どうしたもんかと思う。まさかこんなふうに悩んだりするとは思わなかったから自分でも八方塞がりだとしか言いようがない。 別に出かけること自体は困ってもないし粗方の予定は立ててある。 待ち合わせた寮前で腕時計を見ながら彼女を待つ。待ち合わせまではまだ5分くらいあるから彼女がくるのはまだ少し先だろう。と、思っていた矢先にぱたぱたと走る音が聞こえてきて振り返ればワンピースの裾をひらひらさせた彼女がこちらに向かって慌てていた。
「ごっ、ごめんな、さ、」 「まだ時間じゃないから慌てなくても平気だぞ〜」 「い、えっ」
そのままの勢いで俺の横までくると、肩で息をしながら「ごめんなさ、い」もう一度謝った。世界がおわるみたいな悲しい顔をして。 しゅん、と俯いたときに耳の下でふたつにゆるく結ばれた髪が揺れて、銀の細いネックレスチェーンにひっかかっていた。「いた、っ?」気付かずに顔をあげたせいで引っ張られたようでなにが起きたのか分からないというような顔をした。
「あわわ、絡まってる?」 「そう、絡まってる」 「痛いいた、とれない、」 「待ってろとってやるから」 「え、会長近い、」
黙ってろ、と短く言って髪を手にとる。絡まった部分をゆっくり解いてやればお互いはすぐに離れていった。柔らかい髪を指を通して整えてやると目の前の彼女と目が合った。ぱちんと音でもするようにしっかりと。
「ほら、できた」 「あ、りがとうございます」 「どーいたしまして。…よし行くか」 「あ、はい」
さり気なく手をとってやると、う、だか、あ、だかよく分からない声を出したので笑ってしまった。「お前可愛いな」そう言うと「会長のほうが、かっこいいですよ」ほっぺたをピンクにしながらそう返された。 会ってからまだ数分だというのに赤くなったり青くなったりくるくる表情を変えていておもしろい。
「お前といると飽きないよ」 「それ、褒めてますか」 「褒めてますね」 「…あんまり、うれしくないです」 「ははは、可愛い可愛い」 「別にいいですけどね」 「お前単純だなあ」
バスに乗り込んで、街へ向かう途中も手は離れないまま。
気持ちはうまく、定まらない。
「会長、早くしないと映画始まっちゃいますよ!」 「はいはい」
(ぬい誕まであと2日)
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