モヤモヤしたまま毎日がすぎていく。そんな中、爆弾が落とされた。それはもう、はかいこうせんでも受けたみたいな。

「ああ、そういえばななしに会ったよ」
「…え?」
「大丈夫、元気そうにしていたよ」

ミクリのその言葉に頭が真っ白になった。そ、そういえば?そういえばって言うレベルじゃないだろ?僕、すごく心配してたのに!どうしてすぐに教えてくれないんだよ!なにが大丈夫なのさ?僕はぜんっぜん大丈夫じゃない!
混乱する思考の波をくぐりながらけろっとしたミクリを見つめる。いつ?どこで?…ななしと?僕は、会ってないよ。
いろいろな気持ちがごちゃまぜになって、次の言葉が出てこない。ティーカップに伸ばしていた手が驚きで目的地を見失い、さまよっている。完全に動揺している。

「い、…つ?どこで?っどうして、…え?」
「2日ほど前だったかな。草むらでジュカインを育てていたよ」
「なんですぐに教えてくれないんだよ!」
「事件に巻き込まれていたというわけでもないし、元気ならいいかと」
「よくないよ!ぼ、僕がすごく心配してたの知ってるだろ!」

ミクリは呆れた顔で僕を見て、また同じことを言う。「自分は平気で連絡を怠けるくせに」それを言われると、僕は何も言い返せなくなる。

「それは…悪いと思っているよ。でも今は、」
「ななしの話だと、ポケナビを水たまりに落としてしまったそうだよ」
「…な、んだ。ポケナビ、壊れてたのか」

そうか、僕のことが嫌になったわけじゃなかったんだ。
連絡がとれなくなる直前のことはミクリには話していない。なんとなく後ろめたくて。
何か事件に巻き込まれていたり連絡を取れない状況なのかもしれないという気持ちと、もしかしたら、僕が嫌になってしまったのかもしれないと、同じくらい思っていた。温和なななしから一方的に通話を切られるなんて。

「ポケナビが壊れてるんじゃ連絡できないだろうし、こればっかりは仕方ないさ」
「とにかく、よかった」

びっくりするくらいほっとした。
心からそう思った。口に出したら体から力が抜けて、ソファに沈み込む。全身を血液が巡っていくのを感じて、思っていたよりも力が入っていたことに気付く。

「なんか変な気持ちだ。ミクリのこと、ずるいと思う」
「君は拗ねているんだよ」

ふふ、優雅に笑う彼を尻目にため息をついた。拗ねてるだなんて。そうじゃないと言いきれなくて、決まりが悪い。

「ぼく、ななしと会いたいな」
「そのうち会えるさ」

そうだといいな。


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