カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中、熱を出してしまった私は学校を休んでベッドの中にいた。脇に挟んだ体温計が小さく鳴って、液晶画面を覗きこむ。
38度9分。
朝から全然下がっていない。寧ろあがったくらいだ。改めて熱だと確認すると、余計に頭がいたくなった気がして早く治れと傍にあった薬を飲んだ。
人は弱っている時は人肌が恋しくなるというが、全くその通りだ。私は弱った頭で彼氏である蛍の事を考えた。今日は一緒に登校出来なかったな、とか、バレーしてるかっこいい姿を見れないな、とか。でもやっぱり一番は。
「…蛍に、会いたいな」
ぽつりと呟いた言葉は静まり返った部屋に妙に響いて、虚しさを増した。暫くして薬が効いてきたのか、うとうとしてきた。そのまま眼を閉じれば、あっさりと眠りにつけた。
それから何かヒヤリとした感触に目が覚めた。はじめおでこにあった冷たくて気持ち良いそれは、だんだんと降りて頬をなでる。覚醒しきらない意識の中、それが手だと気付いた時には細くて長い指が唇を優しく撫でた。私はその手に愛しい人を思い出した。
「…ん、蛍?」
思いの外掠れた声で名前を呼べば、急にその手が離れてしまった。名残惜しさでゆっくりと瞼をあけたら、一番会いたかった人がいた。
「あ、起こしちゃった?」
「え、蛍?!なんでここに…」
「プリント、届けに来てあげたんだよ。なのに名前、酷い顔で寝てるから」
「蛍ひどい!」
いつもみたいに余計な一言を言ってくる蛍に、内心少し安心した。今日も会えて良かった。そして、私の為にわざわざ家まで来てくれて凄く嬉しかった。…にやにや顔で嫌味言ってくるけど。
「馬鹿は風邪引かないって言うのに…あ、これは熱だから馬鹿は関係ないのかな?」
「私一応病人なんだけど!ちょっとは優しくしてよ」
少し頬を膨らませて怒ると、蛍は更ににやにやしてベッドに座った。
「元気そうに見えるけど?」
「喉痛いし頭痛いし気持ち悪い」
「…ふーん…早く治したい?」
「?…う、うん」
何か考えこんだ後、良いことを思いついたとばかりににっこり笑顔で聞いてくる蛍。よくわからなかったけど、早く治ってほしかったから軽く頷いた。
すると蛍の冷たい手が私の顎に添えられる。
「え?け、い?…んっ」
そのまま重ねられた蛍の唇。鼻づまりでいつもより苦しくて、息をしようと薄く口を開けば蛍の舌が私の口内に入ってきた。
「ん…ふぅ…」
「…ん」
激しいキスに、二人の熱い吐息が交じりあう。蛍は味わうように私の口内を愛撫した。さすがに苦しくなって蛍の肩を叩くとゆっくりと離れていった。
「はぁ、はぁ…ちょっと、急になにするの…うつっちゃうよ」
「人にうつした方が早く治るって言うからさ」
満足気に言う蛍。不意討ちなんてずるいと軽く睨んだら、そんなことも気に止めてないように蛍は笑う。
「だから、明日はちゃんと学校来なよ?名前が休むせいで迷惑かかるんだから」
小さく小さく、特に僕にね、と続けた声が聞こえた。口では意地悪な蛍も、なんだかんだで心配してくれてるんだと嬉しくなった。
「それにしても、本当にうつったらどうしよう」
「え?」
「僕が熱でたら名前の責任だから…もちろん名前が治してくれるよね」
またまたにっこり笑顔で、下心まるだしな事をさらりといってのける蛍。何か反論しようとしたけど、言葉に出来なかった。また蛍が口付けをしてきたから。でも今度は、優しい優しいキスだった。
会いたくて
(君がいないと)
(寂しいんだから)
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ツッキー夢でリクエスト頂いたので書きました !!
遅くなって申し訳ありません !!こんな感じでよろしいでしょうか?気に入らなければ書き直します(`´)!
…題名と内容がずれているのは気にしない方向で(え
では、リクエストありがとうございました!
mae ato