-24 いつか行きたい彼の家

.


お互いの最寄駅に降り立つ。
見慣れた光景に自然と安心した。


帰りのことを考えてなかった。
さも当たり前のように煉獄さんがアパートまで送ると申し出てきて、何度断っても無駄なことは私も分かっている。

いつも煉獄さんにはお世話になってばかりで、申し訳ない。
居酒屋では全額支払おうとしてくれた彼を必死に説得して割り勘にしてもらった。
これからも一緒に飲むことがあるだろうから、今後はもう割り勘で飲もうと決めた。


「じゃあ、また…火曜日ですね」
「そうだな。また連絡する」
「はい」

「おやすみなさい」と言い合って、ゆっくりと部屋の扉を閉めた。


お互いの家は正反対。
それを少し残念に思う。




煉獄さんと飲んだあとの初めての納品日。
なぜか無性にドキドキした。
今日も会えるのかはわからない。


いつも通り階段の横まで荷物を台車で運び、そこからは一箱ずつ持って二階へ向かう。
たぶん学生は冬休みが近いはずだ。
何日から冬休みが始まるのか、もう忘れてしまった。


クリスマス。
横を通り過ぎた綺麗な女の先生がそう口にした。
隣にいるのは不死川先生。

「ねえ、だからクリスマスプレゼント選び、手伝ってくれないかしら」
「あァ、別にいーけどよォ」


あんなに強面なのに!
あんなに綺麗な女の人から誘われてる!!
衝撃!

なんて失礼なことを思ってしまった。
2人は3階へ向かって行ってしまって、もう会話は聞こえない。
残念、ちょっと気になったのに。



「苗字さん!」
「っ!」

目の前から現れたのは小さな煉獄さん。
弟の千寿郎くんだった。

移動教室の途中らしく、教科書やノートなんかを両手に抱えていた。
友達たちの群れから離れて私に近寄ってきた。

「先日は兄とお食事に行かれたんですよね?」
「あ、うん。はい」

にっこり笑う千寿郎くん。
笑った時に細くなる目がお兄さんと同じだ。


「帰ってきた兄が本当に、ずーーっと機嫌が良くて。お話を聞いたら苗字さんと過ごした時間がとても楽しかったと言ってました」
「……そ、そう、なんだ…」
「今度はうちにいらしてくださいね。俺も苗字さんとたくさんお話してみたいです」
「あ、は、はい…」


爆弾発言をして、千寿郎くんは友達の元へ駆けて行ってしまった。
私はその場から思わず動けなくなる。

あの兄弟は私の心臓を早めることが好きなんだろうか?


prev / back / next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -