戦国BASARA | ナノ

※秀吉二男秀頼設定主 舞台は大阪冬の陣


「この三成が、必ずやお守りいたします」

僕の前で誓うように頭を下げる男は僕の父の左腕と謳われた男。
従五位下治部少輔石田三成。
僕の父を殺した徳川への復讐のために今は生きていると言ってもいい。
徳川が関ヶ原に陣を布いていると聞いたときは真っすぐあの男を殺しに行こうとしていたが、それは刑部によって抑えられた。
僕をこの大坂城に一人残すことは危険だ、と刑部は言ったらしいが、今更名ばかりの関白である僕を狙う奴などいないだろう。
いるとしても徳川くらいなのだから、治部が徳川を殺せばいいだけの話だろうに。
刑部め、僕を使って治部を止めるとは。

「治部」
「は」
「僕のことはいい。お前の目的を果たしに行け。あの男を殺してやりたいのだろう」
「…しかし、秀吉様の御子息であるなまえ様をお守りすることもこの三成の役目。貴方様をお一人にするわけにはいきませぬ」

ああ、この男は本当に頭が固い。
その上、損な性格をしている。
僕はお前が崇拝する秀吉ではない。
運悪く豊臣秀吉の跡取りとして生まれてしまった、ただの弱き子どもなのだ。
お前は秀吉だけを信じていれば良い。
僕のことなど気にするな、よりによって、僕などのために死のうとするな。

「徳川がこの城に攻めてくるそうではないか。どうせ僕は殺される。だからお前は存分に徳川を甚振ってやれ。殺せばいい。お前の命は豊臣秀吉のために使うべ、」

「敵襲ーッ! 徳川軍が城攻めを始めている! 各自守りにつけ!!」

「…」
「…なまえ様、この御部屋よりお出にならないでください。私はこの城と貴方様をお守りいたします」
「…そうか。なれば、治部、徳川を殺してこい。お前の望みを叶えやれ」
「…御意に」

僕に一礼し治部が出て行った。
外が騒がしい。

* * *

騒々しさはそのまま数刻続いた。
やがて僕の周りから音が切り離される。
死神が近寄ってきているらしい。
治部が守っているはずの方向の戸が開き、死神が姿を晒す。

「…久しいな、徳川」
「…なまえ殿」
「僕の首を獲りに来たか。よい、くれてやる。しかし僕が死ぬべき場所はここではないな。治部のもとへ連れて行け」
「……三成、は」
「………貴様が殺したのであろ。ふん、やはり狸だったな、貴様は。やれ絆、やれ仲間だと言っておきながら、いとも簡単にかつての友を殺しやった」
「…………」
「極楽浄土にはいけぬな、自業自得よ、徳川家康。まあ、いい。僕を治部のもとへ連れて行け。僕は、死ぬのならあの男の傍がいい」
「…なまえ殿、それ、は………」
「…」
「……ッ」

徳川が苦痛の面持ちで僕を案内するように部屋から出て行く。
懐刀があることを確認して、徳川の背についていく。
着いた先には、血に濡れながらも美しいあの男。

「…残念だったな、治部。結局お前は僕を守れなかった。だが安心しろ。僕がお前と死んでやる。なあ、三成」

初めて音にしたこの男の名に笑みを浮かべ、腹に刀を突き立てる。
愛する男が己を守って死んだ。
これ以上の幸せを、僕は知らない。

浅き夢見し


お前の生涯は父のためにあったのだろうが、死は僕のためにあった。
僕はそれだけで幸せなのだ、だから、泣くな、三成。


×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -