13話「自分のモノ」

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ひとまず冨岡は名前を自分の屋敷の居間に入れた。
鴉に名前を託す。

「様子を見てくるからここにいろ」
「………わかりました」
「大丈夫だ。おまえに何かあったら鴉が俺のところへ知らせに来る。すぐ戻ってくるからここにいてくれ」


部屋の片隅で縮こまる名前の肩にそっと触れる。

「しばらく俺の家に居てもいい」
「!」
「いってくる」

冨岡の発言に名前は顔が赤くなる。
それに気付かず冨岡は彼女の家に向かった。


名前の家は真っ暗だった。
だが中からは人の気配がする。
そして戸に手をやって気がつく。錠が無理矢理外されていた。

わざと大きい音で戸を開くと中にはやはりあの男がいた。
冨岡の姿を確認すると目を大きく見開き驚いている。

それでもまた酔っているのか、突然冨岡の胸ぐらに掴みかかってきた。
「おまえ、誰だよ。勝手に入ってきやがって。名前ちゃんの家だけどここ」
「貴様こそ。勝手に入ったのはそっちだろう」
「俺は名前ちゃんの恋人だから良いんだよ」

「名前は俺の女だ」

冨岡は自分の口から自然に出た言葉に内心驚いた。
自分は何を言っているんだ。
目の前にいる男と同じではないか。

それでも外見はポーカーフェイスの冨岡である。
男は焦った様子で掴んでいた冨岡の襟から手を離した。

「出て行け。名前に近づくな」
「っ」

冨岡はギラリと睨みつける。
一般人ではない、鬼狩りである。しかも柱。
そんな冨岡の殺気に男は逃げるように家を出て行った。


名前の家の錠は明日直すしかない。
こんな夜に修理屋が来れるはずもない。

先程は先のことなど考えずに発言していたが、自分が言った「しばらく俺の家にいてもいい」。
いざ自分の屋敷に戻ろうとすると少し身構えてしまう。

女性と1つ屋根の下。
2人きり。

変に意識してしまう。
しかも名前を「俺の女だ」と言ってしまった。
あれは本当に自然と出てしまったのだ。
仕方がない。
あの時はそう言うしかなかった。

冨岡は自分に言い聞かせ、名前のいる部屋の戸をそっと開けた。

「冨岡さん!」
「あの男は帰っ、」

冨岡が話し終わらぬうちに名前が勢いよく抱きついてきた。
突然のことに体が硬直する。


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