旅の途中、ミクリという少年と仲良くなった。
彼は僕が持っていないようなものを持っている。その最たるものは、何をしてでも好きなものを成し遂げるだけの情熱。ミクリは努力をたゆまぬ人だった。
僕にはそんな情熱はなかった。何かに夢中になることはほとんどないと言えるだろう。好きなことに夢中になりきれない冷たい自分。どこからその熱はやってくるのだろうか。

幼い時からなんでも手に入り、努力をせずとも大抵のことをうまくこなした。家のせいにするつもりはない。オヤジは僕や母さんのために身を粉にして働いていたのを知っているし、僕には『才能』と呼んで差し障りの無いなにかがあったのも事実だからだ。
今の僕が形成されたのは環境による影響もあるだろう。でも、オヤジが、父が、あんなに努力をする人だというのに僕がそれをできないでいるのは、明らかに僕のせいだった。

僕が旅に出たのは11歳のときだった。石が好きなオヤジがときどき連れていってくれる洞窟で捕まえたダンバル。今でも大事なパートナーだ。そのダンバルをつれて、こっそり家を出た。
家族との中が不仲だったわけではない。ただ、少し外の世界を知りたくなった。夢中になれない自分を、どこか嫌っていた。変わりたかった。
いずれ僕は『ツワブキダイゴ』として、会社を継ぐのだろう。オヤジのことは尊敬しているし、でも、僕はなんだかそれを受け入れられなかった。幼かったせいもあるだろう。ああ、今でも逃げ回っているのだからあまり関係ないのかな。

ゆっくりとあちこちを周りながら、たまにバトルをした。僕はどうやらバトルもそこそこにうまいようだった。ここでも、せっかく家を出てきたのに退屈だった。
ミクリとはそんなときに出会った。偶然寄った町で大きな大会があって、なんとなく参加してみるかと思ったのだ。
ミクリはヒンバスを連れていた。あの頃からミクリのヒンバスは愛嬌のあるやつだったな。とにかく、理由は覚えていない。本当に些細なことだったのだろう、僕たちはすぐに仲良くなった。今でもミクリはいい友達だ。

そうしてだらだらと旅を続けていたある日、ミナモでココドラとはぐれた。好奇心旺盛なココドラは目を離すとすぐにどこかへ行きたがる。ミナモは大きな街だから、人も多くて探すのが大変だったな。結構見つけるのに時間がかかったのを覚えている。
ココドラはジュカインを連れた女の子と一緒にいた。その女の子は楽しそうに笑ってココドラの背中を撫でていた。すぐに分かった。この子は僕とはちがう、夢中になれる人。
ココドラの目が僕を捉える。

「こんなところにいた」

女の子は振り返って僕を見上げると、瞳の奥を揺らした。ミクリと同じように、君も持っているんだね、僕にないなにかを。

彼女は僕に、どんな気持ちを与えてくれるのかな?



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