彼女の発言からなんとなく付き合うことになって一週間。一緒に課題をしたり寮の部屋まで送ったりと前よりふたりで過ごす時間が増えた。その間でわかったのは意外と彼女に男の知り合いが多いこと。前までは生徒会室以外で会うことはほとんどなかったから知らなかった。
 まあ普通に考えて男のが割合的にも多いから当然と言えば当然だけど。
 ひょこひょこ歩く彼女の隣をゆっくり歩きながらつむじを見つめていると「あ」と言って俺を仰ぐ。


「そういえば会長、翼くんから聞きました?」
「え、」
「予算案のプリントの話です」
「あ、ああ、なくしたってやつか。颯斗が切れてた」 平静を装いながらも内心は訳の分からない感情がぐるぐるしていて、お?と思った。翼くん。このあいだまでは天羽くんと呼んでいたはずなのに、今日はつばさ、くん。
 なぜかは分からないが胸の奥のほうが塩酸かなにかに浸したみたいにじくじく痛む。なんでだ。それを見ないふりして「どこやっちゃったんでしょうね」なんて笑う彼女に「ラボん中とかじゃないか」そう返した。
 けれどその痛みはなかなか消えずにいて、それとなく言葉にする。


「その、さ」
「はい」
「翼と仲良いの?」
「普通じゃないですかね」
「普通ですか」
「たぶん、普通です」
「急に仲良くなってるみたいだからびっくりした」
「え、そんなことないと思いますけど」
「あ、ぬいぬい会長!」


彼女が首を傾げて足を止めると同時に左側から翼の声が届く。だだだーっと走り寄ると、満面の笑みで「あげる!」とプリントを渡された。前期予算案と書かれたそれは颯斗にこっぴどく叱られる原因となったそれだ。今度はなくさなかったらしい。きちんと書かれた予算案は仲がいいらしい木ノ瀬に急かされたのだろう。
 案の定「梓にも怒られた〜ぬぐぐ…」と彼女に不満そうにつぶやいている。それを楽しそうに聞いているのを見てああそうかと気付く。さっきのはいわゆる、やきもちってやつだ。


「これなら颯斗も納得するだろ」
「やった!そらそらに怒られないで済む〜」
「よかったね」
「最初からちゃんとやっとけ」
「ぬがが〜」


しょぼんとへこむ翼の頭を軽く叩いて「ほら、早く颯斗んとこ行ってこい」予算案を持っていくように促す。簡単に立ち直って「そらそらに褒めてもらう!」だとかなんとか言って来たのとは反対の道を走っていった。


「予算案できたみたいでよかったですね」
「やればできるのにやらないんだもんな、翼は」
「今回はなくしたんですけどね」
「馬鹿だよなあ」
「ふふ」





「あ、今度の日曜どっか行くか?」
「えっ、」
「都合悪いならいいけど」
「大丈夫です、大丈夫、行きたいです!」


まさか誘われるとは思っていなかったのか、上擦った声をあげた。予鈴のチャイムが鳴ったのでとりあえず「行きたいとこ決めとけよ」と言って別れた。うん、なんか不思議な気分だ。


(ぬい誕まであと3日)

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