9. May be a mistake

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肩が冷たい。
とても寒くて目が覚めた。

自分が裸のまま寝ていたことに気がついて、通りで寒い訳だと合点がいった。
同じ布団で眠る義勇もまた、同じように裸だった。

傷だらけの体。
昨日の夜は気づかなかった。
暗かったし、それに私は義勇の下でただ快感に溺れていた。



まさか、義勇に抱かれるなんて。
そしてその行為がとても良かった。
私はなんて破廉恥な女なんだろう、と今更恥ずかしくなる。

それでも寒さに負けて、こちらに背を向けたまま寝ている義勇にそっと近づいた。
恐る恐る後ろから抱きしめる。

あたたかい。


「……名前」
「あ、義勇、起きたの…?」
「…」

いつも一緒に朝を迎えるのと同じように、彼は顔を顰めて目を擦る。
そして後ろの方に首を曲げて私の存在を確認すると、ハッと目を見開いた。


「す、すまない…」
「…」
「名前…、本当に、」
「大丈夫だよ義勇。全然、私、いいの…、
義勇になら、何をされてかまわないよ」
「名前……」
「来て」

飛び起きて布団から出ようとする義勇の腕にそっと巻きつく。
ビクンとして義勇は大人しくなった。


そっと、ゆっくり。
怯えている野良猫を優しく慣らすように義勇を抱きしめた。

お互いの体温で、触れている部分があたたかくなる。
義勇の心臓がドクドクとうるさくなっていることに気づいて「可愛い」なんて思ってしまった。


「こうすると落ち着く?」
「………ああ」
「私も、落ち着くの」
「…」

ゆっくりと義勇の腕も私の背中に回った。
そのまま優しく抱きしめられる。

ぶわっと胸の奥で何かが弾けたような感覚。
これを「幸せ」と呼ぶのだろうか?

義勇も同じことを感じていて欲しい。


「助けてくれてありがとう」
「…もう夜は出歩くなよ」
「うん。絶対に。だから安心してね」
「…」
「義勇」
「…なんだ」
「なんでもない……」


ああ、この気持ちは「好き」なんだ。
私は義勇が好き。
こうして、あなたと抱きしめあうことがどれだけ私に幸福を与えてくれるか。
私も義勇に返したい。


そっとお互いに体を離し、どちらともなく布団へ戻る。
寝たまま義勇に抱きつくと、少し困惑した様子だった。
それでも不慣れそうに私の頭を撫でてくれた。


私たちは付き合ってるわけではないし、もちろん婚約者や許嫁なんてこともない。
でも今だけは、ずっとこうしていたいと思った。




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