ああ、煩い。
未だ6月だっていうのに早めに来た夏のせいで、蝉がけたたましく鳴き始めた。だけど僕を悩ませてるのは別に蝉のせいじゃなくて…
「ツッキー!!」
昼休みを告げるチャイムがなると同時に山口がやって来た。これも何時もの事だし、山口一人の煩さは問題ない。一人の煩さは…
「蛍ちゃん!!」
山口に続いてクラスメイト兼幼馴染みの名前が来た。と同時に早速名前は山口と口論を始める。
「名前!また来たのかよ!」
「なによ、勝手に呼び捨てしないで!」
「いーじゃん別に!」
「呼び捨てにしていいのは蛍ちゃんだけだもん!ほら、蛍ちゃんだって怒ってるよ」
「ごめんツッキー!!」
「……」
そう、僕を悩ませてるのはこの二人だ。一人一人なら、まだいい。まだ。しかし二人揃えば真夏の蝉にも負けない程の煩さ。しかも何故か二人は何だかんだで仲が良かったりする。…ほんとイライラするんだけど。
そして山口も単純バカなのに、名前はそれを上回るほどのバカ。
「あ、そだ!蛍ちゃん、あたし今日クッキー焼いてきたんだけど、食べる?」
「いいな!俺も欲しい!」
にっこり笑顔でカバンからいかにも女子らしいタッパーをとりだした名前。それを見て山口が騒ぐ。
…さっきまで喧嘩してたんじゃないの?
思わずでそうになるため息を堪えて、あくまで冷静に名前に話しかける。
「ねえ、名前さ。」
「うん?」
「クッキー作ってる暇あるなら友達ぐらい作れば?」
嫌みのつもりで言ったら、急に名前の目が輝いた。いつの間にかタッパーを開けてクッキーを頬張っている山口も。ってゆうか何僕より先に名前のクッキー食べてんの山口…
「蛍ちゃん…」
「な、なに…」
「何いまのうまい!!」
「…は?」
「蛍ちゃんってばダジャレも得意だったんだね!すごいね!」
「さすがツッキー!!ついでに名前のクッキーもうまい!!」
「ありがとう…って山口!なんであたしのクッキー食べてるのよ!あと呼び捨て!」
学習しない山口に名前の鉄拳がクリティカルヒット。それにしても名前が嫌みも通じないほどバカだったとは…。頭痛がしてきたと頭をかかえる。すると山口が声をかけてきた。
「ツッキー、どーした?」
「……」
「ツッキーってば、」
「山口がクッキー食べちゃうから蛍ちゃん怒っちゃったんだよ、きっと」
「そーなの?!ごめんツッキー!!」
なんだよ、嫌みが通じないぐらいバカなのに僕の心境は通じちゃってるわけ?…意味わかんない。ってまあクッキーだけが原因じゃないんだけど。
「…はぁ」
「ご、ごごごごめんツッキー!!そんなにクッキー好きだったの?明日俺作ってくるから!…あ、でも作り方…」
いやいや、僕は別にクッキーがすきなわけじゃない。ましてや山口の作ったクッキーだなんて食べたいと思わないんだけど。言おうとしたら名前が先に話し出した。全く、よく喋る。
「じゃああたしが教えてあげる!蛍ちゃんに変なもの食べさせたくないもん」
「まじで!ありがと名前…ちゃん!じゃあ帰り俺ん家よってよ!」
名前は過保護な母親?…って待って、
「山口何言ってんの?」
「え?ツッキー?」
「別に僕、クッキーが好きなわけじゃないし、ましてや山口の作ったクッキーだなんて食べたいと思わないんだけど」
「えっ?!」
「てゆうか、僕の名前誘うなんて喧嘩売ってんの?」
「蛍ちゃん…?」
「ち、違…って、え?ツッキー名前ちゃんの事す」
「煩い、山口」
「ごめん、ツッキー!!」
「え?今のって…え!」
「…煩い、名前」
「大好き、蛍ちゃん!!」
煩いのが止んだと思えば今度は真夏の熱さが僕を悩ませた。
夏の憂鬱
(結局僕は)
(嫉妬してるだけ)
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山口と夢主の頭のネジを外しすぎた…。あたしの中では山口は単純バカ(おい
そこがかわいいよ山口
ツッキーはツンデレ(^p^)
mae ato