「ナナぁ」
「だまって」

あたしの馬鹿みたいなあったま悪い声。ぎゅっと抱き締められて目の前がちかちかした。苦しい。
月嶋さんが復学してからたびたび見かけるようになった彼。正直なところ、ふたりの関係はよく知らない。まあ親密な仲なんだろうなあとは思ってた。実際ナナは月嶋さんのことすごく好きなの、分かるし。
けど、月嶋さんはよく分からない。会長と恋人同士だし、ほかにも、いるし。

「すき、なのに」
「うん」
「栞ちゃんは、僕をすきじゃない」
「……、」

一度ゆるんだちからがまた、ぎゅうっと力を加えられてあたしまで悲しくなる。柔らかい猫の毛みたいなナナの髪に指を絡めて「な、なぁ」また馬鹿みたいに甘い声で彼を呼ぶ。
あたしの肩に頭を乗せたまま首を振るからくすぐったくて腕から力が抜けて、だらりと垂れ下がった。

「だまって、」
「ねぇナナ、あたしたち」
「だまってよ」

このままじゃ駄目なんじゃないかなあ。ナナの腕の中で悲しいなあと思いながら、重力に従順だった腕を彼の背中にまわした。言いたいことは言えないまま。だってナナが黙れっていうんだもん。
けど、あたしは思う。きっと月嶋さんがいるかぎりあたしはナナのいちばんにはなれないし、月嶋さんがあれをどうにかしないかぎり、ナナがいちばんになることもないんだろう。
いちばんになんかならなくていいよ、だって彼女はナナをこんなに傷付けるじゃない。ナナはあたしのいちばんになってくれたらいいのに。

「なな、すき」
「ばかじゃない」
「うん、ばか」
「……」

馬鹿なんだよ、ナナが好きすぎて、馬鹿なの。
馬鹿だから、ナナが好きってこといがいなんも思わないの。
こうして抱き締めてくれてうれしい。キスはしてくれないけど、強く抱き締めてくれるのがすごく嬉しい。ぎゅっと締め付けられた心臓はしらない。きっと幸せすぎていたいんだよね。

「ナナ」
「すきだよ」
「あたしも、」
「…好きだよ」





「僕むねが痛いんだ、」
「おなじだ、ね」

幸せなはずなのに、おかしいなあ。胸が痛くて、こんなにも涙があふれてくるなんて。突然触れた唇に、もっといたくなった。

(なんで君は、こんなにあたしを好きにさせるの)



(最近クラノアはじめましたー。ナナ怖かったけど、だんだん可愛く思い始めました!)(しかし今のとこ本命はイチです(^O^))(翔くんも好きですけどね)

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