にお返ししてんのかヨォ」
「…お礼に食事に行ったり、スタバのカードを贈ったりしてる」
「イヤ、それ、消えるもんばっかだな」

不死川は何かと気にかけてくれる良い奴だ。
もうすぐ名前の誕生日なんだとぽろっと呟いたのをしっかり聞いていたらしい。
俺も実は誰かに助けてもらいたくて口に出してみたのだ。

「俺はセンスが良くないから、名前に服だとかアクセサリーをあげたところでダサいと言われて終わる気がする」
「あぁ…なるほどナァ」

ダサいと言わないにしても、名前の好みでもない物をあげたところで。
かと言って彼女の好みなんてずっと一緒にいてもイマイチ分からないのだ。
以前に「可愛い犬のぬいぐるみが欲しい」と言っていたからサプライズでプレゼントした時「なにこの生き物!犬!?気持ち悪い!逆にどこに売ってるの!?」と、散々だった。
一応名前の家のリビングに置かれている。


「とりあえずプレゼントしてみろよ。案外喜ぶと思うけどな」
「そうなのか」
「好きな奴から貰ったらなんだって嬉しいだろ」
「なるほど」

だからきっとあのぬいぐるみも捨てられず、大事そうに飾ってあるのかもしれない。




誕生日当日。
なんとか間に合った名前への誕生日プレゼント。

自分はブランドなんて全く分からないから、とりあえずネットで散々検索をして選んだ。
同僚たちには見せていない。
名前に最初に見て欲しいと思った。


「名前、誕生日おめでとう」
「え、なにこれ?いつもと違うじゃん」
「…」

小さな紙袋に入った箱を名前はにやにやしながら取り出した。
彼女の爪は昨日から友達にジェルネイルをしてもらったとか言って、不思議な色に染まっている。
綺麗だ。


「…腕時計?」
「ああ」
「……可愛い」

名前が前に好きだと言っていたピンクゴールド、そしてベルトの色は俺の好みの色を選んだ。
青の強い紺色だ。

「ダサくないだろう」
「全然ダサくないよ。すごく可愛い。それにこの時計、なんか義勇っぽいね」
「俺っぽいとは」
「ベルトの色だよ」
「俺の好みの色を選んだ」
「やっぱり?」

名前は恥ずかしそうに顔を赤くしてはにかんで、愛おしそうに腕時計を胸に抱いた。




「冨岡、結局彼女になに贈ったんだヨォ」
「腕時計だ」

不死川は翌日早速俺のデスクに現れた。
見せてみろと言うから、ネットで検索していた時にスクショした画像を見せようとした。

「どーせダサい腕時計だろ」
「…ダサくない」
「俺も見たい!」

いつの間にか宇髄と、朝からパンを貪る煉獄も現れる。

「これだ」
「「「おお…」」」

「おまえらしいやつだな」
「そうだろう」
「いいじゃネェか」
「そうだろう」
「うむ、センスがいいな冨岡!」
「そうだろう」

同僚たちはみんなつまんなそうに各自のデスクへ戻って行った。

そうだ。
俺はダサくない。
今度からは自信を持って名前に貢ごう。
またきっと名前は俺に何かと買ってくるだろうから、俺も対抗してやろう。

今日も俺は名前が買ってきたワイシャツを着ている。




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