ぞわぞわした。背中が凍るみたいな、冷たい感覚。優しくされるとつらい。まるで彼女の代わりにされているみたいだから。いや、実際そうなのか。
栞は結局実乃里に負けて、残ったのは実乃里だった。その事実がしばらく雄一を苦しめていたのは気付いていたし、今となってはまえほど栞が雄一を支配しているわけでもなくて、むしろ彼は前に進もうとしているくらいだった。
なのに、どうしてわたしを見る目がこんなに悲しいんだろう。
雄一は優しい。だけどなにかおかしい。背中をひんやりしたものが通り抜ける。悲しい目がわたしを捕らえて、にがさない。

「ゆ、いち?」
「好きだよ」
「え?」
「なんでかな、君をみてると苦しい」

栞のときとは違うけど、とまた少し悲しい目で微笑んだ。雄一はわたしが自分を好きなことを知っているから、わたしは彼が好きだと言ってくれる気持ちに素直になれない。「わたし、は」それでも拒めない。

「ねえ、好きだよ」
「わた、し、は」

涙で視界がにじんでいく。彩り豊かな見える世界はまざりあい溶けて、崩れていく。すきなんだ。ずるいくらいに。「す…、き」抜け出せないの、雄一の優しさやずるさや、その悲しさから。



ぞわぞわ、体から脳へと伝う警戒音は鳴り止まないままである。

「わすれたいのに」

小さくそう呟かれたのはわたしの気のせいであればいい。



(クラノアにこめ書いてみました!あえて短めに)
(落ち着いてきて、栞のことを忘れようとしてでもできなくてだれかでうめたいなあっておはなし)
(自分でも意味わからん)

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