-00 はじまり
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私が新卒で入社した藤乃花商事は事務用品を扱う会社だ。
県内で支店が2つあり、この度新しい支店が新設されるとのことだった。
タイミングも良いからと、私はその新設された支店の営業として採用された。
昔から人助けをすることが好きだった。
困ってる人を見ると放って置けないタチの人間である。
だから営業という仕事に挑戦した。
周りはもちろん男ばかり。
支店には私を含めて営業は4人。
女は私だけ。
思い描いていたよりもやっぱり営業はキツかった。
新設ということもあって新規顧客の獲得に忙しい毎日。
最初は新卒入社だから、先輩に同行させてもらっていた。
でももう私も入社4年目。
去年から完全に独り立ちして飛び込みをしたりしている。
正直タイミングさえあれば辞めてしまいたいと思うこともある。
でも、お客さんの喜ぶ反応を見る度に「まだ辞めたくない」と思う。
そんな日々が続く中、担当地区が自分のアパートのある地区にも広がった。
自宅近くにとんでもなく大きな学校がある。
中高一貫のキメツ学園。
まだ未開拓の学校だ。
もしこんな大きな学校からお仕事をもらえれば、とんでもない利益になるだろう。
迷いなく私は訪問した。
1回目は挨拶のみ。
2回目で事務長のおじさんと座ってお話しした。
そして3回目。
2回目同様に事務長さんと座ってお話をしている時だった。
「じゃあ試しに何か、見積もりをしてもらおうかな」
「あ、ありがとうございます!喜んで!」
「うーん、今不足しているのは何かあったかな」
そんな会話をしている時、ガチャっと事務室のドアが勢いよく開いた。
「失礼します!!!!」
その空間にそぐわないとんでもない大きな声。
思わず入ってきた人を見た。
生徒ではなく先生だった。
綺麗でふわふわの髪に見惚れた。
「事務長!教員室にストック分で置いておいたゴミ袋がなくなってしまった。貰えないだろうか?」
「ああ。煉獄先生、そういえばゴミ袋がもうこっちも無くなるんだよ。ほら、これが最後の一箱だ」
そう言って事務長さんは煉獄先生、と呼ばれた人にゴミ袋の入った箱を渡す。
「そうだ、苗字さん。これ見積もりちょうだい」
「!はい!」