任務あけの帰り。太陽は山の向こうに沈んだっていのうに里に灯るネオンやらのおかげでまだまだ明るい道を、ナルトと一緒に何かを話すでもなく歩いていた。

「…はぁ」

不意に出てしまった本日何度めかの溜め息。ナルトに聞かれてなければいいと横目で伺ったら、案の定ばっちり目が合ってしまった。

「どうしたんだってばよ?」

「え、なにが?」

「今日はやたらに溜め息ばっかつくし今だって全然話さねーし、なぁーんか変だってばよ」

私の白々しい返答にナルトは目を細くして怪訝そうに言った。

「あ、あぁー…疲れてるのかな?うん、疲れてるの!」

あわてて言い訳をしてみるが、ナルトの目が更に細められるだけだった。苦笑いをこぼしていると、急にナルトが立ち止まって私の腕を掴んだ。

「な、ナルト?」

「……」

「…おーい」

「やっぱ!」

「え?」

「やっぱ嘘!!」

「え、っちょ…!」

ムスッとして黙っていたナルトが唐突に声を発したかと思えばぐっと顔を近づけてきた。

「目を見ればわかるってばよ」

「っ…!」

気まずくて顔をそらしたら捕まれた腕が離され、かわりに背中に程よい圧迫感。私はナルトの腕のなかにいた。

「ちょ、ちょっと、ここ」
「ちゃんと話してほしい。俺のこと少しはたよれってばよ」

「…」

「名前」

「……うん」

確かな温もりとナルトの匂いがひどく私を安心させ、何にかがほぐれていく気がした。俯いた私をナルトは少し困った顔で頭を撫でてくれた。

「……あのね…最近、」

「おう」

「任務で足引っ張っちゃってて…それで、皆に、迷惑かけて…頑張ってみるけど、でも皆はどんどん先に強くなってくし」

どんどん尻窄みになってしまう。

「そんな事で思い詰めてたのか!」

「そんな事って!」

「気にすることないってばよ!!俺なんかしょっちゅう失敗するし、…まだ、下忍だし…」

そういって目をそらしながら乾いた笑いをこぼすナルト。しかしすぐに目をキラキラさせて此方を向いた。

「けど、何回失敗してもそれを仲間が支えてくれるし、誰かに劣ってんならそいつ目指して努力すればいい」

いかにもナルトらしい言葉が素直に心にしみていった。どうしてか、ナルトの言葉はいつも心まで届くのだ。

「んで、疲れちまったら俺のとこにいつでもきていいってばよ。」

「ナルト…ありがとう」

ナルトの優しく笑った顔に悩んでたことが小さく消えていった。そのかわりに、温かい気持ちが込み上げてきて思わずナルトに抱きついた。ナルトはそれを受け止めて軽々と私を抱き上げた。

「元気でたみてーだな!」

「わっ!ナルト?!」

「よーし!今日は一楽で飯くうってばよ!!」

「えっ、ってこのままいくの?!」

「もちろん、このまま!」

ナルトは私を抱き上げたまま、いわゆるお姫様だっこで一楽へ屋根づたいに駆け出した。にしし、といたずらっぽく笑っているナルトに、たまにはこうして甘えるのもいいかもしれないと背中にまわした腕にそっと力をこめた。





きみのそばに
(貴方がいるから)
(きっと明日も笑えるの)




mae ato
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