__自習時間編

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普段学校での先生は、女子生徒に名前を呼ばれると「なんだ!」「どうした!」と大きなハツラツとした声でこたえる。
そんな様子をいつもはただ見ているだけ。

たまに本当に用事があって私も声をかけるけれど、慎重に。
普通の女子生徒のように。
そうすると先生も「どうした!」と、普通の女子生徒に返すのと同じような返事をする。
めちゃくちゃ元気な先生と話すと、なんだか不思議な気分になる。
内心爆笑しているが顔には出さないように努めている。


そんなある日。
数学の時間が不死川先生の不在により急遽自習になった。
なんでも弟のインフルエンザが移ったらしい。
それでも不在日数分、山ほどの課題を用意していった。
おかげで不死川先生不在でも数学の時間は地獄のような問題集プリントを黙々と進めるしかない。
その自習時間中、煉獄先生が代わりに監督をしに来た。

みんなが問題集に苦戦する中、先生は教壇横の椅子に座ってのんびり時代小説を読んでいる。
そういえばこの前ネットで買ってたやつだ。
家でも私が料理をしてる最中など、暇な時に読んでいたような気がする。


数学は得意だった。
プリントは10枚で1束。それが5束用意されているらしい。
早速1束目が終わって(私が一番最初に終わった)次の束を煉獄先生から貰うために静かに席を立った。
先生は読書に夢中で私に気がつかない。

「せんせい」

そうやっていつも通りに名前を呼んだ。
すると、

「ん?」

気の抜けた、どこか甘い、いつもより低い声。
…あろうことか自宅モード全開だ!
先生も瞬時に気が付いたらしく、しまった、と顔を歪めた。
そして「どうした?」と改まって聞いてきたがもう遅い。
背後の生徒たちがざわめき出す。


「え、先生ってプライベートだとそういうテンションなの〜?」「苗字、彼女と間違えられたんじゃね?」と、クラスの上層部の奴らが囃し立てる。


私の顔は先生にしか見えない。
ついニヤニヤと笑ってしまった。
口パクで「ウケる」と言うと、ギロっと睨まれた。

「ははは!すまん苗字。つい弟と間違えた!」
「あはは。煉獄先生でもそんなことあるんですね」

何が「煉獄先生でもそんなことあるんですね〜」だ、と内心つっこむ。

背後から「ああ弟」とか「ええ嘘〜」とか聞こえるけれど先生は勤めて平然と「みんな騒がしいぞ!あと30分だから頑張れ!」とみんなを元気付け、にこやか。

「先生、次のプリントください」
「ああ。苗字早いな!」
「得意なんです数学」
「そうか!なら課題もさぞ簡単に終わってしまうんだろうな。素晴らしい!」

いつもだらけて課題手伝ってもらってる嫌味かな。
うわ、めちゃくちゃ目で何か訴えられてる。
怖い。




週末。
先生のベッドにダイブすると、後から遅れて部屋に入ってきた先生が無言で買ってきたコンドームの箱を投げてきた。
見事に私のお腹に命中する。

「いたっ。暴力だ」
「黙れ。今週は散々だった」
「数学の時間の話?先生、自習の監督いつもやってたね。暇なの?」
「ちょうどおまえのクラスが数学の時に俺の授業が入ってないからだ」
「へえー」

あれから先生は主に女子生徒に散々揶揄われた。
「先生いつも声大きいのにあんな声出せるんだねー」とか「あの感じの方がモテるからいつもあのキャラでいなよ」とか。

「私のせいじゃなくない?」
「そうだな。でもおまえが責任とれ」
「理不尽すぎるよう」

今夜は寝かせてもらえないのかも。
なんて思いながらも、さっさと制服を脱ぎ捨てて先生を迎え入れた。




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